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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

2 ニュージーランド

ニュージーランドは、インド太平洋地域に位置し、わが国と基本的価値を共有する重要な戦略的協力パートナーである。

2022年7月、国防省は、高まる気候変動の影響、ロシアによるウクライナ侵略を含む戦略的・地政学的な競争の激化などを踏まえ、国防に関する長期的な戦略を策定する「国防政策見直し」を実施する旨を発表した。

2023年8月、ニュージーランド政府は、同国が直面する安全保障上の課題を分析し、今後5年間の安全保障政策の指針を示す同国初の「国家安全保障戦略 2023-2028(NSS:National Security Strategy)」を発表するとともに、「国防政策見直し」の第一段階として、国防政策上の目標および国防戦略を設定する「国防政策・戦略ステートメント(DPSS:Defence Policy and Strategy Statement)」および今後15年間の国防軍の投資計画を導く「将来戦力設計原則(FFDP:Future Force Design Principles)」を公表した。

DPSSにおいて、インド太平洋の係争地域における競争・緊張の高まりは、ニュージーランドの利益に重大な影響を及ぼす可能性があること、また、気候変動の影響は、太平洋島嶼国を含む地域全体の脆弱性を高め、経済やガバナンス上のリスクを増大させる可能性があることに言及した。中国については、既存の国際的なルールや規範に挑戦するような形で、国力のあらゆる手段を行使していると指摘し、軍事力の増強と近代化に巨額の投資を続けており、軍事力や準軍事力を、インド太平洋地域を含む自国域外に拡大投射できるようになってきていると評価した。

こうした評価を踏まえ、国防軍の重点を、事が起きてから対応するのではなく、自国の安全保障環境をより積極的に形成することへシフトする方針を示した。また、気候変動について、同志国などとの協力のもと、引き続き太平洋島嶼国に対して人道支援や災害救援などの支援を実施していくとした。

2025年4月、ニュージーランド政府は先の15年間を見据えた装備品調達などの指針として「国防能力計画(DCP:Defence Capability Plan)」を発表し、今後8年間で国防費を対GDP比2%以上にするとした。

また、外交政策の面からも、2023年11月に発足した連立政権は「外交政策リセット」を打ち出し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、経済的繁栄と地域の安定は密接に結びついているという認識のもと、安全保障および国防力強化を掲げている。

対外関係について、ニュージーランドは米豪と緊密な関係を維持しており、特にオーストラリアを唯一の正式な同盟国と位置づけ、緊密な連携を行っている。