これまでも、わが国は、既存の法制の中で経済安全保障の推進に資する取組を推進してきた。
2022年5月には、サプライチェーンの強靱化、基幹インフラの安全性・信頼性の確保、先端的な重要技術についての官民協力、特許出願の非公開に関する制度整備を行うことにより、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するための経済安全保障推進法1が成立した。
2024年5月には、特許出願の非公開および基幹インフラの両制度が運用開始となり、同法が定める全ての制度が運用されることとなった。経済安全保障に関する各種措置については、その実効性を確保するために、不断に検討・見直しが行われている。例えばサプライチェーンの強靱化については、2022年12月に半導体や蓄電池など11物資を特定重要物資に指定し、その安定供給確保を図っているところであるが、これに加え2024年2月には、先端電子部品(コンデンサ、高周波フィルタ)の新規指定(合計12物資)および指定済物資である重要鉱物の対象鉱種としてウランを追加するなどの取組も実施されている。
経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)は、AI(Artificial Intelligence)、量子技術などの先端技術を含む研究開発を対象に、関係府省庁が一体となって、国のニーズを実現する研究開発事業を実施するもので、その研究成果は、民生利用のみならず安全保障を含む公的利用につなげていこうとするものである。K Programの支援対象とする重要技術は研究開発ビジョンに定められたうえで、その研究開発が進められている。加えて、研究開発成果の着実な実装と研究開発ビジョンの達成に向けた情報共有・意見交換の場である指定基金協議会も順次設置されている。このほか、経済安全保障分野のセキュリティ・クリアランス制度について、2025年5月、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」が施行された。
さらに、近年、同盟国・同志国間でも様々な議論が行われている。2024年6月に開催されたG7プーリア・サミットでは、経済的威圧への対処、サプライチェーンの強靱化、重要・新興技術の保全などについて、今後も連携して取り組んでいくことが確認された。