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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

防衛白書トップ > 第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟 > 第3章 日米同盟の強化 > 第2節 ガイドライン見直しの概要 > 1 ガイドライン見直しの経緯

第2節 ガイドライン見直しの概要

日米両国がわが国に対する武力攻撃などに迅速に対処するためには、あらかじめ両者の役割について協議し、決定しておくことが必要である。日米両国間でのこのような役割に関する枠組みが、「日米防衛協力のための指針」(「ガイドライン」)とその実効性を確保するための諸施策である。日米両国はこの枠組みに基づき、わが国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえつつ、両国間の協力計画などについて継続的に検討作業を実施し、協議を行うとともに、現状に即したガイドライン見直しのための作業を行った。

1 ガイドライン見直しの経緯

1 97ガイドライン策定に至る経緯

78ガイドラインは、78(昭和53)年、冷戦という当時の情勢を背景に、日本に対する武力攻撃への対応を中心として策定された。その後、97(平成9)年に冷戦終結などの安全保障環境の変化を踏まえ、周辺事態への対応と協力を拡大させるなどした97ガイドラインが策定された。97ガイドラインでは、日米間の役割や協力のあり方を、①平素、②日本に対する武力攻撃、③周辺事態に区別して規定するとともに、適時かつ適切に見直しを行うこととされていた。

2 見直しの背景

97ガイドラインが策定されて以降、すでに17年以上が経過しており、わが国を取り巻く安全保障環境は、周辺国の軍事活動などの活発化、国際テロ組織などの新たな脅威の発生、海洋・宇宙・サイバー空間といった国際公共財の安定的利用に対するリスクの顕在化など、様々な課題や不安定要因が顕在化・先鋭化・深刻化している。さらには、海賊対処活動、PKO、国際緊急援助活動のように自衛隊の活動もグローバルな規模に拡大してきている。そのため、日米防衛協力のあり方を、これらの安全保障環境の変化や、自衛隊の活動・任務の拡大に対応させる必要が生じてきている。

このような安全保障環境の変化を背景として、12(同24)年末に、安倍内閣総理大臣より小野寺防衛大臣(当時)にガイドラインなどの見直しの検討が指示された。また、13(同25)年2月の日米首脳会談においても、安倍内閣総理大臣からオバマ米大統領に対し、「安全保障環境の変化を踏まえ、日米の役割・任務・能力(RMC:Role Mission Capability)の考え方についての議論を通じ、ガイドラインの見直しの検討を進めたい」旨述べた。

3 見直しの方向性

以上のような経緯を経て、13(同25)年10月の「2+2」会合において、防衛協力小委員会(SDC:Subcommittee for Defense Cooperation)に対して、97ガイドラインの変更に関する勧告を作成するよう指示され、14(同26)年末までに97ガイドラインを見直すこととなった。

「2+2」共同発表は、97ガイドライン見直しの目的として次の七つをあげた。

① 日米防衛協力の中核的要素として、日本に対する武力攻撃に対処するための同盟の能力を確保すること

② 日米同盟のグローバルな性質を反映させるため、テロ対策、海賊対策、平和維持、能力構築、人道支援・災害救援、装備・技術の強化といった分野を包含するよう協力の範囲を拡大すること

③ 共有された目標および価値を推進するため、地域の他のパートナーとのより緊密な安全保障協力を促進すること

④ 協議および調整のための同盟のメカニズムを、より柔軟で、機動的で、対応能力を備えたものとし、あらゆる状況においてシームレスな二国間の協力を可能とするよう強化すること

⑤ 相互の能力の強化に基づく、二国間の防衛協力における適切な役割分担を示すこと

⑥ 宇宙およびサイバー空間といった新たな戦略的領域における課題を含む変化する安全保障環境において効果的、効率的かつシームレスな同盟の対応を確保するため、緊急事態における二国間の防衛協力の指針となる概念を評価すること

⑦ 共有された目標を達成するため、将来において同盟の強化を可能とする追加的な方策を探求すること

13(同25)年10月の「2+2」共同発表に基づき、防衛大綱および米国の「4年毎の国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)で示された考え方も踏まえつつ、日米間で精力的に見直し作業が行われた。14(同26)年10月8日には、同年7月11日の日米防衛相会談での合意に基づき、それまでの作業を要約するものとして、「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告」が公表された。さらに、同年12月19日、日米安全保障協議委員会(SCC:Security Consultative Committee)は、ガイドラインの見直しと日本における安全保障法制の整備との整合性を確保することなどの重要性を再確認したうえで、日本における法制の整備の進展を踏まえながら、15(同27)年前半のガイドライン見直し完了に向けて、議論をさらに深めることを決定した。