安全保障と防衛の基本的考え方
- 国民の命や暮らしを守り抜くうえで、まず優先されるべきは、積極的な外交の展開である。日米同盟を基軸とし、同志国との連携、多国間協力を推進していくことが不可欠である。
- 同時に、外交には、裏付けとなる防衛力が必要であり、戦略的なアプローチとして、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のビジョンのもとでの外交を展開するとともに、反撃能力の保有を含む防衛力の抜本的強化などを推進する。
- 憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を堅持する。

着任にあたり特別儀仗隊を巡閲する中谷防衛大臣(2024年10月)
国家安全保障戦略などの「三文書」
国家安全保障戦略
- わが国の安全保障に関する最上位の政策文書であり、外交・防衛分野のみならず、経済安全保障、技術、情報も含む安全保障に関する幅広い分野の政策に戦略的な指針を与えるもの。
- 2027年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が2022年度の国内総生産(GDP)の2%(11兆円程度)に達するよう、所要の措置を実施する。
国家防衛戦略
- わが国の防衛目標、この防衛目標を達成するためのアプローチやその手段を包括的に示すもの。
- わが国政府の最も重大な責務は、国民の命と平和な暮らし、そして、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くことであり、安全保障の根幹である。わが国を含む国際社会は、深刻な挑戦を受け、新たな危機に突入しており、厳しい現実に正面から向き合って、相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化が必要である。
- 防衛力の抜本的強化にあたって、①スタンド・オフ防衛能力、②統合防空ミサイル防衛能力、③無人アセット防衛能力、④領域横断作戦能力、⑤指揮統制・情報関連機能、⑥機動展開能力・国民保護、⑦持続性・強靱性、の7つの機能・能力を重視する。
- わが国への侵攻を抑止する上で鍵となる、①などを活用した反撃能力を保有する。

図表II-1-3-1(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画・年度予算の関係)
防衛力整備計画
- 国家防衛戦略に従って防衛力を抜本的に強化するにあたって、わが国として保有すべき防衛力の水準や、それを達成するための経費総額、主要装備品の整備数量などを示すもの。
- 策定から5年後の2027年度までに、わが国への侵攻が生起する場合には、わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。策定からおおむね10年後までに、防衛力の目標をより確実にするためさらなる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する。
- 2023年度から2027年度までの5年間における計画の実施に必要な防衛力整備の水準にかかる金額は、43兆円程度とする。
防衛力整備と予算
- わが国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているという基本認識のもと、防衛力の抜本的強化の実現に向け、2025年度においても、引き続き必要かつ十分な予算を計上した。
- 歳出ベースは、事業の進捗状況や予算の執行状況も踏まえ、予算を着実に増額し、8兆4,748億円を計上した。
- 契約ベースは、2025年度中に着手すべき事業を積み上げ、8兆4,332億円を計上した。
- 防衛力の抜本的強化の7つの分野を引き続き推進。各種スタンド・オフ・ミサイルの整備、衛星コンステレーションの構築、次期防衛通信衛星の整備などを重点ポイントとした。
- 「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」に基づき、2025年度予算においては関連事業に必要な経費を計上した。
- 防衛力強化のため、税制措置を含めた財源確保を推進する。
- 2025年度の防衛力整備計画対象経費と「補完する取組」にかかる経費の合計額は、総額9.9兆円、国家安全保障戦略策定時(2022年度)のGDPとの比較では約1.8%となっている。

図表II-2-2-2(防衛力の抜本的強化にあたって重視する7つの機能・能力とそのイメージ)
安全保障と防衛を担う組織
- 防衛省・自衛隊は、内閣に設置された国家安全保障会議で議論された基本的な方針のもとで、政策を立案・遂行している。
- 自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するため、防衛省・自衛隊は、陸・海・空自を一体的に運用する統合運用体制を採用している。
- 各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事まであらゆる段階においてシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、2025年3月に統合作戦司令官を長とする「統合作戦司令部」を市ヶ谷に設置した。
- これにより、陸・海・空自による統合作戦の指揮などの一本化や、平素からの領域横断作戦の能力練成が可能となる。

統合作戦司令部新編行事の様子(2025年3月)
自衛隊の行動に関する枠組み
- 自衛隊は、自衛隊法などに基づき、わが国の防衛のほか、公共の秩序維持、重要影響事態への対応、国際平和協力活動の任務に従事している。