Contents

コラム

防衛白書トップ > コラム > <解説>普天間飛行場代替施設建設事業にかかる地盤改良工事について

<解説>普天間飛行場代替施設建設事業にかかる地盤改良工事について

Q:普天間飛行場代替施設建設事業において2024年12月から始まった地盤改良工事は、前例のない難しいものなのですか?

A:本事業の地盤改良については、工法、規模、深度の全ての点で施工実績があり、前例のないものではありません。まず、工法については、羽田空港や関西国際空港、那覇空港でも用いられている、長年にわたり多数の施工実績がある一般的なものを採用しています。地盤改良の規模は、羽田空港の再拡張事業や関西国際空港の建設事業よりも少ない砂杭などの本数となっています。また、本事業では海面下最大70メートルまで砂杭を打設しますが、これまでに、日本企業が、横浜で海面下65メートルまで、韓国で海面下70メートルまで、それぞれ施工した実績があります。本事業においても、2025年3月以降、海面下70メートルまでの砂杭の打設を問題なく進めています。こうした地盤改良により、護岸などの安定性を十分に確保することができるため、問題なく埋立地を完成させ、飛行場を建設することができます。

Q:地盤改良を行わない海面下70メートルよりも深いところに軟弱な地盤は残らないのですか?

A:大浦湾側の地盤で確認されている海面下70メートルよりも深いところの粘性土は、「非常に硬い粘性土」から「硬い粘性土」に分類されるものです。これまでの土質調査の結果から、粘性土の層が最も深い深度で海面下約90メートルまで存在していることも確認されていますが、護岸などの安定性を確保するために必要な地盤改良の範囲を計算により求めた結果、海面下70メートルよりも深いところの地盤改良は行う必要がありません。このような本事業の地盤改良などの設計は、羽田空港などの多くの海上埋立空港で使用されている、国土交通省が監修した基準に基づいたものであり、その妥当性は、沖縄防衛局が設置した、有識者から構成される技術検討会においても確認いただいています。

Q:海面下約90メートルまで粘性土の層が存在している地点の土質調査を十分に行った上で計画を立てているのですか?

A:これまでに行った土質調査などにより、ご指摘の地点を含めて、土の種類や強度を十分に把握した上で、地盤改良などの設計を行っています。具体的には、本事業においては、2014年から2018年にかけてボーリング調査などを計76地点で行い、その結果を基に、大浦湾側の土の層の三次元モデルを作成し、土の面的な広がりを考慮するなど、詳細な整理・分析をした上で、大浦湾側の地層構成や土の強度などを把握しています。海面下約90メートルまで粘性土の層が存在している地点についても、この三次元モデルなどにより、土の種類や強度を十分に把握することができています。こうした方法は、国土交通省監修の基準に基づいたものとなっており、技術検討会においても、適切であることを確認いただいています。また、技術検討会では、有識者から、「広範囲の地盤に対して適用できるデータが得られており、これ以上、同地点で経費と時間をかけて調査を行っても新たに得られる情報はすごく少ない」「これで地形もよく把握しているので追加の必要はない」旨のご意見もいただいています。

大浦湾で地盤改良工事を施工中の作業船

大浦湾で地盤改良工事を施工中の作業船