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ダイジェスト 第V部 防衛力を維持・強化するために必要な基盤や取組

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いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤の強化

防衛生産基盤の強化

  • 現代において自衛隊は、高度な技術が適用された装備品等を用いて初めて、その能力を十分に発揮し、わが国防衛の任務を全うすることができる。優れた装備品等の確保に不可欠の要素である防衛生産・技術基盤は、いわばわが国の防衛力そのものであり、その抜本的な強化が必要である。
  • わが国の防衛産業は装備品等のライフサイクルの各段階(研究、開発、生産、維持・整備、補給、用途廃止など)を担っており、装備品等と防衛産業は一体不可分である。防衛産業が高度な装備品等を生産し、高い可動率を確保できる能力を維持・強化していくために必要な施策を講じるため、防衛生産基盤強化法が2023年に施行された。
  • 同法に基づき、防衛省は基本方針を公表した。この基本方針のもと、同法に定められた施策のほか、防衛産業の活発化、強靭なサプライチェーンの構築、防衛産業保全の強化など、防衛生産・技術基盤強化のための取組を推進している。
  • また、企業において防衛事業がコア事業のひとつになることが重要であるとの認識のもと、防衛産業をより力強く持続可能なものとするため、防衛産業の中長期的に望ましい方向性を示すべく、防衛産業戦略の策定を検討している。

防衛技術基盤の強化

  • 新しい戦い方に必要な装備品を取得するためには、わが国が有する技術をいかに活用していくかが極めて重要である。わが国の高い技術力を基盤とした、科学技術とイノベーションの創出は、経済的・社会的発展をもたらす源泉であり、安全保障にかかわる総合的な国力の主要な要素である。また、わが国が長年にわたり培ってきた官民の高い技術力を、従来の考え方にとらわれず、安全保障分野に積極的に活用していくことは、わが国の防衛体制の強化に不可欠な活動である。
  • 2022年12月に発表したグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)は、日英伊3か国の技術を結集して将来の航空優勢を担保する優れた戦闘機の共同開発プログラムであり、開発コストやリスクを分担しつつ、効率的な3か国の協業体制を確立するため、GCAP政府間機関(GIGO)が2024年12月に設立された。
  • 防衛力を抜本的に強化するのみならず、社会のあり方をも変える防衛イノベーションや画期的な装備品などを生み出す機能を抜本的に強化するため、2024年10月、防衛装備庁は防衛イノベーション科学技術研究所を創設した。本研究所では、これまでとは異なるアプローチ、手法を採用し、変化の早い様々な科学技術から新たな機能・技術を創出するブレークスルー研究を行う。

次期戦闘機イメージ

次期戦闘機イメージ

防衛イノベーション科学技術研究所オープニングセレモニー(2024年10月)

防衛イノベーション科学技術研究所オープニングセレモニー(2024年10月)

防衛装備・技術協力と防衛装備移転の推進

  • 防衛装備移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使または武力による威嚇を受けている国への支援などのための重要な政策的手段となる。
  • 防衛装備移転や国際共同開発を含む、防衛装備・技術協力の取組の強化を通じ、相手国軍隊の能力向上や相手国との中長期にわたる関係を維持・強化している。2024年度、米国との間で、長期的に重要な能力の需要を満たし即応性を維持するためにそれぞれの産業基盤を活用することを目的とし、日米の関係省庁と連携し、防衛省と米国防省が共に主導する日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)を開催した。

装備品の最適化の取組

  • 人口減少・少子高齢化の急速な進展や厳しい財政事情を踏まえれば、領域横断作戦に対応できる十分な能力を獲得するためには、装備体系の合理化などにかかる取組を一層推進することが必要不可欠である。
  • 水中領域などにおいては、警戒監視や対艦ミサイル発射などの機能を選択的に搭載し、有人艦艇を支援するステルス性を有した戦闘支援型多目的無人水上航走体(USV)に関する研究を2024年度から開始した。また、水陸両用作戦において自律的に行動可能であり、海上から部隊近傍までの補給品輸送などの任務を行う無人水陸両用車の開発を2024年度から開始するとともに、次期戦闘機などの有人機と連携する戦闘支援無人機(UAV)についても研究開発を推進する。
  • 装備品の取得にあたっては、能力の高い新たな装備品の導入、既存の装備品の延命、能力向上などを適切に組み合わせることにより、必要十分な質・量の防衛力を確保する。その際、研究開発を含む装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化などによるコストの削減に努め、費用対効果の向上を図る。また、自衛隊の現在や将来の戦い方に直結できる分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性が高い事業については、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。
  • 2024年12月に公表した潜水艦修理契約に関する特別防衛監察の中間報告における指摘事項に対して、原価調査および制度調査の実効性のさらなる向上、契約に関して真正な資料の提出を義務付ける範囲の拡大などの見直しを行った。防衛省では、これらを通じて不祥事の再発防止、調達の公正性・透明性の向上や契約の適正化に取り組んでいる。

地域社会や環境との共生に関する取組

地域社会との調和にかかる施策

  • 防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人一人、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要がある。
  • わが国の安全を確保するうえで極めて重要な要素である在日米軍が安定して駐留するためにも、周辺地域の理解と協力を得ることは不可欠である。

気候変動などの環境問題への対応

  • 防衛省・自衛隊は、気候変動などの環境問題の各種課題に対応し、解決に貢献するとともに、自衛隊施設や米軍施設・区域と周辺地域の共生について、より一層重点を置いた施策を進めていく。
  • 2024年9月末には、防衛省・自衛隊が保有する全てのPFOSを含有する泡消火薬剤などの交換と処分を完了した。

情報発信や公文書管理・情報公開など

  • 防衛省・自衛隊は、活動や取組などを国民に理解してもらえるよう、公式ホームページ、SNS、動画配信、広報誌『MAMOR(マモル)』の編集協力、報道機関への取材協力のほか、各種イベントや広報施設などにおいて様々な方法で積極的に広報活動を行っている。
  • また、行政文書の電子的管理を推進するとともに、行政文書管理や情報公開請求への対応を適切に行っている。

地方防衛局による地方公共団体に対する防衛白書の説明

地方防衛局による地方公共団体に対する防衛白書の説明

自衛隊記念日記念行事の一環として実施している自衛隊音楽まつり(2024年11月)

自衛隊記念日記念行事の一環として実施している自衛隊音楽まつり(2024年11月)