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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

4 各国との防衛協力・交流の推進

安全保障分野での協力・交流を推進するに際して、相手国の実情や日本との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせて強化していく必要性があり、多国間の枠組みでの包括的な取組のみならず、二国間での防衛協力・交流が重要となる。

1 日豪防衛協力・交流
(1)オーストラリアとの防衛協力・交流の意義など

オーストラリアは、ともに米国の同盟国として、普遍的価値8のみならず戦略的利益や関心を共有するわが国にとってアジア太平洋地域の「特別な戦略的パートナー」である。特に近年、両国はアジア太平洋地域において責任ある国として、災害救援や人道支援活動などの分野を中心とした相互協力や、能力構築支援に関する協力を強化している。

日豪間の防衛協力はカンボジアPKO(UNTAC:United Nations Transitional Authority in Cambodia)での協力に始まり、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT:United Nations integrated Mission In Timor-Leste)「イラク復興支援」や各種国際緊急援助活動などで協力実績を積み重ねてきた。11(平成23)年3月のわが国における東日本大震災の際には豪軍は保有する4機の輸送機のうち3機をわが国に派遣して、支援任務に従事した。国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)においては、17(同29)年1月からUNMISSの業務を行うため派遣された豪軍要員2名を日本隊宿営地に受け入れるなど、その協力の度合いは、より実践的なものに深まってきている。

このような日豪防衛協力の深化を背景に、日豪両国は07(同19)年、米国以外では初の安全保障に特化した共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表したほか、これまでに日豪物品役務相互提供協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)9や日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定といった協力の基盤を整備してきている。

日豪ACSAについては、両国の防衛協力・交流のさらなる進展などにより自衛隊が豪軍と共に活動するケースが拡大していることやわが国における平和安全法制の整備を踏まえ、17(同29)年1月、物品又は役務の提供が可能な場面などを拡大する新たな協定に両国が署名し、その後、関連法令を整備した。

地域における平和と安定の維持に共に貢献する意思と能力を兼ね備えた「特別な戦略的パートナー」であるオーストラリアとは今後とも引き続き協力関係を深めていく。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

16(同28)年8月、稲田防衛大臣は着任以来初めて東京に外国の国防大臣を迎えた防衛相会談をペイン豪国防大臣との間で実施した。会談において両大臣は、北朝鮮、東シナ海、南シナ海情勢を含む地域情勢について意見交換するとともに、日豪防衛協力が能力構築支援、共同訓練や部隊間交流などを通じて広範な分野かつあらゆるレベルで深化してきていることを歓迎し、今後とも日豪防衛協力をさらに強固に進展させていくことで一致した。

日豪防衛相会談に臨む稲田防衛大臣(16(平成28)年8月)

日豪防衛相会談に臨む稲田防衛大臣(16(平成28)年8月)

17(同29)年1月、シドニー(オーストラリア)を訪問した安倍内閣総理大臣はターンブル豪首相と日豪首脳会談を実施した。この会談において、両首脳は、日豪の「特別な戦略的パートナーシップ」がこれまでになく強く、また重要となっていることを確認し、共同訓練や能力構築支援などの分野で防衛協力をさらに深化させることで一致するとともに、両首脳の立ち会いのもと、自衛隊と豪軍の間での相互の後方支援をより円滑にするための新たな日豪ACSAの署名が行われるなど幅広い分野で成果があった。

また、日豪間の共同運用と訓練を円滑化すべく、行政的、政策的及び法的手続を相互に改善する協定に関し、この交渉を可能な限り早期に、望ましくは17(同29)年に妥結することへの期待が表明された。

さらに、同年4月に東京にて開催された日豪「2+2」においては、18(同30)年の日本における空自及び豪空軍の戦闘機が参加する共同訓練の実施の追求を含む、日豪防衛協力のさらなる強化のための一連の新たなイニシアティブを特定した。

16(同28)年7月から8月には空自が豪空軍主催多国間共同演習と並行して実施されたオブザーバー・プログラムへ参加し、同年9月には、海自の護衛艦及び航空機が豪海軍主催多国間海上共同訓練に参加した。さらに17(同29)年1月には海幕長が、同年2月には空幕長がそれぞれオーストラリアを訪問し、豪側のカウンターパートと会談を実施するなど、相互理解及び信頼関係のさらなる増進を図っている。

参照資料53(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(3)日米豪の協力関係

日本とオーストラリアは、ともに米国の同盟国であると同時に、普遍的価値を共有しており、アジア太平洋地域及び国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力を効果的・効率的なものとするためには、地域の平和と安定のために不可欠な存在である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することが重要である。

07(同19)年4月以降、計8回にわたって、3か国の局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われている。

16(同28)年10月に実施されたSDCFにおいて、日米豪の3か国で共同訓練及び運用に係る協力活動を実施するに際し、秘密情報の3 か国間における共有を迅速に行うことを可能とする「日米豪防衛当局間情報共有取決め」に署名した。今後は、この取決めを活用し、日米豪3 か国間の連携をさらに緊密なものにしていく。

さらに、17(同29)年6月の第16回シャングリラ会合の際に実施された日米豪防衛相会談においては、共同訓練、運用、能力構築支援を含め、日米豪防衛協力のさらなる進展を図っていくことで一致した。

また、訓練・演習では、空自が16(同28)年12月に日米豪人道支援・災害救援共同訓練(オペレーション・クリスマス・ドロップ)に参加し、17(同29)年2月に日米豪共同訓練(コープ・ノース・グアム)を共催したほか、陸自が同年5月に米豪軍との実動訓練(サザン・ジャッカルー)に参加するなど、日米豪3か国間での様々な訓練・演習の機会を通じて、相互理解及び相互運用性を高める努力を続けている。

2 日韓防衛協力・交流
(1)韓国との防衛協力・交流の意義など

韓国は、わが国にとって戦略的利益を共有する最も重要な隣国であり、地政学的にもわが国の安全保障にとって極めて重要な国である。また、米国の同盟国として、その戦略的利害関係の多くが共通している。このため、時に困難な問題が起きるとしても、両国が安全保障面において緊密に連携することは、アジア太平洋地域における平和と安定にとって大きな意義がある。

さらに、日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題のみならず、テロ対策やPKO、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、広範にわたる複雑なものとなってきている。こうした安全保障上の課題に両国が効果的に対応していくためには、相互理解・信頼醸成の増進のための交流にとどまらず、より広範かつ具体的な防衛協力を行っていくことが必要であり、今後、ACSAの締結が重要である。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

ア 全般

韓国との防衛協力・交流は、15(同27)年以降、防衛大臣、幕僚長などのハイレベル交流から部隊間交流まで含めた様々なレベルで再活性化しつつある。

特に、北朝鮮の核・ミサイル問題に対処していく上では、韓国との安全保障・防衛分野での協力強化が必要であるところ、北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射に際し、16(同28)年1月、2月、9月、17(同29)年3月及び5月に日韓防衛相電話会談が速やかに行われ、北朝鮮の核・ミサイル問題に関し、両国間で緊密に連携することができている。

また、同年6月、第16回シャングリラ会合に際して、日韓防衛相会談を行い、両大臣は、北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射に際し、日韓防衛相電話会談の実施など緊密な対応を図っていることを評価するとともに、日韓・日米韓の緊密な連携・協力が重要であるとの認識で一致した。また、日韓防衛協力・交流について意見交換を行い、防衛当局間の対話、艦艇・航空機の相互訪問などを含め、協力を進展させていくことで一致しており、今後の二国間協力・交流の一層の進展が期待される。

イ 日韓秘密軍事情報保護協定締結について

日韓の防衛当局間において、14(同26)年12月に署名した「日米韓情報共有に関する防衛当局間取決め」に基づき、米国を経由する形で北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有を行ってきた。他方、北朝鮮により頻繁に繰り返される弾道ミサイルの発射や核実験など、北朝鮮を巡る情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、日韓間の協力をさらに進めるべく、16(同28)年11月、日韓秘密軍事情報保護協定を締結した。これにより、日韓政府間で交換される秘密情報が適切に保護される枠組みが整い、両国政府間でさらに円滑かつ迅速な情報交換が行われることが期待される。

参照資料54(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(3)日米韓の協力関係

日米韓3か国は、この地域の平和と安定に関して共通の利益を有しており、機会を捉えて緊密に連携を図っていくことが、北朝鮮問題を含めた様々な安全保障上の課題に対処する上で重要である。

日米韓3か国では、シャングリラ会合に合わせて日米韓防衛相会談を実施しているほか、実務レベルでは、日米韓防衛実務者協議(DTT:Defense Trilateral Talks)の枠組みにおける局長級・課長級の協議及びテレビ会議の実施、参謀総長級会談などを通じて、様々なレベルで緊密に情報共有を図りつつ連携してきている。

直近では、17(同29)年6月、第16回シャングリラ会合に際して、日米韓防衛相会談を行い、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画を地域及び世界の安全保障に対する喫緊の脅威であるとの認識で一致した。また、3か国防衛協力について、ミサイル警戒訓練をはじめとする近年の共同訓練の取り組みについて進展を評価し、今後も実施していく方向性を確認した。実務レベルにおいては、同年4月、東京において局長級協議を実施し、北朝鮮に対し核及び弾道ミサイル開発計画を放棄し、地域の緊張を高めるだけである挑発行為を停止するとともに、国際的な義務や約束を遵守するよう求めた。参謀総長級のレベルにおいても、統幕長が、16(同28)年10月、米国を訪問し日米韓参謀総長等会談に参加し、増大する北朝鮮の核及びミサイルの脅威に対応するための3か国による協力について議論を行っている。

また、16(同28)年6月、11月、17(同29)年1月及び3月に日米韓弾道ミサイル情報共有訓練を実施するとともに、16(同28)年10月には海上阻止訓練を、17(同29)年4月には対潜戦訓練を日米韓の共同訓練としては初めて実施するなど、日米韓の協力関係はより実質的な関係へと深化しており、今後も様々な機会を活用して、あらゆる分野において日米韓3か国の安全保障協力を強化していくことが求められている。

3 日印防衛協力・交流
(1)インドとの防衛協力・交流の意義など

インドは、世界最大となることが見込まれている人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、地政学的に極めて重要な国である。また、インドとわが国は、普遍的価値10を共有するとともに、アジア及び世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別な戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、近年、日印両国は安全保障分野での関係も強化している。

日印間の防衛協力・交流は、08(同20)年10月に「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」が署名されて以来着実に深化し、防衛大臣、幕僚長などの各レベルでの協議や、二国間及び多国間の訓練を含む軍種間交流などが定期的に行われている。また、14(同26)年9月には、日印防衛協力及び交流の覚書が、15(同27)年12月には、日印防衛協力・交流の制度上の基礎をさらに整備する「防衛装備品・技術移転協定」及び「日印秘密軍事情報保護協定」がそれぞれ署名され、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

16(同28)年7月の日印防衛相会談において、両国の大臣は日印防衛交流の重要性を再確認するとともに、翌年以降のマラバールを日米印3か国主催の訓練として実施することや、人道支援・災害救援分野における訓練へのオブザーバー参加をはじめ幅広い分野で交流を積み重ね、連携強化を図ることで一致した。さらに、両大臣は同月の比中仲裁判断の結果に言及し、海洋の安全と安定を確保することの重要性を再確認した。また、17(同29)年5月には、ジャイトリー印国防大臣が訪日し、共同訓練や各種部隊間交流などをさらに推進していくことで一致した。

各軍種においても、16(同28)年11月の陸軍種幕僚対話及び17(同29)年4月の陸幕長訪印、16(同28)年12月の海軍参謀長訪日、同年同月の空幕長訪印をはじめとする様々な機会に軍種間協力・交流の推進に向けた具体策や方向性に関する協議が行われた。日印両首脳も同年11月に行われた首脳会談の共同声明で「全ての3軍種において組織間をつなぐ幅広い対話メカニズムが整備された」として、これらの協議を歓迎した。

演習・訓練などでは、16(同28)年6月、海自が佐世保から沖縄東方海域におけるマラバール2016に参加したほか、同年12月、海賊対処行動からの帰投の機会に印海軍艦艇との間で親善訓練を実施した。

さらに、同年7月の空自の KC-767空中給油・輸送機による訪印や同年12月の陸軍種間における対テロ分野の専門家交流、さらに、17(同29)年3月のインド空軍ヘリコプター搭乗員による空自救難部隊訪問など、各軍種間の交流も活発化している。

参照資料55(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

4 日中防衛交流・協力
(1)中国との防衛交流・協力の意義など

わが国と中国との安定的な関係は、アジア太平洋地域の平和と安定に不可欠の要素であり、大局的かつ中長期的見地から、安全保障を含むあらゆる分野において、日中で「戦略的互恵関係」を構築し、それを強化できるよう取組んでいく必要がある。特に、中国が、地域の平和と安定及び繁栄のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守し、急速に拡大する国防費を背景とした軍事力の強化に関して、透明性を向上させるよう引き続き促していく。その一環として、防衛交流の継続・促進により、中国の軍事・安全保障政策の透明性の向上を図るとともに、不測の事態の発生の回避・防止のための枠組みの構築を含めた取組を推進する。

(2)最近の主要な防衛交流実績など

日中防衛交流は、12(同24)年9月の尖閣三島(魚釣島、南小島、北小島)の取得・保有以降、停滞していたが、14(同26)年後半以降、交流が徐々に再開している。

15(同27)年11月には、ADMMプラスに際して、4年5か月ぶりとなる日中防衛相会談が実施され、日中間の諸問題について率直な意見交換を行うとともに、「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」の早期運用開始を始めとし、日中防衛交流を発展させていくことが重要であるとの認識で一致した。不測の衝突を回避し、海空域における不測の事態が軍事衝突や政治問題に発展することを防止することを目的とする「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」については、16(同28)年9月の日中首脳会談においても、早期に運用開始するため、協議を加速することで一致し、同年11月には、同メカニズムに関する第6回共同作業グループ協議が開催された。これらの協議を通じ、同メカニズムの早期運用開始に向け、その具体的内容について中国側と調整を継続している。

また、日中高級事務レベル海洋協議については、16(同28)年9月及び12月に、第5回及び第6回会議を実施したほか、同年11月に第14回日中安保対話が開催された。

今後も、「戦略的互恵関係」構築の一環として、様々なレベル・分野における対話を通じて、日中間の信頼関係・相互理解の増進に努めるとともに、海賊対処など非伝統的安全保障分野における具体的な協力を積極的に推進することが必要である。

参照資料56(最近の日中防衛交流・協力の主要な実績(過去3年間))

5 日露防衛交流・協力
(1)ロシアとの防衛交流・協力の意義など

ロシアは、欧州、中央アジア及びアジア太平洋地域の安全保障に大きな影響力を持ち、かつ、わが国の重要な隣国でもあることから、日露の防衛交流を通じて信頼関係を増進させることが極めて重要である。防衛省・自衛隊は、様々な分野で日露関係が進展する中、1999(同11)年に作成された日露防衛交流に関する覚書(06(同18)年改定)に沿って、各種の防衛当局間の対話をはじめ、日露海上事故防止協定に基づく年次会合や捜索・救難共同訓練などを継続的に行っている。

ロシアとの関係については、ウクライナ情勢などを踏まえ、政府としてG7(Group of Seven)の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも実務的コンタクトは絶やさないようにすることが重要であり、これらの点を総合的に勘案してロシアとの交流を進めている。

(2)最近の主要な防衛交流実績など

13(同25)年4月に行われた日露首脳会談では、アジア太平洋地域の役割の増大と、国際的安全保障分野における大きな変化の中で、日露両国間の安全保障・防衛分野における協力を拡大することの重要性を確認し、日露「2+2」を立ち上げることで合意した。同年11月に実施された初の日露「2+2」において、陸軍種間の部隊間交流及び演習オブザーバー相互派遣の定例化、アデン湾における海自とロシア海軍の海賊対処部隊間の共同訓練の実施及び日露サイバー安全保障協議の定例開催などで合意した。

さらに、16(同28)年12月に行われた日露首脳会談で、両首脳は、両国の安全保障会議間の対話や防衛交流が行われていることを歓迎し、今後もこれらの対話や交流を継続することで一致した。こうした中、17(同29)年1月、海自は16回目となる日露捜索・救難共同訓練を舞鶴において実施した。

同年3月に実施された第2回目の日露「2+2」においては、地域情勢などについて意見交換を行うとともに、実務レベル協議、部隊間交流、日露捜索・救難共同訓練などを引き続き継続していくことで一致した。北方領土への地対艦ミサイルの配備や、北方四島を含み得る諸島への師団配備といった北方四島におけるロシア軍の軍備強化にかかる動きについては、北方領土はわが国固有の領土であるとのわが国の立場と相容れないものであり、遺憾である旨を日本側から申し入れた。

参照資料57(最近の日露防衛交流・協力の主要な実績(過去3年間))

6 ASEAN諸国との防衛協力・交流

高い経済成長を続け、「世界の開かれた成長センター」としての潜在力を世界各国から注目されているASEAN諸国とわが国は、50年近くに及ぶ交流の歴史と密接な経済関係を有する伝統的パートナーである。

わが国のシーレーンの要衝を占める地政学的に重要な地域に位置するASEAN諸国は、わが国及び地域全体の平和と繁栄の確保においても重要な役割を果たしており、ASEAN諸国との間で安全保障・防衛分野における協力を強化し、信頼関係を増進することは重要である。

このような考えに基づき、ASEAN諸国との間では、ハイレベル・実務レベル交流を通じた信頼醸成及び相互理解の促進を行うとともに、能力構築支援、共同訓練、防衛装備・技術協力などの実質的な協力を推進している。また、これらの二国間協力に加え、ADMMプラスやARFといった多国間の枠組みでの協力も強化しており、16(同28)年11月にラオスで開催された第2回日ASEAN防衛担当大臣会合では、稲田防衛大臣から、今後の日ASEAN防衛協力の指針として「ビエンチャン・ビジョン」を表明し、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示し、ASEANの全ての国々から歓迎された。

こうした二国間・多国間の協力を積極的に促進し、アジア太平洋地域の安全保障環境を安定化させる観点から、ASEAN諸国との防衛協力・交流の強化を図っている。

参照1節2項(防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話)図表III-2-1-4(能力構築支援の最近の取組状況(2016.6~2017.6))図表III-2-1-5(能力構築支援の活動実績)資料51(能力構築支援の実績)資料58(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)インドネシア

インドネシアは、ASEAN諸国の中で最大の国土と人口を有する世界最大の島嶼国家であり、わが国と防衛分野において活発な協力・交流を行っている。15(同27)年3月の日インドネシア首脳会談において、ジョコ大統領と安倍内閣総理大臣は、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化に合意し、日インドネシア「2+2」を開催することについて再確認した。同年12月に東京で初めて開催された同会合では、防衛装備品・技術移転協定の交渉の開始、多国間共同訓練(コモド2016)への積極的な参加及び能力構築支援を進展させることなどで合意した。17(同29)年1月の日インドネシア首脳会議の際に発出された共同声明では、安全保障・防衛分野の緊密な協力をさらに推進することを目的として日インドネシア「2+2」の定期開催及び外務・防衛当局間協議の開催を含め、外務・防衛当局間の様々なレベルで対話を継続することの重要性が確認された。また、実務レベルでも、外務・防衛当局間協議、防衛当局間協議、各種教育・研究交流など、各種レベルで交流が行われている。

軍種間では、16(同28)年12月に統幕長がラオス及びインドネシアを訪問したほか、同年4月に海自の護衛艦がインドネシア周辺海空域で行われたコモド2016に参加し、捜索救難・人道支援に関する訓練を実施するとともに、17(同29)年2月に外洋練習航海部隊がジャカルタに寄港した。

また、17(同29)年1月には、空自のKC-767空中給油・輸送機がインドネシアを訪問し、部隊間交流を実施した。

さらに、海洋学や海洋に関する国際法、国際航空法に関する能力構築支援を通じた協力にも取り組んでいる。

(2)ベトナム

約9千万の人口を擁する南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展している。14(同26)年3月の日ベトナム首脳会談においては、両国関係を「広範な戦略的パートナーシップ」へと発展させることが合意され、また、17(同29)年1月には安倍内閣総理大臣がベトナムを訪問し日ベトナム首脳会談において、安全保障及び防衛分野における協力を強化することが確認された。

15(同27)年11月の防衛相会談では、南シナ海の戦略的要衝に位置するカムラン湾国際港への海自艦艇の寄港、PKO分野における協力の継続、人道支援・災害救援に関する海上訓練の実施、能力構築支援の拡充、防衛装備・技術協力に関する事務レベル協議の開始など、両国間の防衛協力を強化させることで一致した。

同会談における合意に基づき、16(同28)年4月にカムラン湾国際港に海自艦艇が初寄港するとともに、同年7月には統幕長がパシフィック・パートナーシップ2016を視察するためベトナムを訪問した。また、同年12月には空自輸送機部隊がベトナムを訪問し、ベトナム防空・空軍と部隊間交流を実施した。

今後も、防衛協力・交流の覚書を基礎として、より具体的・実務的な協力を実現すべく、関係を強化することが重要である。

(3)シンガポール

シンガポールは09(同21)年12月に、わが国が東南アジア諸国の中で最初に防衛協力・交流の覚書に署名した国であり、この覚書に基づき協力関係が着実に進展している。シンガポールとの間では、定期的に防衛当局間協議を行っており、これまで15回の開催実績があるほか、英国国際戦略研究所(IISS:the International Institute for Strategic Studies)が主催するシャングリラ会合にはほぼ毎年防衛大臣が参加し、わが国の安全保障政策について説明するなど、ハイレベル交流も活発に行われている。

17(同29)年6月に開催された第16回シャングリラ会合において、稲田防衛大臣は、ウン国防大臣と会談を行い、地域情勢や防衛協力・交流などについて意見交換を行い、引き続き関係強化を図っていくことを確認した。

さらに、同年5月には、シンガポール海軍50周年観艦式に海幕長が参加するとともに、海自の護衛艦「いずも」及び「さざなみ」を派遣した。

その他、国連PKOや海賊対処活動などの国際協力業務遂行に際した寄港や軍種間交流も積極的に行われている。

(4)フィリピン

フィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。 15(同27)年1月の防衛相会談では、日フィリピン防衛協力・交流に関する覚書に署名し、防衛相会談・次官級協議の定期的な実施、統幕及び各幕の幕僚長とフィリピン国軍司令官及び各軍司令官の間の相互訪問、訓練・演習への参加のほか、海洋安全保障をはじめとする非伝統的安全保障分野における協力を実施することとした。

また、同年11月の日比首脳会談では、防衛装備品・技術移転協定について大筋合意に達し、16(同28)年2月に同協定が署名された。

さらに、同年9月の日比首脳会談では人道支援・災害救援、輸送及び海洋状況把握に係るフィリピンの能力向上を図るため、海自TC-90練習機の移転などについて合意した。17(同29)年1月のドゥテルテ大統領との日比首脳会談では、能力構築支援、防衛装備協力や訓練・演習など、様々な分野で防衛協力を推進することで一致した。

同年3月には、ヘラクレオ・アラノ・サングレーポイント海軍基地において、日本から若宮防衛副大臣、フィリピンからロレンザーナ国防大臣の出席のもと、フィリピン海軍へ2機の海自TC-90練習機の引き渡しが行われた。また、平成29(2017)年度内をめどに残りの3機が移転される予定である。この移転は、単に機体の移転だけではなく、フィリピン海軍パイロットに対する教育やフィリピン海軍などの整備要員に対する維持整備の支援を含めた協力となっている。また、同年6月、ドゥテルテ大統領が、外国の元首として初めて、スービック港に寄港中の海自護衛艦「いずも」に乗艦し、艦内の医療設備などを視察した。ドゥテルテ大統領は、その人道支援・災害救援対処能力の高さを称賛したほか、河井内閣総理大臣補佐官との間で、日フィリピンの二国間関係や国際情勢について、親密かつ率直な意見交換を実施し、視察後には、「日本は歴史的に大切な親友であり、これからも共に歩んでいきたい」と述べた。

海自護衛艦「いずも」に乗艦するドゥテルテ大統領(17(平成29)年6月)

海自護衛艦「いずも」に乗艦するドゥテルテ大統領
(17(平成29)年6月)

さらに、軍種間では、統幕長が16(同28)年9月にCHOD会議参加のためフィリピンを訪問した際に、フィリピン参謀総長と会談を行った。このほか、16(同28)年7月には空自輸送機部隊(KC-767空中給油・輸送機)がフィリピンを訪問し部隊間交流を実施するとともに、17(同29)年5月に、米比共同訓練(バリカタン2017)に陸海空自衛隊の要員が参加した。また、同年同月には、空幕長がフィリピンを訪問し、フィリピン空軍司令官などとハイレベル交流を行った。

参照4章4節3項(新たな防衛装備・技術協力の構築)

(5)タイ

タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、防衛協力・交流の長い歴史を有している。また、防衛大学校への留学生の受入れについては、1958(昭和33)年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多である。防衛省・自衛隊は、05(平成17)年から米・タイ共催の多国間共同訓練(コブラ・ゴールド)に参加しており、16(同28)年2月には、統合幕僚長が同訓練を視察するとともに、ハイレベル交流を実施した。

また、16(同28)年4月には、タイに対する初めての能力構築支援として、国際航空法の分野における人材育成セミナーを実施するとともに、同年5月にはタイ空軍セイフティセンターに対して飛行安全に関する招へい事業を行った。16(同28)年6月には中谷防衛大臣(当時)がタイを訪問し、プラユット首相への表敬やプラウィット副首相兼国防大臣などとの会談を行い、二国間の防衛協力・交流を強化することで一致した。

軍種間では、同年11月に空幕長がタイを訪問し、防衛大学校卒業生で初めてタイ空軍司令官に就任したジョム大将と会談した。また、同司令官は、17(同29)年5月にわが国を訪問し、空幕長と会談を行い、日タイ空軍種間の関係強化が地域の平和と安定に寄与する重要なものであるとの認識を共有した。また、同年1月には、空自U-4多用途支援機がタイを訪問し、部隊間交流を実施した。

防衛大学校卒業生(26期)として初のタイ空軍司令官に就任したジョム大将と会談する杉山空幕長(16(平成28)年11月)

防衛大学校卒業生(26期)として初のタイ空軍司令官に就任した
ジョム大将と会談する杉山空幕長(16(平成28)年11月)

(6)カンボジア

カンボジアは、1992(同4)年にわが国として初めて国連PKOに自衛隊を派遣して、以来、13(同25)年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。同年12月、日カンボジア首脳会談において、両国関係は戦略的パートナーシップへと格上げされ、会談後、小野寺防衛大臣(当時)は日カンボジア防衛協力・交流の覚書に署名を行った。また、道路構築実習などの能力構築支援を通じた協力の強化にも取り組んでいる。

軍種間では、17(同29)年2月に海自の外洋練習航海部隊がシハヌークビルに寄港し、カンボジア海軍と親善を目的とした部隊間交流を行った。

(7)ミャンマー

ミャンマーとの間では、11(同23)年3月の民政移管後、防衛事務次官がミャンマーを初訪問したほか、日本側主催の多国間会議にミャンマーからの参加を得る形で交流を発展させてきた。13(同25)年11月には、第1回防衛当局間の協議を首都ネーピードーで開催し、今後の防衛交流の進め方について意見交換し、交流を強化していくことで一致した。14(同26)年11月には、江渡防衛大臣(当時)が第1回日ASEAN防衛担当大臣会合に出席するため、議長国であったミャンマーを訪問し、その際にウェイ・ルイン国防大臣(当時)と会談し、防衛交流を促進することを確認した。

16(同28)年6月には、中谷防衛大臣(当時)がミャンマーを訪問し、ミン・アウン・フライン国軍司令官及びセイン・ウィン国防大臣とそれぞれ会談するとともに、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を表敬した。16(同28)年9月には、日ASEAN防衛当局次官級会合における基調講演者として、セイン・ウィン国防大臣がミャンマーの国防大臣として初めて訪日し、稲田防衛大臣と会談を行い、対話や協力を通じて地域の平和と安定を推進していくことの重要性を共有することで一致した。

また、15(同27)年7月及び16(同28)年10月に空軍司令官が訪日したほか、15(同27)年8月に国軍副司令官兼陸軍司令官が訪日するなど、ハイレベル交流が進展している。16(同28)年3月には、空自輸送機部隊がミャンマーを訪問し、ミャンマー空軍との初の部隊間交流を行った。さらに、航空気象などの能力構築支援を通じた協力強化にも取り組んでいる。

(8)ラオス

ラオスとの間では、在ベトナム防衛駐在官が、11(同23)年に在ラオス防衛駐在官併任となって以来、防衛協力・交流が徐々に進展している。13(同25)年4月には、ラオスから初となる防衛大学校への留学生が派遣されたほか、同年8月、初の日ラオス防衛相会談が行われた。14(同26)年より、ラオスとADMMプラスにおける人道支援・災害救援EWGの共同議長を務め、マルチの枠組みにおける協力を通じ、日ラオス防衛当局間の関係は大きく進展した。また、16(同28)年11月、稲田防衛大臣が日本の防衛大臣として初めてラオスを訪問し、チャンサモーン国防大臣との間でハイレベル交流や能力構築支援など、さらなる防衛協力の方策について意見交換を実施し、防衛協力・交流を推進することで一致した。これを受け、同年12月には初めて統幕長がラオスを訪問した。

また、空自輸送機部隊(KC-767空中給油・輸送機)がラオスを訪問し、ラオス空軍と部隊間交流を実施した。能力構築支援では、同年8月に陸自がラオス陸軍工兵部隊及び衛生部隊に対して人道支援・災害救援分野に関する教育を実施した。

(9)マレーシア

マレーシアとの間では、17(同29)年6月に開催された第16回シャングリラ会合において、日マレーシア防衛相会談を行い、二国間防衛協力・交流などについて意見交換を行い、引き続き日マレーシア間で連携を図っていくことで一致した。

軍種間では、16(同28)年4月及び17(同29)年3月に、マレーシア周辺海域において海自艦艇とマレーシア海軍艦艇が親善訓練を行い、17(同29)年2月にはマレーシア海軍司令官が訪日し、海幕長との間で海洋安全保障に関する意見交換が行われた。また、空自は、同1月に輸送機部隊(U-4多用途支援機)がスバンを訪問し部隊間交流を行った。

さらに、同年4月には、練習潜水艦を伴う海自外洋練習航海部隊がコタ・キナバルに寄港するなど、様々な分野において自衛隊とマレーシア国軍の関係強化が図られている。

マレーシア海軍主催国際観艦式などのためマレーシアを訪問しマレーシア皇太子の視察を受ける海自護衛艦「てるづき」(16(平成28)年5月)

マレーシア海軍主催国際観艦式などのためマレーシアを訪問し
マレーシア皇太子の視察を受ける海自護衛艦「てるづき」
(16(平成28)年5月)

(10)ブルネイ

ブルネイとの間では、13(同25)年8月、ブルネイで開催された第2回ADMMプラスの際、小野寺防衛大臣(当時)がヤスミン首相府エネルギー大臣と会談を行い、ADMMプラスの取組について意見交換を行った。また、同年6月にADMMプラスの枠組みでブルネイにおいて初めて開催された人道支援・災害救援及び防衛医学EWG共催演習に陸・海・空の自衛隊機が参加し、16(同28)年5月、ADMMプラス海洋安全保障EWGの共同議長国であるブルネイにおいて開催された共同演習に護衛艦「いせ」が参加し、その際にブルネイ国王による「いせ」視察が行われた。

7 その他のアジア太平洋諸国との防衛交流・協力

参照図表III-2-1-1(ハイレベルの交流実績(16(平成28)年6月~17(平成29)年5月)図表III-2-1-4(能力構築支援の最近の取組状況(2016.6~2017.6))図表III-2-1-5(能力構築支援の活動実績)資料51(能力構築支援の実績)資料59(最近のその他アジア太平洋諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)ニュージーランド

ニュージーランドとの間では、13(同25)年8月、防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、14(同26)年7月の首脳会談では、ACSAに関する研究を行うことで一致した。

さらに、17(同29)年6月には、第16回シャングリラ会合に際して日ニュージーランド防衛相会談を行い、両国間の様々なレベルで人的交流が積極的に行われていることを評価し、艦艇や航空機の部隊間交流を含む防衛協力をさらに促進していくことで一致した。

また、軍種間においては、16(同28)年11月にニュージーランドで行われた国際観艦式及びADMMプラス海洋安全保障実動訓練に海自の護衛艦「たかなみ」が参加するとともに、ニュージーランド主催多国間共同訓練にP-1哨戒機2機が参加した。また、同月にニュージーランド南島で地震が発生した際には、派遣されていたP-1哨戒機1機が国際緊急援助活動として被災状況の確認を行った。

また、同年10月には、ニュージーランド空軍輸送機が来日して空軍種間として初となる部隊間交流を行ったほか、17(同29)年2月には、空幕長が12年ぶりにニュージーランドを訪問し、ニュージーランド空軍主催エアショー(エアタトゥー)に参加するとともに、ニュージーランド空軍司令官と意見交換を実施し、防衛協力を深化させることで一致した。また、このエアショーには、KC-767空中給油・輸送機を参加させ、部隊間交流を行った。

(2)モンゴル

モンゴルとの間では、12(同24)年1月の防衛協力・交流に関する覚書の署名後、ハイレベル交流が進むとともに、能力構築支援を通じた協力の強化にも取り組んでいる。15(同27)年5月の第14回シャングリラ会合に際して、日モンゴル防衛相会談を行い、両国の防衛協力・交流について意見交換を行い、同年10月の統幕長とモンゴル国軍参謀総長との会談では、PKO分野での安全保障協力の推進について合意した。

また、16(同28)年9月には、能力構築支援事業(施設分野)の修了式に際し、小林政務官がモンゴルを訪問した。

モンゴルにおいて行われた能力構築支援事業(施設分野)の修了式において訓示する小林政務官(16(平成28)年9月)

モンゴルにおいて行われた能力構築支援事業(施設分野)の修了式において
訓示する小林政務官(16(平成28)年9月)

(3)東ティモール

02(同14)年から、国連PKOとして独立支援のために自衛隊を派遣した東ティモールとの間では、16(同28)年6月に中谷防衛大臣(当時)が14年ぶりに東ティモールを訪問し、クリストバウン大臣との間で、能力構築支援、留学生の防衛大学校などへの派遣、海自艦艇の寄港などを通じて防衛当局間の交流を継続・深化させていくことで一致し、同年9月には護衛艦「ふゆづき」が東ティモールに寄港した。

(4)スリランカ

16(同28)年12月に宮澤政務官が政務レベルとして初めてスリランカを訪問した。軍種間では、同年に6回、同国海軍艦艇と海自艦艇による捜索救難訓練などが実施されたほか、16(同28)年11月、スリランカ海軍主催国際海洋安全保障シンポジウム(ゴールダイアログ2016)に海自が参加した。

政務レベルで初めてスリランカを訪問し大統領を表敬する宮澤政務官(16(平成28)年12月)

政務レベルで初めてスリランカを訪問し大統領を表敬する宮澤政務官
(16(平成28)年12月)

8 欧州諸国との防衛協力・交流

欧州は、わが国と普遍的価値を共有し、また、テロ対策や海賊対処などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、欧州諸国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州の双方にとって重要である。

参照図表III-2-1-1(ハイレベルの交流実績(16(平成28)年6月~17(平成29)年5月)
資料60(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)英国

英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処などのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。

英国との間では、12(同24)年6月に防衛協力のための覚書が取り交わされたのに続き、13(同25)年7月に防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、14(同26)年1月には日英情報保護協定が発効し、二国間の防衛装備・技術協力及び情報共有の基盤が整備された。

14(同26)年5月の日英首脳会談において、両首脳は、安全保障分野の協力強化のため、日英「2+2」の開催、ACSAの交渉開始、自衛隊と英国軍の共同訓練の強化を目指すことについて一致した。これを受け、15(同27)年1月に第1回「2+2」が開催され、安全保障及び防衛分野の協力を強化していくことで一致するとともに、戦略的情勢認識の共有を図った。また、16(同28)年1月の第2回「2+2」では、①防衛装備・技術協力について、これまで実施してきた2件の共同研究の進捗とともに、新たに人員脆弱性評価についての共同研究を開始すること、②同年内の英国空軍機タイフーンの訪日やペルシャ湾での国際掃海訓練時における日英共同訓練を追求すること、③東南アジア諸国の能力構築において二国間で連携していくこと、④ACSAの可能な限り早期の締結を目指すことなどについて確認した。

これを受け、16(同28)年6月及び10月に両国で能力構築支援に係る日英防衛当局間課長級ワーキング・グループを開催したほか、10月から11月に英国空軍タイフーン戦闘機部隊が三沢基地を訪問し、空自との共同訓練を実施した。本訓練は、空自が日本を拠点として、米国以外の国と行った初めての共同訓練であった。また、17(同29)年1月には、日英ACSA11への署名が行われ、その後、関連法令を整備した。これにより、共同訓練や大規模災害対処などにおいて、自衛隊と英国軍との間で、水・食糧・燃料・輸送などの物品又は役務を統一的な手続により相互に融通することが可能となり、日英間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなる。

このほか、16(同28)年7月、空自のKC-767空中給油・輸送機が英国で開催された国際航空ショー(RIAT:Royal International Air Tattoo)に参加し、部隊間交流を実施するとともに、同年11月には、英国王立安全保障研究所(RUSI:Royal United Services Institute)アジア本部にて開催された第3回RUSI日英安全保障会議において空幕長及び英空軍参謀長がパネルディスカッションに参加している。さらに、同年同月には、アデン湾において日英海軍艦艇による親善訓練を実施するなど、交流が進展している。

(2)フランス

フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。

14(同26)年1月には、パリで第1回「2+2」が開催され、同年7月にはル・ドリアン国防大臣が訪日し、防衛協力・交流に関する意図表明文書が署名された。15(同27)年3月に東京で開催された第2回「2+2」では、テロの脅威を強調の上、情報交換やアフリカ・中東での協力を強化し、国際社会と協力してテロとの闘いに取り組んでいくこと、防衛装備・技術協力、海洋安全保障などの分野での協力を強化していくことを確認するとともに、防衛装備品・技術移転協定に署名した。17(同29)年1月には、パリで第3回「2+2」が開催され、①日仏ACSAの交渉開始、②防衛装備・技術分野での初の具体的協力案件として、機雷対処用水中無人航走体に関する協力を具体化していくこと、③共同訓練を推進することを確認したほか、宇宙状況把握(SSA)を始めとする宇宙分野での協力を具体化することへの期待を表明した。これを受けて、17(同29)年3月に、第2回日仏包括的宇宙対話が開催され、日仏間のSSA協力を強化するため、「日本国の権限のある当局とフランス共和国国防大臣との間の宇宙状況把握に係る情報共有に関する技術取決め」に署名し、具体的な協力を促進することで一致した。

パリにおける第3回日仏「2+2」に参加した稲田防衛大臣(17(平成29)年1月)

パリにおける第3回日仏「2+2」に参加した稲田防衛大臣
(17(平成29)年1月)

17(同29)年6月には、第16回シャングリラ会合に際して日仏防衛相会談を行い、両大臣は、フランスによるアジア太平洋地域への関与の重要性を確認するとともに、日仏英米による共同訓練実施を歓迎しつつ、共同訓練や防衛装備・技術協力をはじめとする防衛協力・交流を一層強化していくことで一致した。

また、ニューカレドニア駐留仏軍主催人道支援・災害救援訓練(赤道・南十字星)に14(同26)年から自衛隊が参加している。

(3)NATO

14(同26)年5月に安倍内閣総理大臣が欧州を訪問した際、NATO本部においてラスムセン事務総長(当時)と会談を行い、日NATO国別パートナーシップ協力計画に署名した。

この計画に基づき、同年12月、女性・平和・安全保障分野における日NATO協力として、初めてNATO本部に陸自の女性自衛官を派遣するとともに、15(同27)年以降、「ジェンダー視点のNATO委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合」に防衛省・自衛隊より参加している。

17(同29)年1月、稲田防衛大臣が10年ぶりにブリュッセルのNATO本部を訪問し、ストルテンベルグ事務総長と会談を行った。会談では、今日の安全保障上の諸課題に対処していく上での日NATO協力の重要性を確認し、海賊対処を含む海洋安全保障、サイバー、人道支援・災害救援、女性・平和・安全保障をはじめとする様々な分野における協力を推進していくことで一致した。また、同会談において、以前よりNATO側から提案のあった欧州連合軍への連絡官派遣について、稲田防衛大臣から連絡官派遣の意向を伝え、同年2月から、欧州連合軍最高司令部に新規に連絡官が配置された。

また、16(同28)年6月、パベルNATO軍事委員長が日本を公式訪問し、統幕長と会談を行い、日NATO国別パートナーシップ協力計画に基づき、引き続き緊密に協力していくことを確認した。

(4)その他の欧州諸国

ドイツとの間では、15(同27)年5月、シンガポールで開催された第14回シャングリラ会合において、フォン・デア・ライエン国防相と6年ぶりとなる日独防衛相会談が行われたほか、16(同28)年9月に統幕長が訪独するなど、ハイレベル・実務レベルの交流が進展している。

イタリアとの間では、16(同28)年6月に情報保護協定が発効したほか、17(同29)年5月に防衛装備品・技術移転協定への署名がなされるなど、防衛協力を行っていく上での制度面の整備が進んでいる。16(同28)年6月には、第15回シャングリラ会合に際して日伊防衛相会談を行い、両大臣は、日伊外交関係樹立150周年の節目の年を捉え、海自遠洋練習航海部隊のイタリア寄港や防衛装備・技術協力をはじめとする日伊防衛協力・交流を進めていくことで一致した。17(同29)年5月には、ピノッティ国防大臣が訪日し、防衛相会談に際して、防衛協力・交流の覚書への署名がなされたほか、今後、防衛装備・技術分野を始めとする日伊間の防衛協力・交流をさらに活発化させていくことを確認した。

オランダとの間では、同国軍参謀総長が15(同27)年10月に来日して統幕長と会談し、PKOや海賊対処での協力を図ることで合意したほか、16(同28)年12月にヘニス・プラサハート国防大臣が訪日し、日オランダ防衛相会談に際して防衛協力・交流の覚書が署名された。

北欧諸国との間では、局長級の防衛当局間協議に加え、17(同29)年2月の防衛審議官によるスウェーデン及びフィンランド訪問、同年同月の統幕長のスウェーデン訪問や同年3月のフィンランド空軍司令官訪日といったハイレベルの交流などを通じて関係の強化が図られている。

9 その他諸国

参照図表III-2-1-1(ハイレベルの交流実績(16(平成28)年6月~17(平成29)年5月)
資料61(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

カナダとの間では、これまで、ハイレベル交流や防衛当局間協議などが行われてきた。直近では、16(同28)年6月に、第15回シャングリラ会合に際して日加防衛相会談を行い、両大臣は、日加両国は同じ太平洋国家であり、基本的価値を共有するパートナーであることを確認し、定期協議や艦艇の相互訪問を含む防衛交流が着実に実施されていることを歓迎しつつ、カナダ新政権においてもさらに交流を進展させていくことで一致した。

コロンビアとの間では、15(同27)年3月、訪日したピンソン国防大臣と初の防衛相会談を行った。また、16(同28)年12月には防衛交流に関する覚書に署名し、今後具体的な交流を進めていくこととしている。

ブラジルとの間では、16(同28)年2月、陸幕長が初めて訪問し、ブラジル陸軍との交流の本格化について合意した。

カザフスタンとの間では、16(同28)年10月、カザフスタンに対する能力構築支援事業として、カザフスタン国防省要員の5名を日本へ招へいし、主に医療分野における取組などについて説明するとともに、自衛隊が使用している機材・施設の視察や戦傷外科に関する実習の見学などを実施した。

中東諸国については、トルコとの間で、12(同24)年7月に、事務次官がドゥンダル国防次官(当時)との会談において防衛交流・協力の意図表明文書に署名した。13(同25)年3月には、ユルマズ国防大臣(当時)が訪日して日トルコ防衛相会談を行い、防衛当局間協議を早期に開催することや各種の防衛交流を進めていくことについて合意した。また、16(同28)年5月には、陸幕長がトルコを訪問し、陸軍種間の防衛協力・交流を推進することで合意した。

ヨルダンとの間では、16(同28)年10月、アブドッラー国王が訪日した際に、日ヨルダン防衛交流に関する覚書に署名した。また、17(同29)年2月には、ヨルダン統合参謀本部議長を日本に公式招待し、統幕長との会談において、今後も覚書に基づき、ヨルダンとの交流を推進することで合意した。

サウジアラビアとの間では、13(同25)年4月及び14(同26)年2月に首脳会談を行い、安全保障分野での対話や防衛交流の促進、両国安全保障会議間での対話の開始を含む様々なレベルでの協議と協力を継続し、二国間の包括的パートナーシップを強化することを改めて確認した。16(同28)年9月にはムハンマド・ビン・サルマン副皇太子兼国防大臣が訪日して日サウジアラビア防衛相会談を行うとともに、日サウジアラビア防衛交流に関する覚書に署名した。また、軍種間では、17(同29)年1月に統幕長がサウジアラビアを訪問し、参謀総長との会談において、両国がそれぞれ派遣している防衛駐在官及び国防武官を通じ、さらに交流を進展させていくことで合意した。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン国防大臣(右)と握手する河野統幕長(左)(17(平成29)年1月)

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン国防大臣(右)と握手する
河野統幕長(左)(17(平成29)年1月)

アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート及びカタールとの間では、13(同25)年5月及び8月、安倍内閣総理大臣が相次いで訪問し、安全保障・防衛分野での協力の促進の必要性について認識を共有した。また、12(同24)年4月にはバーレーンとの、15(同27)年2月にはカタールとの間で防衛交流に関する覚書が署名された。また、軍種間では、17(同29)年1月に統幕長がカタールを訪問し、参謀総長との会談において、カタール軍の教育機関における自衛隊員に対するアラビア語研修支援を、今後も継続していくことで合意した。

オマーンとの間では、14(同26)年1月、安倍内閣総理大臣がカブース国王と会談を実施し、海上航路の安全確保のための海賊対策などを含む海洋安全保障分野での協力強化や防衛交流の促進について合意した。また、軍種間では、17(同29)年2月に統幕長がオマーンを訪問し、参謀総長と会談し、アデン湾及びアラビア海のシーレーンの重要性について認識を共有した。

ジブチについては、現在、海外で唯一、自衛隊の拠点が存在し、海賊対処のための取組を実施している。16(同28)年8月には稲田防衛大臣がジブチを訪問し、アデン湾を航行する船舶の安全確保に寄与する自衛隊の取組の重要性に関して双方が認識を共有した。また、同年11月には陸幕長がジブチ陸軍司令官を日本に公式招待するとともに、17(同29)年1月から3月の間、ジブチ軍に対し災害対処能力強化支援事業として、重機の操作教育を実施するなど、同国との関係強化を図っている。

派遣海賊対処行動航空部隊を視察し搭乗員から説明を受ける稲田防衛大臣(ジブチ)(16(平成28)年8月)

派遣海賊対処行動航空部隊を視察し搭乗員から説明を受ける
稲田防衛大臣(ジブチ)(16(平成28)年8月)

8 普遍的価値:国家安全保障戦略においては、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配など」を普遍的価値としている。

9 正式名称:日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定
現行の適用対象となる活動に加え、①国際連携平和安全活動、②国際平和共同対処事態、③重要影響事態、④武力攻撃事態等及び⑤存立危機事態における活動のほか、⑥在外邦人等の保護措置、⑦海賊対処行動、⑧機雷等の除去及び⑨情報収集活動についても新たにその適用対象となる。

10 脚注8参照

11 対象となる活動として、①共同訓練、②国際連合平和維持活動、③国際連携平和安全活動、④人道的な国際救援活動、⑤大規模災害への対処、⑥在外邦人等の保護措置及び輸送、⑦連絡調整その他の日常的な活動、⑧それぞれの国内法令により物品又は役務の提供が認められるその他の活動が挙げられている。