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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

2 新ガイドラインの内容

日米間で精力的に見直し作業を行ってきた結果、15(平成27)年4月27日に行われた「2+2」会合において、日米安全保障協議委員会(SCC)は、防衛協力小委員会(SDC)が勧告した新ガイドラインを了承した。これにより、13(同25)年10月に閣僚から示されたガイドラインの見直しの目的が達成された。97ガイドラインに代わる新ガイドラインは、日米両国の役割および任務についての一般的な大枠および政策的な方向性を更新するとともに、同盟を現代に適合したものとし、また、平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力および対処力を強化することで、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想を明らかにするものである。

参照II部3章3節2項2(「2+2」会合(15(平成27)年4月27日))資料18(日米防衛協力のための指針(平成27年4月27日)

1 防衛協力とガイドラインの目的

新ガイドラインは、安全保障および防衛協力の強調事項を新たに明記した。また、ガイドラインの目的は、97ガイドラインの考え方を維持している。

○ 平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和および安全を確保するとともに、アジア太平洋およびこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、日米両国間の安全保障および防衛協力は、次の事項を強調する。

-切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応

-日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果

-政府一体となっての同盟としての取組

-地域のおよび他のパートナーならびに国際機関との協力

-日米同盟のグローバルな性質

○ 日米両政府(両政府)は、その国家安全保障政策に基づき、各自の防衛態勢を維持する。米国は、引き続き、核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供し、また、アジア太平洋地域に即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、戦力を迅速に増強する能力を維持する。

○ ガイドラインは、日米両国の役割および任務ならびに協力および調整のあり方についての一般的な大枠および政策的な方向性を示す。

○ ガイドラインは、日米同盟の重要性についての国内外の理解を促進する。

2 基本的な前提および考え方

基本的な前提および考え方については、次のとおり、97ガイドラインの考えを維持している。

○ 日米安保条約およびその関連取極に基づく権利および義務は変更されない。

○ ガイドラインのもとでの行動および活動は国際法に合致するものである。

○ 日本および米国により行われる全ての行動および活動は、各々の憲法およびその時々において適用のある国内法令ならびに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる。日本の行動および活動は、専守防衛、非核三原則などの日本の基本的な方針に従って行われる。

○ ガイドラインは、いずれの政府にも立法上、予算上、行政上またはその他の措置をとることを義務付けるものではなく、また、ガイドラインは、いずれの政府にも法的権利または義務を生じさせるものではない。しかしながら、二国間協力のための実効的な態勢の構築がガイドラインの目標であることから、両政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策および措置に適切な形で反映することが期待される。

3 強化された同盟内の調整

ガイドラインのもとでの実効的な二国間協力のため、平時から緊急事態まで、両政府が緊密な協議ならびに政策面および運用面の的確な調整を行うことが必要となる。このため、両政府は、新たな、平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置し、運用面の調整を強化し、共同計画の策定を強化する。

(1)同盟調整メカニズム

両政府は、日本の平和および安全に影響を与える状況その他の同盟としての対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に切れ目のない形で実効的に対処するため、同盟調整メカニズムを活用し、平時から緊急事態までのあらゆる段階において自衛隊および米軍により実施される活動に関連した政策面および運用面の調整を強化する。両政府は、必要な手順および基盤(施設および情報通信システムを含む。)を確立するとともに、定期的な訓練・演習を実施する。

(2)強化された運用面の調整

両政府は、運用面の調整機能の併置の重要性を認識する。自衛隊および米軍は、緊密な情報共有、円滑な調整および国際的な活動を支援するための要員の交換を実施する。

(3)共同計画の策定

両政府は、平時において、共同計画策定メカニズムを通じ、共同計画の策定・更新を実施する。共同計画は、両政府双方の計画に適切に反映する。

4 日本の平和および安全の切れ目のない確保

ここでは、ガイドラインの中核である日本の平和と安全を確保するため、平時から緊急事態まで、切れ目のない(シームレスな)協力を実現するための方向性を提示している。

○ 両政府は、日本に対する武力攻撃を伴わない時の状況を含め、平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の平和および安全を確保するための措置をとる。この文脈において、パートナーとのさらなる協力を推進する。

○ 両政府は、状況の評価、情報の共有、柔軟に選択される抑止措置および事態の緩和を目的とした行動などのため、適切な場合に、同盟調整メカニズムを活用する。また、適切な経路を通じた戦略的な情報発信を調整する。

(1)平時からの協力措置

次のとおり、同盟の抑止力・対処力を強化するため、平時からの協力の具体的なあり方を明記している。

○ 両政府は、日米同盟の抑止力および能力を強化するための広範な分野にわたる協力を推進する。

○ 自衛隊および米軍は、相互運用性、即応性および警戒態勢を強化する。このため、両政府は、次のものを含むが、これに限られない措置をとる。

ア 情報収集、警戒監視および偵察

自衛隊および米軍は、各々のアセットの能力および利用可能性に応じ、情報収集、警戒監視および偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)活動を行う。これには、日本の平和および安全に影響を与え得る状況の推移を常続的に監視することを確保するため、相互に支援する形で共同のISR活動を行うことを含む。

イ 防空およびミサイル防衛

自衛隊および米軍は、弾道ミサイル発射および経空の侵入に対する抑止および防衛態勢を維持しおよび強化する。両政府は早期警戒能力、相互運用性、ネットワーク化による監視範囲およびリアルタイムの情報交換拡大、弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のため協力するほか、挑発的なミサイル発射およびその他の航空活動への対処にあたり、緊密に調整する。

ウ 海洋安全保障

両政府は、航行の自由を含む国際法に基づく海洋秩序を維持するための措置に関し、相互に緊密に協力する。自衛隊および米軍は、海洋監視情報の共有をさらに構築しおよび強化しつつ、適切な場合に、ISRおよび訓練・演習を通じた海洋におけるプレゼンスの維持および強化などにおいて協力する。

エ アセット(装備品など)の防護

自衛隊および米軍は、訓練・演習中を含め、連携して日本の防衛に資する活動に現に従事している場合で、適切なときは、各々のアセットを相互に防護する。

オ 訓練・演習

自衛隊および米軍は、相互運用性、持続性および即応性を強化するため、日本国内外双方において、実効的な二国間および多国間の訓練・演習を実施する。適時かつ実践的な訓練・演習は、抑止を強化する。

カ 後方支援

自衛隊および米軍は、日米物品役務相互提供協定などに規定する活動について、適切な場合に、補給、整備、輸送、施設および衛生を含む後方支援を相互に行う。

キ 施設の使用

両政府は、自衛隊および米軍の相互運用性を拡大し、柔軟性および抗たん性を向上させるため施設・区域の共同使用を強化する。また、民間の空港および港湾を含む施設の実地調査の実施にあたって協力する。

(2)日本の平和および安全に対して発生する脅威への対処

次のとおり、日本の平和および安全に対して発生する脅威に対処するための措置を記述している。

○ 同盟は、日本の平和および安全に重要な影響を与える事態に対処する。当該事態は地理的に定めることはできない。この節に示す措置は、当該事態にいまだ至っていない状況において、各々の国内法令に従ってとり得るものを含む。

○ 両政府は、平時からの協力的措置を継続することに加え、あらゆる手段を追求する。同盟調整メカニズムを活用しつつ、各々の決定により、次に掲げるものを含むが、これらに限らない追加的措置をとる。

ア 非戦闘員を退避させるための活動

両政府は、適切な場合に、日本国民または米国国民である非戦闘員の退避の計画にあたり調整し、実施にあたって協力する。退避活動は、輸送手段、施設などの各国の能力を相互補完的に使用して実施される。また、訓練・演習の実施を含め、調整を平時から強化する。

イ 海洋安全保障

両政府の協力的措置には、情報共有および国際連合安全保障理事会決議その他の国際法上の根拠に基づく船舶の検査を含み得るが、これらに限らない。

ウ 避難民への対応のための措置

両政府は、日本への避難民の流入が発生するおそれがあるまたは実際に始まるような状況に至る場合には、日本の平和および安全を維持するために協力する。

エ 捜索・救難

両政府は、適切な場合に捜索・救難活動において協力し、相互に支援する。自衛隊は、日本の国内法令に従い、適切な場合に、米国による戦闘捜索・救難活動に対して支援を行う。

オ 施設・区域の警護

自衛隊および米軍は、各々の施設・区域を関係当局と協力して警護する責任を有する。日本は、米国からの要請に基づき、米軍と緊密に協力しおよび調整しつつ、日本国内の施設・区域の追加的な警護を実施する。

カ 後方支援

両政府は、実効的かつ効率的な活動を可能とするため、適切な場合に、相互の後方支援を強化する。

日本政府は、国内法令に従い、適切な場合に後方支援などを行う。

キ 施設の使用

日本政府は、日米安保条約などに従い、必要に応じて、民間の空港および港湾を含む施設を一時的な使用に供する。

(3)日本に対する武力攻撃への対処行動

新ガイドラインでは、日本に対する武力攻撃への共同対処行動は、引き続き、日米間の安全保障および防衛協力の中核的要素であるとし、97ガイドラインの武力攻撃対処における日米間の基本的な考えは維持しつつ、日米協力の拡大・多様化などを踏まえ、内容を充実させている。

ア 日本に対する武力攻撃が予測される場合

両政府は、必要な準備を行いつつ、武力攻撃を抑止し、事態を緩和するための措置をとる。

イ 日本に対する武力攻撃が発生した場合

(ア)整合のとれた対処行動のための基本的考え方

・両政府は、極力早期にこれを排除し、さらなる攻撃を抑止するため、適切な共同対処行動を実施する。

・自衛隊は防勢作戦を主体的に実施し、米軍は自衛隊を支援・補完する。

(イ)作戦構想

① 空域を防衛するための作戦

自衛隊は、航空優勢を確保しつつ、防空作戦を主体的に実施する。このため、自衛隊は、航空機および巡航ミサイルによる攻撃に対する防衛を含むが、これに限られない必要な行動をとる。

米軍は、自衛隊の作戦を支援・補完するための作戦を実施する。

② 弾道ミサイル攻撃に対処するための作戦

自衛隊および米軍は、弾道ミサイル発射を早期に探知するため、リアルタイムの情報交換を行う。弾道ミサイル攻撃の兆候がある場合、弾道ミサイル攻撃に対して防衛し、弾道ミサイル防衛作戦に従事する部隊を防護するための実効的な態勢を維持する。

自衛隊は、弾道ミサイル防衛作戦を主体的に実施する。

米軍は、自衛隊の作戦を支援しおよび補完するための作戦を実施する。

③ 海域を防衛するための作戦

自衛隊は、日本における主要な港湾および海峡の防備、日本周辺海域における艦船の防護ならびにその他の関連する作戦を主体的に実施する。

米軍は、自衛隊の作戦を支援しおよび補完するための作戦を実施する。

自衛隊および米軍は、当該武力攻撃に関与している敵に支援を行う船舶活動の阻止において協力する。

④ 陸上攻撃に対処するための作戦

自衛隊は、島嶼(とうしょ)に対するものを含む陸上攻撃の阻止・排除を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。

自衛隊はまた、関係機関と協力しつつ、特殊作戦部隊による攻撃などの不正規型の攻撃を主体的に撃破する。

米軍は自衛隊の作戦を支援・補完するための作戦を実施する。

⑤ 領域横断的な作戦

領域横断的な協力の例には、次に示す行動を含む。

自衛隊および米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、各々のISR態勢を強化し、情報共有を促進しおよび各々のISRアセットを防護する。

米軍は、自衛隊を支援し補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる。その場合、自衛隊は、必要に応じ、支援を行うことができる。これらの作戦は、適切な場合に、緊密な二国間調整に基づいて実施される。

(ウ)作戦支援活動

① 通信電子活動

自衛隊および米軍は、共通の状況認識のもとでの共同作戦のため、自衛隊と米軍との間の効果的な通信を確保し、共通作戦状況図を維持する。

② 捜索・救難

自衛隊および米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、戦闘捜索・救難活動を含む捜索・救難活動において、協力しおよび相互に支援する。

③ 後方支援

作戦上各々の後方支援能力の補完が必要となる場合、自衛隊および米軍は、各々の能力および利用可能性に基づき、柔軟かつ適時の後方支援を相互に行う。

④ 施設の使用

日本政府は、必要に応じ、日米安保条約およびその関連取極に従い、施設の追加提供を行う。両政府は、施設・区域の共同使用における協力を強化する。

⑤ CBRN(化学・生物・放射線・核)防護

日本からの要請に基づき、米国は、日本の防護を確実にするため、CBRN事案および攻撃の予防ならびに対処関連活動において、適切に日本を支援する。

(4)日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動

日米両国が、各々、米国または第三国に対する武力攻撃に対処するため、主権の十分な尊重を含む国際法ならびに各々の憲法および国内法に従い、武力の行使を伴う行動をとることを決定する場合であって、日本が武力攻撃を受けるに至っていないとき、日米両国は、当該武力攻撃への対処およびさらなる攻撃の抑止において緊密に協力する。共同対処は、政府全体にわたる同盟調整メカニズムを通じて調整される。

日米両国は、当該武力攻撃への対処行動をとっている他国と適切に協力する。

自衛隊は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に対処し、日本の存立を全うし、日本国民を守るため、武力の行使を伴う適切な作戦を実施する。

協力して行う作戦の例は、次に概要を示すとおりである。

ア アセットの防護

自衛隊および米軍は、適切な場合に、アセットの防護において協力する。当該協力には、非戦闘員の退避のための活動または弾道ミサイル防衛などの作戦に従事しているアセットの防護を含むが、これに限らない。

イ 捜索・救難

自衛隊および米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、戦闘捜索・救難活動を含む捜索・救難活動において、協力しおよび支援を行う。

ウ 海上作戦

自衛隊および米軍は、適切な場合に、海上交通の安全を確保することを目的とするものを含む機雷掃海において協力する。

自衛隊および米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、艦船を防護するための護衛作戦において協力する。

自衛隊および米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、当該武力攻撃に関与している敵に支援を行う船舶活動の阻止において協力する。

エ 弾道ミサイル攻撃に対処するための作戦

自衛隊および米軍は、各々の能力に基づき、適切な場合に、弾道ミサイルの迎撃において協力する。両政府は、弾道ミサイル発射の早期探知を確実に行うため、情報交換を行う。

オ 後方支援

作戦上各々の後方支援能力の補完が必要となる場合、自衛隊および米軍は、各々の能力および利用可能性に基づき、柔軟かつ適時に後方支援を相互に行う。

両政府は、支援を行うため、中央政府および地方公共団体の機関が有する権限および能力ならびに民間が有する能力を適切に活用する。

(5)日本における大規模災害への対処における協力

新ガイドラインでは、東日本大震災の経験も踏まえ、以下が新たに盛り込まれることとなった。

○ 日本において大規模災害が発生した場合、日本は主体的に災害に対処する。自衛隊は、関係機関、地方公共団体および民間主体と協力しつつ、災害救援活動を実施する。米国は、自国の基準に従い、日本の活動に対し適切な支援を行う。両政府は、適切な場合に、同盟調整メカニズムを通じて活動を調整する。

○ 両政府は、情報共有を含め緊密に協力する。米軍が災害関連訓練に参加することにより相互理解が深まる。

5 地域のおよびグローバルな平和と安全のための協力

新ガイドラインでは、これまでの活動の経験も踏まえつつ、地域のおよびグローバルな平和と安全のための日米間の具体的な協力のあり方について明記している。

○ 相互の関係を深める世界において、日米両国は、アジア太平洋地域およびこれを越えた地域の平和、安全、安定および経済的な繁栄の基盤を提供するため、パートナーと協力しつつ、主導的役割を果たす。

○ 両政府の各々が国際的な活動に参加することを決定する場合であって、適切なときは、次に示す活動などにおいて、相互におよびパートナーと緊密に協力する。

(1)国際的な活動における協力

両政府は、各々の判断に基づき、国際的な活動に参加する。共に活動を行う場合、自衛隊および米軍は、実行可能な限り最大限協力する。

一般的な協力分野は以下のものを含む。

ア 平和維持活動

両政府は、適切なときは、自衛隊と米軍との間の相互運用性を最大限に活用するため、協力する。また、適切な場合に、同じ任務に従事する国際連合その他の要員に対する後方支援の提供および保護において協力することができる。

イ 国際的な人道支援・災害救援

両政府は、適切なときは、参加する自衛隊と米軍との間の相互運用性を最大限に活用しつつ、相互に支援を行うため緊密に協力する。協力して行う活動の例には、相互の後方支援、運用面の調整、計画策定および実施を含み得る。

ウ 海洋安全保障

両政府は、適切なときは、緊密に協力する。協力して行う活動の例には、海賊対処、機雷掃海などの安全な海上交通のための取組、大量破壊兵器の不拡散のための取組およびテロ対策活動のための取組を含み得る。

エ パートナーの能力構築支援

パートナーの能力を強化することを目的として、両政府は、適切な場合に、各々の能力および経験を最大限に活用することにより、能力構築支援活動において協力する。協力して行う活動の例には、海洋安全保障、防衛医学、防衛組織の構築、人道支援・災害救援または平和維持活動のための部隊の即応性の向上を含み得る。

オ 非戦闘員を退避させるための活動

非戦闘員の退避のために国際的な行動が必要となる状況において、両政府は、適切な場合に、日本国民および米国国民を含む非戦闘員の安全を確保するため、外交努力を含むあらゆる手段を活用する。

カ 情報収集、警戒監視および偵察

両政府が国際的な活動に参加する場合、自衛隊および米軍は、各々のアセットの能力および利用可能性に基づき、適切なときは、ISR活動において協力する。

キ 訓練・演習

自衛隊および米軍は、国際的な活動の実効性を強化するため、適切な場合に、共同訓練・演習を実施しおよびこれに参加する。また、両政府は、引き続き、訓練・演習においてパートナーと協力する機会を追求する。

ク 後方支援

両政府は、国際的な活動に参加する場合、相互に後方支援を行うために協力する。

日本政府は、自国の国内法令に従い、適切な場合に、後方支援を行う。

(2)三か国および多国間協力

両政府は、三か国および多国間の安全保障および防衛協力を推進および強化する。

また、国際法および国際的基準に基づく協力を推進すべく、地域機関および国際機関を強化するために協力する。

6 宇宙およびサイバー空間に関する協力

新ガイドラインでは、宇宙やサイバーといった新たな戦略的領域における協力を新たに盛り込んでいる。

(1)宇宙に関する協力

○ 両政府は、宇宙空間の責任ある、平和的かつ安全な利用のため、両政府の連携を維持・強化する。

○ 両政府は、各々の宇宙システムの抗たん性の確保、宇宙状況監視にかかる協力を強化する。

○ 自衛隊および米軍は、早期警戒、ISR、測位、航法およびタイミング、宇宙状況監視、気象観測、指揮、統制および通信などにおいて引き続き協力する。

(2)サイバー空間に関する協力

○ 両政府は、サイバー空間における脅威および脆弱性に関する情報を適時かつ適切に共有する。自衛隊および米軍が任務を達成する上で依拠する重要インフラおよびサービスを防護するために協力する。

○ 自衛隊および米軍は、ネットワークおよびシステムの監視態勢を維持し、教育交流を行い、ネットワークおよびシステムの抗たん性を確保し、両政府一体となった取組に寄与し、共同演習を実施する。

○ 日本に対するサイバー事案が発生した場合、日本は主体的に対処し、米国は適切な支援を行う。日本の安全に影響を与える深刻なサイバー事案が発生した場合、両政府は、緊密に協議し、適切な協力行動をとり対処する。

7 日米共同の取組

新ガイドラインでは、二国間協力の実効性をさらに向上させるため、安全保障および防衛協力の基盤として、次の分野を発展させおよび強化することとしている。

(1)防衛装備・技術協力

(2)情報協力・情報保全

(3)教育・研究交流

8 見直しのための手順

ガイドラインが変化する情況に照らして適切なものであるか否かを定期的に評価し、必要と認める場合には、両政府は、適時かつ適切な形でこのガイドラインを更新する。これは、97ガイドラインの考えを維持しつつ、定期的な評価の実施を新たに盛り込んだものである。