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<解説>わが国周辺におけるミサイル脅威の高まり

わが国周辺には核兵器を含む大規模な軍事力を有する国や地域が複数存在し、核兵器の運搬手段ともなりうるミサイル戦力が質、量ともに著しく増強されており、わが国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっています。

ミサイル戦力の増強は、極超音速兵器の開発、精密打撃能力の向上、発射プラットフォームの増加・多様化などの形でみられます。特に極超音速兵器は、通常の弾道ミサイルよりも低い高度で飛翔することから探知が遅くなるほか、大きく機動することから軌道予測や着弾位置の予想が難しく、迎撃がより困難になるとされています。このため極超音速兵器は、相手のミサイル防衛網の突破を企図して開発・配備が進められているものと考えられます。

例えば、中国は、極超音速滑空兵器(HGV)を搭載可能な弾道ミサイルとして、準中距離弾道ミサイルとされるDF-17の運用を2020年に開始したと指摘されているほか、長射程の弾道ミサイルとされるDF-27も配備している可能性があると指摘されています。北朝鮮は、「極超音速ミサイル」と称するミサイルの発射を繰り返しています。ロシアもまた、HGV「アヴァンガルド」や極超音速巡航ミサイル(HCM)「ツィルコン」の配備を進めており、「ツィルコン」についてはウクライナに対して使用されています。

防衛省はミサイル防衛能力を質・量ともに不断に強化していくこととしていますが、ミサイル防衛という手段だけに依拠し続けた場合、今後、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなるものと考えられます。このため、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつも、他に手段がないと認められる場合におけるやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、反撃能力により相手からのさらなる武力攻撃を防ぐこととしています。こうした取組により、わが国の抑止力・対処力を向上させることで、武力攻撃の発生そのものを抑止していく考えです。