わが国は多くの島嶼を有するが、これに対する攻撃に対応するためには、安全保障環境に即した部隊などの配置とともに、自衛隊による平素からの常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知することが重要である。事前に兆候を得た場合には、敵に先んじて攻撃が予想される地域に、陸・海・空自が一体となった統合運用により、部隊を機動的に展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する。事前に兆候が得られず万一島嶼を占領された場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼奪回のための作戦を行う。
島嶼防衛において特に重要なのは、海上優勢・航空優勢の獲得・維持である。
また、弾道ミサイル、巡航ミサイルなどによる攻撃に的確に対応する。
参照 資料11(自衛隊の主な行動)、 資料12(自衛官または自衛隊の部隊に認められた武力行使および武器使用に関する規定)
参照図表Ⅲ-1-1-8(島嶼防衛のイメージ図)8
南西地域には、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部が多く存在するため、陸自は与那国島に沿岸監視部隊を新編し、南西地域の島嶼部に初動を担任する警備部隊を配置するとともに、本格的な水陸両用作戦機能を備えた「水陸機動団(仮称)」を新編する。また、海自は、固定翼哨戒機(P-1)などを取得する。空自は、那覇基地に戦闘機2個飛行隊を配置するとともに、第9航空団を新編する。これらにより、常時継続的な情報収集・警戒監視態勢や事態発生時に迅速な対処が可能な体制を整備することとしている。
さらに、部隊の迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、おおすみ型輸送艦の改修、多機能艦艇の在り方を検討するための海外調査やオスプレイ(V-22)の導入により、機動展開能力の向上を図っていく。
特にオスプレイ(V-22)の運用に際しては、防衛省はその配備先として、統合運用における関連部隊の位置関係や滑走路長、地元への負担を軽減できる地理的環境などから、佐賀空港を最適の飛行場と判断したところであり、米海兵隊の訓練移転などとあわせて、丁寧な地元説明を行い、理解を得たいと考えている9。
オスプレイ
(写真は米海兵隊が使用しているMV-22)【米国政府】
アイアン・フィスト15において上陸を行う陸自隊員
「しもきた」に進入するLCAC
このほか、統合運用能力向上や米軍との相互連携要領の確立のための訓練などにも取り組んでいる。陸自は、06(平成18)年から実施している米国における海兵隊との実動訓練(アイアン・フィスト)を15(同27)年1月から3月にかけてカリフォルニアで行い、水陸両用作戦機能の強化に努めている。また、同年8月には、従来から米西海岸で実施されている米軍の統合訓練ドーン・ブリッツに陸・海・空自が参加し、海外における日米共同統合訓練(ドーン・ブリッツ15)として、米軍との連携および島嶼侵攻対処にかかる一連の作戦行動の演習を行う予定である。