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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

2 日米間の政策協議

1 「2+2」会合をはじめとする取組

日米両国は、首脳・閣僚レベルをはじめ様々なレベルで緊密に連携し、二国間のみならず、アジア太平洋地域をはじめとする国際社会全体の平和と安定および繁栄のために、多岐にわたる分野で協力関係を不断に強化・拡大させてきた。

日米間の安全保障に関する政策協議は、通常の外交ルートによるもののほか、日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)、日米安全保障高級事務レベル協議、防衛協力小委員会など、防衛・外務の関係者などにより、各種のレベルで緊密に行われている。中でも、防衛・外務の閣僚級協議の枠組みである日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)は、政策協議の代表的なものであり、安全保障分野における日米協力にかかわる問題を検討するための重要な協議機関として機能している。

参照図表II-3-3-3(日米安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な政策協議の場)

図表II-3-3-3 日米安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な政策協議の場

また、防衛省としては、防衛大臣と米国防長官との間で日米防衛相会談を適宜行い、両国の防衛政策や防衛協力について協議している。また、防衛副大臣と米国防副長官との間や、防衛事務次官、統幕長、防衛審議官、陸・海・空幕僚長をはじめとする実務レベルにおいても、米国防省などとの間で随時協議や必要な情報の交換などを行っている。近年では、14(平成26)年4月に統幕長と米統合参謀本部議長との間で戦略対話を初めて行うなど、日米防衛協力の進展にともない、こうした機会はより重要になっている。

このように、あらゆる機会とレベルを通じ情報や認識を日米間で共有することは、日米間の連携をより強化・緊密化するものであり、日米安保体制の信頼性の向上に資するものである。このため、防衛省としても主体的・積極的に取り組んでいる。

参照資料21(日米協議(閣僚級)の実績(12(平成24)年以降))

河野統合幕僚長の画像

デンプシー米統合参謀本部議長と会談する河野統合幕僚長

2 「2+2」会合(15(平成27)年4月27日)

15(平成27)年4月27日、ニューヨークにおいて「2+2」会合を開催した。戦後70年という節目に行われた今回の会合は、安倍内閣総理大臣の米国への公式訪問、特に翌日(同年4月28日)の日米首脳会談につながるものであり、日米安全保障、そして防衛協力の長い歴史の中にあっても、新たな一章を刻むものであった。

今般の「2+2」共同発表における主な成果は、

①「新ガイドライン」を了承したことであり、これにより、日米両国の役割および任務についての一般的な大枠および政策的な方向性を更新するとともに、同盟を現代に適合したものとし、また、平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力および対処力を強化することで、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想が明らかにされたこと

②様々な分野における同盟の抑止力および対処力を強化するための現在も見られる進捗について、満足の意をもって留意したこと

③日米同盟が地域の平和および安全の礎であり、また、より平和で安定した国際安全保障環境を推進するための基盤であることを認識し、人道支援・災害救援活動における協力など、地域的および国際的な協力について最近の進展を強調したこと

④在日米軍再編について、再編の過程を通じて訓練能力を含む運用能力を確保しつつ、在日米軍の再編にかかる既存の取決めを可能な限り速やかに実施することに対する日米両政府の継続的なコミットメントを再確認し、地元への米軍の影響を軽減しつつ、将来の課題および脅威に効果的に対処するための能力を強化することで、抑止力が強化される強固かつ柔軟な兵力態勢を維持することに対するコミットメントを強調したこと

である。「2+2」共同発表の概要については、次のとおりである。

ア 概観

(ア)日米同盟・新ガイドライン

○ 見直し後の新たな「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の了承および発出を公表。

○ 新ガイドラインは、日米両国の役割および任務を更新し、21世紀において新たに発生している安全保障上の課題に対処するための、よりバランスのとれた、より実効的な同盟を促進。

○ 新ガイドラインならびに日米各国の安全保障および防衛政策によって強化された日米同盟が、アジア太平洋地域の平和および安全の礎として、また、より平和で安定した国際安全保障環境を推進するための基盤として役割を果たし続けることを確認。

(イ)米国のアジア太平洋地域重視の取組の継続

○ 15(同27)年の米国国家安全保障戦略において明記されているとおり、米国はアジア太平洋地域へのリバランスを積極的に実施。

○ 核および通常戦力を含むあらゆる種類の米国の軍事力による、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントがこの取組の中心。

○ この文脈において、地域の平和、安全および繁栄の推進における日米同盟の不可欠な役割を再確認。

(ウ)日本の安全保障政策

○ わが国が国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の政策を継続する中、米国は、日本の最近の重要な成果を歓迎し、支持。

○ これらの成果には、切れ目のない安全保障法制の整備のための14(同26)年7月1日の日本政府の閣議決定、国家安全保障会議の設置、防衛装備移転三原則、特定秘密保護法、サイバーセキュリティ基本法、新「宇宙基本計画」などが含まれる。

(エ)地域情勢認識

尖閣諸島が日本の施政の下にある領域であり、したがって日米安全保障条約第5条のもとでのコミットメントの範囲に含まれること、および同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対することを再確認。

イ 新ガイドライン

○ 防衛協力小委員会(SDC)が勧告した新ガイドラインを了承。これにより、13(同25)年10月に閣僚から示されたガイドラインの見直しの目的を達成。

○ 新ガイドラインと切れ目のない安全保障法制を整備するための日本の取組との整合性を確保することの重要性を認識し、当該法制が、新ガイドラインのもとでの二国間の取組をより実効的なものとすることを認識。米国は、日本の「積極的平和主義」の政策および14(同26)年7月の閣議決定を反映する当該法制を整備するために現在行われている取組を歓迎し、支持。

○ 新ガイドラインのもとでの共同の取組に着手するとの意図を確認。この文脈において、SCCは、SDCに対し、平時から利用可能な同盟調整メカニズムの設置および共同計画策定メカニズムの改良ならびにこれによる共同計画の策定の強化を含め、新ガイドラインを実施するよう指示。

○ 新ガイドラインが展望する後方支援にかかる相互協力を実施するための物品役務相互提供協定を迅速に交渉するとの意図を表明。

ウ 二国間の安全保障および防衛協力

○ 様々な分野における同盟の抑止力および対処力を強化するための現在も見られる進捗について、満足の意をもって留意。

・高度な米国の能力を日本に配備することの戦略的重要性を確認(米海軍P-8哨戒機、米空軍グローバル・ホーク無人機、改良された輸送揚陸艦グリーン・ベイおよび米海兵隊F-35Bなどの米国の計画を歓迎。)。

・核および通常戦力についての議論を通じたものを含め、日本に対する米国の防衛上のコミットメントの信頼性を強化する日米拡大抑止協議1を通じた取組を継続。

・弾道ミサイル防衛(BMD)協力の維持(14(同26)年12月のTPY-2レーダーの経ヶ岬への配備、17(同29)年までに予定されている2隻のBMD駆逐艦の日本への追加配備)。

・宇宙安全保障(包括的日米対話などを通じた協力や、防衛当局間で宇宙関連事項を議論するための新たな枠組みの設置など)。

・サイバー空間にかかる諸課題に関する協力(日米サイバー対話および日米サイバー防衛政策ワーキンググループを通じた協力)。

・情報収集、警戒監視および偵察(ISR)協力の強化(米空軍グローバル・ホーク無人機のローテーション展開など)。

・防衛装備協力の強化(防衛装備移転三原則、F-35の整備拠点(リージョナル・デポ)、日米装備・技術定期協議(S&TF)など)。

・情報保全に関する日米協議を通じた継続的な進展(特定秘密保護法の施行、情報保全協力の強化)。

○ 在日米軍駐留経費負担(将来の取決めに関する協議を開始する意図を表明)。

○ 同盟管理プロセスの効率性・実効性を強化する適切な二国間協議の枠組みを可及的速やかに検討する意図を確認。

エ 地域的および国際的な協力

○ 日米同盟が地域の平和および安全の礎であり、また、より平和で安定した国際安全保障環境を推進するための基盤であることを認識し、次の分野における最近の進展を強調。

・13(同25)年11月のフィリピンにおける台風への対処に示された、人道支援・災害救援活動における協力の強化。

・海洋安全保障能力の構築のための取組によるものを含め、特に東南アジアでのパートナーに対する能力構築における継続的かつ緊密な連携。

・特に韓国および豪州ならびに東南アジア諸国連合などの主要なパートナーとの三か国および多国間協力の拡大。北朝鮮による核およびミサイルの脅威に関する韓国との三者間情報共有取決めの枠組みを将来に向けた三か国協力の拡大のための基盤として活用。日米豪安全保障・防衛協力会合を通じ、東南アジアにおける能力構築のための活動ならびに安全保障および防衛にかかる事項について、豪州とのより緊密な協力を追求するとの意図を確認。

オ 在日米軍再編

○ 在日米軍再編にかかる日米の継続的なコミットメントを再確認。

・沖縄県外の場所への移転を含む、航空機の訓練移転を継続。

・普天間飛行場のキャンプ・シュワブ(辺野古)への移設。

・嘉手納以南の土地の返還(統合計画の16(同28)年春までの更新を確認。西普天間住宅地区の計画どおりの返還を強調。)。

・在沖米海兵隊のグアム移転(沖縄から日本国外の場所への米海兵隊員の要員の移転を着実に実施していることを確認。)。

・日米地位協定の環境補足協定について、可能な限り迅速に付属文書の交渉を継続。

参照II部3章4節2項3(「2+2」共同発表(15(平成27)年4月27日における成果))資料22(日米安全保障協議委員会「2+2」共同発表(仮訳)(平成27年4月27日))

「2+2」会合の画像

日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)

3 最近行われた日米会談
(1)日米防衛相会談(15(平成27)年5月30日)

中谷防衛大臣(大臣)とカーター米国防長官(長官)は、第14回IISSシャングリラ会合の機会にシンガポールにおいて日米防衛相会談を実施した。

ア 総論、地域情勢

両閣僚は、アジア太平洋地域における安全保障環境について意見交換し、東シナ海、南シナ海などにおける力を背景とした現状変更の試みに反対することで一致した。また、アジア太平洋地域における安全保障環境が厳しさを増していることを踏まえ、日米韓、日米豪といった3か国間の防衛協力をさらに進展させていくことで一致した。さらに、アジア太平洋地域の平和と安定に寄与するとの観点から、能力構築支援などの東南アジア諸国との協力を引き続き強化させていくことで一致した。

イ 新ガイドラインの実効性確保と平和安全法制

中谷大臣から、平和安全法制が先般閣議決定され、国会での審議が始まった旨説明した。両閣僚は、今般の法制が新ガイドラインの実効性の確保につながることを確認した。また、新しい同盟調整メカニズムの設置、共同計画の策定、物品役務相互提供協定の迅速な交渉といった、新ガイドラインの実効性確保のための取組を引き続きしっかりと進めていくことを確認した。

さらに、「サイバー防衛政策ワーキンググループ」におけるこれまでの検討の成果がとりまとめられたことを歓迎し、サイバー空間に関する日米協力を一層強化していくことで一致した。

ウ 米軍再編

中谷大臣から、一日も早い普天間飛行場の返還とキャンプ・シュワブへの移設に向けて引き続き全力で取り組んでいる旨説明するとともに、キャンプ・シュワブへの移設が普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である旨発言した。また、中谷大臣から、沖縄の負担軽減の重要性について説明したうえで協力を要請し、カーター長官から、沖縄の負担軽減について引き続き協力していく旨の発言があった。

エ オスプレイ

中谷大臣から、17(平成29)年からのCV-22オスプレイの日本への配備について、日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、アジア太平洋地域の安定に資するものであるとして国民に説明をしているところであるが、ハワイで事故が発生2したこともあり、今回の事故にかかるものを含め、安全性の確保の観点から必要な情報提供を要請した。カーター長官からは、必要な情報提供を行っていく、既に配備されているMV-22を含め、オスプレイの安全な運用を改めて徹底する、との発言があった。

(2)日米首脳会談(15(平成27)年4月28日)

安倍内閣総理大臣(総理)は、15(同27)年4月26日から5月2日まで日本の総理大臣として9年ぶりに米国を公式訪問した。今回の訪米においては、戦後70年の節目の年にあたって、戦後いかに日米同盟がアジア太平洋地域そして世界の平和と安定に貢献してきたかについて確認し、また、今後も、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値観の上に立って、両国が手を携えて地域そして世界への貢献を続けていくとの強い意思を発信することができた。特に、日本の総理大臣として史上初となった上下両院合同会議での安倍総理による演説は、こうした点を強調するものとなった。また、訪問を通じてオバマ米大統領(大統領)との首脳間の個人的関係が一層強化された。

安倍内閣総理大臣の画像

連邦議会上下両院合同会議で演説する安倍内閣総理大臣【内閣広報室】

歓迎式典の画像

ホワイトハウスでの歓迎式典【内閣広報室】

訪問中に行われた日米首脳会談について、安全保障に関する概要は次のとおり。

ア 冒頭発言

オバマ大統領より、日米間では安全保障関係をさらに活性化するための試みが行われており、日米両国がこの地域において様々な課題に取り組むうえで同盟の強化が重要である、様々な国際場裡やグローバルな課題への取組において、日本ほど心強いパートナーは存在しない、安倍総理の勇気と強さは、米国にとっても世界にとっても重要である旨述べた。

これに対し安倍総理より、今回の訪米は戦後70年の節目の年の訪米であり、歴史的意義を有する公式訪問の招請に感謝するとともに、日米同盟は格段に強化されてきており、本日の会談を通じて、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値の上に立つ日米同盟が、アジア太平洋や世界の平和と繁栄に主導的な役割を果たしていくとの力強いメッセージを内外に向けて発信したいと述べた。

イ 日米関係

(ア)安保・防衛協力

両首脳は、4月27日に行われた日米「2+2」の成功を評価し、そこで発表された新ガイドラインのもと、同盟の抑止力・対処力が一層強化されることを確認した。また、安倍総理より、安保法制整備につき、精力的に作業中であることを説明し、オバマ大統領は、わが国の取組を支持した。

(イ)米軍再編

安倍総理より、普天間飛行場の移設に関し、先般翁長沖縄県知事と初めて会談し、知事は辺野古移設に反対していた、しかし辺野古移設が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎない、沖縄の理解を得るべく対話を継続する旨述べた。また、安倍総理より、そのためにも、県外のオスプレイ訓練増加、嘉手納以南の土地返還など、沖縄の負担軽減は政府の優先課題である、普天間飛行場の5年以内の運用停止については、日米「2+2」の場で岸田外務大臣からケリー国務長官に対して伝えた、環境補足協定も早期に署名したい、日米同盟への国民の支持を得るため協力頂きたい旨述べた。これに対しオバマ大統領より、沖縄の負担軽減に引き続き協力していく旨述べた。

さらに、安倍総理より、在沖縄海兵隊のグアム移転は、グアムの戦略的拠点としての発展を促し、米国のリバランス政策にも資する、連携して着実に進めたい旨述べた。

ウ 地域情勢

(ア)アジア情勢

安倍総理より、先に行われた日中首脳会談を紹介した。両首脳は、日米が中核となり、法の支配に基づく自由で開かれたアジア太平洋地域を維持・発展させ、そこに中国を取り込むよう連携していくことで一致した。また、中国のいかなる一方的な現状変更の試みにも反対することを確認した。オバマ大統領からは、日米安保条約第5条が尖閣諸島を含む日本の施政下にある全ての領域に適用される旨改めて発言があった。

両首脳は、南シナ海の問題に関し、ASEANの一体的対応の支持など、日米で様々な取組を推進していくことを確認した。

安倍総理より、日韓関係改善に向けた日本の努力につき説明し、オバマ大統領は、そうした日本の努力を支持した。北朝鮮に関し、安倍総理より、日本は、核、ミサイル、拉致といった諸懸案の包括的解決を目指すとの方針で一貫していることを説明した。両首脳は、北朝鮮の核・ミサイル問題への対応で日米韓の連携を改めて確認した。また、安倍総理から、拉致問題の早期解決に向けた決意を述べ、オバマ大統領からは、改めて理解と支持の表明があった。

(イ)ウクライナ情勢

安倍総理より、ウクライナ現地情勢を注視し、G7の連帯を重視しつつ、問題の平和的・外交的解決に向け、ロシアへの働きかけを含め適切に対応する旨述べた。両首脳は、引き続きウクライナの改革努力を支援していくことで一致した。

(ウ)イラン

安倍総理より、イランの核問題交渉における先般の合意を歓迎する、オバマ大統領の政策を完全に支持する旨述べた。また、安倍総理より、先に行われた日イラン首脳会談につき紹介し、引き続きイランに働きかけ、独自の役割を果たしていく旨説明した。

エ グローバルな課題

両首脳は、同盟でのグローバルな協力の重要性が向上しているとの認識で一致するとともに、気候変動、感染症対策につき議論した。

1 拡大抑止協議は、日米安保・防衛協力の一環として、いかに日米同盟の抑止力を確保していくかについて率直な意見交換を行うものであり、米国から抑止力の提供を受けているわが国が米国の抑止政策について理解を深め、わが国の安全を確保するうえで必要な政策調整を行う場として機能している。

2 15(平成27)年5月17日(現地時間)に米国ハワイ州で発生したMV-22オスプレイの着陸失敗に関し、同月末現在、米国政府からは、当該着陸失敗の調査を行っているところであるが、MV-22の設計に根本的欠陥があると疑う理由はなく、また、これまでMV-22の運用を、一般に停止させるべき理由は発見されていないと説明を受けている。