各自衛隊は、米国のみならず、第三国の参加も得たハイレベルな多国間共同訓練に積極的に取り組んでいる。オーストラリアや欧州諸国の軍隊を交えた訓練を通じ、自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、各国軍隊との連携および相互運用性を高め、わが国の抑止力・対処力を強化している。
自衛隊は、2024年6月と11月、米軍および韓国軍と複数領域における日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」を行った。本訓練は、2023年の日米韓首脳会合および2024年6月のシャングリラ会合の際に行われた日米韓防衛相会談において実施の発表がなされた。本訓練では、弾道ミサイル対処訓練、防空戦闘訓練、対潜戦訓練、サイバー攻撃対処訓練を一部連携して行い、複数領域における日米韓共同対処能力を強化した。
自衛隊は、2024年6月、複数の同志国軍とともに、米国主催多国間共同演習「ヴァリアント・シールド24」に参加した。本演習は、2006年から隔年で米国が単独で実施している統合・実動演習であり、今回初めて自衛隊を始め、複数の国を一部の訓練に米国が招待することで多国間共同演習へと拡大された。本演習の参加により、インド太平洋地域における同盟国と同志国との相互運用性やパートナーシップの強化を図った。
ア 令和6年度米豪軍との実動演習「サザン・ジャッカルー24」
陸自は、2024年5月から6月にかけて、オーストラリアで行われた米豪軍との実動演習に参加し、重要施設などの防護、市街地における捜索・撃滅、森林錯雑地訓練などを行い、陸自部隊の作戦遂行能力の向上、米豪軍部隊との連携強化を図った。
豪陸軍との森林錯雑地における捜索・撃滅訓練(2024年6月)
動画:令和6年度豪州における米豪軍との実動訓練「サザンジャッカルー24」
URL:https://www.youtube.com/watch?v=3lyxLFONntk
イ 日米豪共同指揮所演習「ヤマサクラ」(YS-87)
2024年12月、わが国で行ったYS-87は、日米豪陸軍種による最大規模の指揮所演習である。
演習では、島嶼防衛を含む各種事態を想定し、米海兵隊の参加も得て、陸自の領域横断作戦、米陸軍のMDO や米海兵隊のEABOを踏まえ、豪陸軍を加えた日米豪共同による島嶼防衛作戦を演練した。
また、フィリピン、英国、カナダ、シンガポール、フランス、インドがオブザーバーとして本演習に参加し、相互の連携を強化した。
ア 日米豪共同サイバー演習「ブルー・スペクトラム24」
海自は、2024年5月と9月、米海軍および豪海軍とサイバー対処に関する共同訓練を行った。サイバーセキュリティに関する技量の向上および米・豪海軍サイバー対処部隊との相互運用性の向上を図り、日米豪サイバー関連部隊間の抑止力・対処力を強化した。
イ 日米印豪共同訓練「マラバール2024」
海自は、2024年10月、ヴィシャカパトナム(インド)と同周辺海空域において米海軍、インド海軍、豪海軍および豪空軍との共同訓練を行った。海自からは、護衛艦「ありあけ」および特別警備隊が参加し、対潜戦、対空戦、対水上戦などの訓練を行い、参加各国との相互運用性の向上を図った。FOIP(Free and Open Indo-Pacific)の実現の中核となる4か国の枠組みで、「マラバール」を継続して行ってきた意義は大きく、引き続き関係強化に取り組むこととしている。
空自は、2025年2月、グアムを拠点とする日米豪共同訓練「コープ・ノース25」に参加した。本訓練では、空自のF-35A戦闘機、E-2D早期警戒機およびKC-46A空中給油・輸送機が初めて国外訓練に参加した。日米豪3か国のF-35A戦闘機の初めての共同訓練などを行い、日米共同対処能力、日米豪の相互運用性の向上を図った。
日米豪共同訓練「コープ・ノース25」(2025年2月)