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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

3 防衛関係費の内訳

1 経費別分類

防衛関係費は、隊員の給与や食事のための「人件・糧食費」と、装備品の修理・整備、油の購入、隊員の教育訓練、装備品の調達などのための「物件費」とに大別される。さらに、物件費は、過去の年度の契約に基づき支払われる「歳出化経費」4

と、その年度の契約に基づき支払われる「一般物件費」とに分けられる。物件費は「事業費」とも呼ばれ、一般物件費は装備品の修理費、隊員の教育訓練費、油の購入費などが含まれることから「活動経費」とも呼ばれる。

歳出予算で見た防衛関係費は、人件・糧食費と歳出化経費という義務的性質を有する経費が全体の7割を占めており、残りの3割についても、装備品の修理費や基地対策経費などの維持管理的な性格の経費の割合が高い。

参照図表II-4-3-9(歳出額と新規後年度負担の関係)

図表II-4-3-9 歳出額と新規後年度負担の関係

2 使途別分類

防衛関係費は、隊員の給与や食事のための「人件・糧食費」、新しい装備品(戦車、護衛艦、戦闘機など)を購入するための「装備品等購入費」、隊員の教育訓練、艦船・航空機などの油、装備品の修理のための「維持費等」、格納庫・隊舎などの建設のための「施設整備費」、先端技術への投資のための「研究開発費」などに大別される。

令和5年度防衛関係費では、新しい装備品の購入及び研究開発を合わせて2割を上回るとともに、現有装備品の維持の割合も上昇している。なお、北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)加盟国は、2024年までに、国防費の20%以上を主要装備品の取得及び関連する研究開発に充てることを目指している。

参照図表II-4-3-10(防衛関係費の使途別分類(令和5(2023)年度))

図表II-4-3-10 防衛関係費の使途別分類(令和5(2023)年度)

3 新規後年度負担

歳出予算とは別に、翌年度以降の支払を示すものとして新規後年度負担(当該年度に、新たに負担することとなった後年度負担)がある。防衛力整備においては、艦船・航空機などの主要な装備品の調達や格納庫・隊舎などの建設のように、契約から納入、完成までに複数年度を要するものが多い。これらについては、当該年度に複数年度に及ぶ契約を行い、契約時にあらかじめ次年度以降(原則5年以内)の支払いを約束するという手法をとっている(一般物件費と新規後年度負担の合計は、当該年度に結ぶ契約額の総額(事業規模)であり、「契約ベース」と呼んでいる)。

参照図表II-4-3-9(歳出額と新規後年度負担の関係)

4 防衛力整備には複数年度にわたるものがある。その場合、契約する年度と代価を支払う年度が異なるため、まず後年度にわたる債務負担の上限額を、国庫債務負担行為(債務を負う権限のみが与えられる予算形式であり、契約締結はできるが、支払はできない。)として予算に計上する。それを根拠として契約し、原則として完成・納入が行われる年度に、支払に必要な経費を歳出予算(債務を負う権限と支出権限が与えられる予算形式であり、契約締結および支払ができる。)として計上する。このように、過去の契約に基づく支払のため計上される歳出予算を歳出化経費といい、次年度以降に支払う予定の部分を後年度負担という。
なお、数年にわたる継続的な事業を施行する必要がある場合に、その経費の総額及び年割額についてあらかじめ一括して国会の議決を経て、数年度にわたって債務負担権限とあわせて支出権限を付与する制度として、継続費がある。