在日米軍再編については、2006年の再編の実施のための日米ロードマップ(ロードマップ)において示された。その後、①沖縄の目に見える負担軽減を早期かつ着実に図る方策を講ずる必要があること、②2012年に公表された米国の国防戦略指針にも示されている、アジア太平洋地域重視の戦略と米軍再編計画の調整を図る必要があること、③米国議会においては、グアム移転にかかる経費の削減が求められていること、などの要因を踏まえ、2012年の日米安全保障協議委員会(「2+2」)において、再編計画を調整した。
ロードマップでは、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(IIIMEF:Marine Expeditionary Force))の司令部要素をグアムへ移転することとしていたが、部隊構成を変更し、司令部・陸上・航空・後方支援の各要素から構成される海兵空地任務部隊(MAGTF:Marine Air Ground Task Force)を日本やグアム、ハワイに置くとともにオーストラリアへローテーション展開させることとした。また、海兵隊の沖縄からグアムへの移転とその結果として生ずる嘉手納(かでな)飛行場以南の土地の返還の双方を、普天間(ふてんま)飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことなどを決定した。
厳しさを増す安全保障環境に対応して日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するため、2023年の「2+2」において、日米両国は、在日米軍の戦力態勢を、さらに多面的な能力を有し、より強靱で、より機動的なものに強化し、2012年に調整された再編計画を再調整し、米軍の態勢を最適化することとした。具体的には、第3海兵師団司令部と第12海兵連隊を沖縄に残留させ、同連隊を2025年までに海兵沿岸連隊(MLR:Marine Littoral Regiment)に改編させることについて一致した。
再編計画の再調整に際しては、現行再編計画の基本的な原則は維持するなど、沖縄の負担軽減に最大限配慮している。具体的には、①再編終了後の在沖米海兵隊の定員を引き続き約1万人とすること、②沖縄統合計画において返還予定の土地に影響を及ぼさず、キャンプ・シュワブにおける普天間飛行場代替施設の進展に影響を及ぼさないこと、③2024年から開始される沖縄からグアムへの海兵隊の移転開始などに変更がないことを日米間で確認している。
本取組は、強化された自衛隊の能力・態勢とあいまって、日米同盟の抑止力・対処力を大きく向上するものである。引き続き、在日米軍の態勢を一層最適化するための緊密な協議を継続していく。
資料:在日米軍に関する諸施策
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/index.html
在日米軍再編については、これまで、空母艦載機の厚木飛行場(神奈川県)から岩国飛行場(山口県)への移駐、KC-130空中給油機の普天間飛行場(沖縄県)から岩国飛行場への移駐や海自鹿屋航空基地(鹿児島県)へのローテーション展開など、様々な取組が行われてきた。
防衛省では、引き続き、空母艦載機着陸訓練(FCLP:Field Carrier Landing Practice)にも使用する馬毛島(まげしま)(鹿児島県西之表市)における自衛隊の施設の整備、普天間飛行場を含む嘉手納飛行場以南の土地の返還、在沖米海兵隊のグアム移転などの取組を進めている。
参照図表III-2-5-3および4(「再編の実施のための日米ロードマップ」に示された在日米軍などの兵力態勢の再編の進捗状況①および②)
資料:馬毛島(まげしま)における施設整備について
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/mage/index.html
2006年のロードマップにおいては恒常的な空母艦載機着陸訓練施設について検討を行うための二国間の枠組みを設け、恒常的な施設をできるだけ早い時期に選定することが目標とされた。防衛省は、馬毛島(まげしま)の大部分の土地を取得し、整備に向け、地元である鹿児島県、西之表(にしのおもて)市、中種子(なかたね)町や南種子(みなみたね)町への説明を積み重ねている。
2022年の日米「2+2」共同文書においては、日本政府が馬毛島における自衛隊施設の整備を決定したことを米側も歓迎した。
2023年1月には、西之表市長、中種子町長や南種子町長などからの意見を踏まえ、鹿児島県知事の意見にも沿ったかたちで作成した環境影響評価書を公告し、馬毛島内での工事を開始した。
同年3月には、馬毛島周辺海上での工事も開始し、地元自治体と緊密に連携しながら、施設整備を着実に進めている。
普天間飛行場の全面返還を日米で合意してから、25年以上経た今もなお、返還が実現しておらず、もはや先送りは許されない。
沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の市街地に位置し、住宅や学校で囲まれた普天間飛行場の固定化は、絶対に避けなければならず、これは政府と沖縄の皆様の共通認識であると考えている。
政府としては、名護(なご)市辺野古(へのこ)へ移設する現在の計画が同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるという考えであり、このことについては、日米両政府間でも、日米首脳会談や日米「2+2」の共同声明などの累次の機会において、確認してきている。
同飛行場の一日も早い全面返還の実現に向けて、長年にわたる沖縄の皆様との対話の積み重ねのうえに、これからも、丁寧な説明を行いながら、全力で取り組んでいく。
なお、同飛行場の返還により、危険性が除去されるとともに、跡地(約476ha:東京ドーム約100個分)の活用により、宜野湾市をはじめとする沖縄のさらなる発展が期待される。
普天間飛行場の移設は、同飛行場を単純に移設するものではなく、沖縄における基地の機能や面積の縮小を伴い、沖縄の負担軽減に十分資するものである。
ア 普天間飛行場が有する機能の分散
普天間飛行場の移設は、同飛行場が有する①MV-22(オスプレイ)などの運用機能、②空中給油機の運用機能、③緊急時における航空機受入機能という3つの機能のうち、②と③を県外へ、残る①をキャンプ・シュワブへ移して、同飛行場を全面返還するというものである。
②空中給油機の運用機能は、2014年に岩国飛行場に移転完了し、③緊急時における航空機受入機能は、2018年、空自築城(ついき)基地(福岡県)や空自新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)への機能移転に必要となる施設整備について日米間で合意し、2023年3月までに築城基地の滑走路延長を除く工事を完了した。築城基地の滑走路延長については、2024年9月、海上工事に着手した。
イ 面積の縮小
普天間飛行場の代替施設を建設するために必要となる埋立ての面積は、約152haであるが、同飛行場の面積約476haに比べ、約3分の1程度となり、滑走路も、1,200m(オーバーランを含めても1,800m)と、現在の同飛行場の滑走路長2,740mに比べ、大幅に短縮される。
ウ 騒音および危険性の軽減
滑走路はV字型に2本設置されるが、これは、地元の要望を踏まえ、離着陸時の飛行経路が海上になるようにするためのものである。訓練などで日常的に使用される飛行経路が、普天間飛行場では市街地上空にあったのに対し、代替施設では、海上へと変更され、騒音および危険性が軽減される。
例えば、同飛行場では、住宅防音が必要となる地域に1万数千世帯の住民が居住しているのに対し、代替施設ではこのような世帯はゼロとなる。
ア 移設先の検討
2004年8月の宜野湾市における米軍ヘリ墜落事故の発生を踏まえ、周辺住民の不安を解消するため、一日も早い移設・返還を実現するための方法について、在日米軍再編に関する日米協議の過程で改めて検討が行われた。
2005年10月の日米「2+2」共同文書において、代替施設をL字型に設置することとされたが、その後の名護市をはじめとする地元地方公共団体との協議や合意を踏まえ、2006年5月のロードマップにおいて、代替施設の滑走路をV字型で設置することとなった。この代替施設の建設について、同月、稲嶺沖縄県知事(当時)と額賀防衛庁長官(当時)との間でも基本確認書が取り交わされた。
2009年9月の政権交代後、沖縄基地問題検討委員会が設けられた。この委員会による検討を経たのち、2010年5月の日米「2+2」において、普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区とこれに隣接する水域に設置する意図を確認した。その後、2011年6月の日米「2+2」において、滑走路の形状をV字型と決定した。
このような結論に至る検討過程では、まず、東アジアの安全保障環境に不安定性・不確実性が残るなか、わが国の安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に所在する海兵隊をはじめとして、在日米軍の抑止力を低下させることは、安全保障上の観点からできないとの判断があった。
また、同飛行場に所属する海兵隊ヘリ部隊を沖縄所在のほかの海兵隊部隊から切り離し、国外・県外に移転すれば、海兵隊の持つ機動性・即応性といった特性を損なう懸念があった。これは、米海兵隊が、航空、陸上、後方支援の部隊や司令部を一体的に運用しているためである。
こうしたことから、同飛行場の代替地は沖縄県内とせざるを得ないとの結論に至った。
イ 埋立工事の開始
普天間飛行場代替施設建設事業の実施にあたり、2007年から約5年間にわたり、環境影響評価を行った。この評価に対しては、沖縄県知事から、1,561件の意見を受け、その全てに補正を行うとともに、環境影響評価書への記載に適切に反映している。
沖縄防衛局長は、2013年3月、公有水面埋立承認願書を沖縄県に提出し、同年12月、仲井眞知事(当時)はこれを承認した。
工事開始後、翁長知事(当時)が当該埋立承認を取り消したことから、国と沖縄県との訴訟などを経たが、2018年12月に、辺野古側の海域において、埋立工事を開始した。2023年9月末にかけて、辺野古側の海域における埋立ての進捗は約99.5%となり、おおむね完了している。(2025年3月現在)
ウ 地盤改良などの検討
埋立地の地盤に関しては、ボーリング調査の結果などを踏まえ、大浦湾側の海域における護岸などの構造物の安定性などについて検討を行った。その結果、羽田空港や関西国際空港、那覇空港でも用いられた一般的で施工実績が豊富な工法8により地盤改良工事を行うことで、所要の安定性を確保できる強度の地盤になり、問題なく埋立地を完成させ、飛行場を建設できることが確認された。このことは2019年9月から開催された、地盤、構造、水工、舗装の各分野の有識者で構成される技術検討会においても確認されている。
そして、同年12月、沖縄防衛局は、それまでの検討結果を踏まえ、変更後の計画に基づく工事に着手してから工事完了までに9年3か月、沖縄統合計画に示されている提供手続を完了させるまでに約12年を要し、また普天間飛行場代替施設建設事業に要する経費の概略として、約9,300億円が必要であることを示した。
また、環境面についても、2020年1月から4月までの間に開催した自然環境などにかかる各分野の有識者で構成される環境監視等委員会において、計画の変更による環境への影響の程度は、変更前と比べて同程度またはそれ以下であることが確認されている。
エ 公有水面埋立ての変更承認申請
このように、沖縄防衛局は、有識者の知見も得つつ、十分に検討を行ったうえで、2020年4月、地盤改良工事の追加などに伴う埋立ての変更承認申請書を沖縄県知事に提出した。
しかしながら、沖縄県知事は、2021年11月、埋立予定地の地盤の調査や環境保全対策が十分でないとして、変更承認申請を不承認とした。これを受け、同年12月、沖縄防衛局長は、国土交通大臣に対し、行政不服審査法に基づく審査請求を行い、2022年4月、国土交通大臣は、沖縄県知事による不承認処分を取り消す裁決を行うとともに、沖縄県に対し、変更承認申請を承認するよう、地方自治法に基づく是正の指示を行った。
この裁決および是正の指示に対し、同年8月、沖縄県知事は、国の関与の取消訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。これらの訴訟に関しては、最高裁において、2023年8月、裁決に関する沖縄県知事の上告受理申立てを不受理とする決定がなされるとともに、同年9月、是正の指示に関する沖縄県知事の上告を棄却する判決が言い渡され、変更承認申請を承認するよう求めた国土交通大臣の指示が適法であるとする司法判断が確定した。
この判決を踏まえ、同月、国土交通大臣から、沖縄県知事に対し、変更承認申請を承認するよう、地方自治法に基づく勧告および指示を行ったが、その後もなお承認がなされない状態が続いた。
このため、同年10月、国土交通大臣は、地方自治法に基づく代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。その後、同年12月、沖縄県知事に対し、期限までに変更承認申請を承認することを命じる旨の判決が言い渡されたが、その期限までに承認処分がなされなかったため、国土交通大臣が法律にのっとり、承認を行った。この訴訟については、同月、沖縄県知事が最高裁に上告受理申立てを行ったが、2024年2月、最高裁において同申立てを受理しないとの決定がなされ、沖縄県知事に対し、変更承認申請を承認することを命じた福岡高裁那覇支部の判決が確定した。
これらに加え、2022年9月、沖縄県は、国土交通大臣の裁決を不服とし、行政事件訴訟法に基づく裁決の取消訴訟を那覇地裁に提起したが、この訴訟については、2025年1月、最高裁において、沖縄県の上告受理申立てを不受理とする決定がなされ、沖縄県の訴えが不適法であるとの司法判断が確定した。これにより、国と沖縄県との間において係属していた訴訟は全て終結した。
参照図表III-2-5-5(代替施設と普天間飛行場の比較(イメージ))、資料32(普天間飛行場代替施設に関する経緯)、資料33(嘉手納飛行場以南 施設・区域の返還時期(見込み))
ア 工事の状況
沖縄防衛局は、2023年12月の変更承認以降、順次、大浦湾側における護岸工事や埋立工事を進めている。2024年12月には、地盤改良工事にも着手し、普天間飛行場の全面返還に向け、工事が着実に進捗している。
参照図表III-2-5-6(普天間飛行場代替施設建設事業にかかる工事の進捗状況)
イ 環境保全にかかる取組
環境影響評価書において、埋立区域に生息するサンゴ類は埋立てに伴い消失することになるため、避難措置として可能な限り移植することとしていたところ、保護対象のサンゴ類の移植については、沖縄県知事の許可を得て、2024年12月までに完了した。なお、普天間飛行場代替施設建設事業では、那覇空港第二滑走路の工事に伴う埋立ての際よりも、保護の対象を広げ、より手厚くサンゴ類を移植している9。また、国指定の天然記念物であるオカヤドカリ類や、絶滅危惧種に指定されている貝類、甲殻類などについても、工事に合わせて生息に適した周辺の場所へ適切に移動させている。さらに、埋立てに伴い消失する生息域などに関する措置として、陸上施設で育てたサンゴ類を大浦湾周辺海域に移植する取組や海草藻場の生育範囲を拡大するための取組を実施している。
加えて、ジュゴンについては大浦湾に来遊することを前提に様々な環境保全措置を講じている。具体的には、ジュゴンの生息状況を把握するために、航空機を用いた生息状況調査、食跡調査、水中録音装置による鳴音確認などを実施するとともに、日々の工事においても、監視船を配置し、施工区域へのジュゴンの接近を警戒・監視しているところである。
ウ 周辺住民への配慮
普天間飛行場代替施設建設事業の実施による住民の生活環境、経済活動などへの影響について、政府と名護市が認識を共有し、連携した対応を講じるため、2024年5月に「普天間飛行場代替施設の建設に伴う影響に関する協議会」が新たに設置され、2025年2月には第2回協議会が開催された。同協議会では、代替施設の工事による影響や、キャンプ・シュワブの諸問題への対応、久辺三区を始めとする名護市のまちづくりなどについて議論が行われた。
引き続き、地元の皆様への丁寧な説明を行いながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、自然環境や周辺住民の皆様の生活環境にも十分に配慮しつつ、辺野古への移設工事を着実に進めていく。
資料:普天間飛行場代替施設について
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/frf/index.html
資料:普天間飛行場代替施設建設事業における地盤改良について
URL:https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/12/27e_02.pdf
2006年のロードマップでは、普天間飛行場の代替施設への移転、普天間飛行場の返還やグアムへの第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)要員の移転に続いて、沖縄に残る施設・区域が統合され、嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還が可能となるとされていた。
その後、2012年の日米「2+2」において、IIIMEF要員の沖縄からグアムへの移転やその結果として生ずる嘉手納飛行場以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設への移転に関する進展から切り離すことを決定した。さらに、返還される土地については、①速やかに返還できるもの、②機能の移転が完了すれば返還できるもの、③国外移転後に返還できるもの、という3区分に分けて検討していくことで合意した。
2012年末の政権交代後、沖縄の負担軽減に全力で取り組むとの基本方針のもと、引き続き日米間で協議が行われ、沖縄の返還要望が特に強い牧港(まきみなと)補給地区(キャンプ・キンザー)(浦添市)を含む嘉手納飛行場以南の土地の返還を早期に進めるよう強く要請し、米側と調整を行った。その結果、2013年、具体的な返還年度を含む返還スケジュールが明記される形で「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画(沖縄統合計画)」が公表されることになった。
本計画に基づき、全ての返還が実現すれば、沖縄本島中南部の人口密集地に所在する6つの米軍専用施設10の約7割の土地(約1,048ha:東京ドーム約220個分)が返還されることとなる。沖縄統合計画においては、本計画を可能な限り早急に実施することを日米間で確認しており、政府として一日も早い嘉手納飛行場以南の土地の返還が実現するよう、引き続き全力で取り組んでいくこととしている。
参照図表III-2-5-7(沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画)
2013年の沖縄統合計画の公表以降、返還に向けた取組を進め、2020年3月末には沖縄統合計画に基づく必要な手続の完了後速やかに返還となる区域(図表III-2-5-9の赤色の区域)全ての返還が実現した。返還地では順次跡地利用が進められており、例えば、2015年に返還された西普天間住宅地区跡地では、地元の要望に基づき沖縄健康医療拠点の整備が進められ、2025年1月に移転が完了した琉球大学の大学病院が開院し、同年3月に同大学の医学部の移転が完了した。また、キャンプ瑞慶覧の一部土地の共同使用に基づき、同地区跡地と国道58号を結ぶアクセス道路(市道喜友名(きゆな)23号)が、宜野湾市により防衛施設周辺対策事業を活用して整備され、同年2月に供用が開始された。そのほかの区域で地元からの返還要望が強かった一部の区域については、沖縄統合計画上の予定よりも前倒しでの返還を実現している。これにより、例えば、普天間飛行場の東側沿いの土地では、2021年に市道宜野湾11号の全線開通が実現し、これにより地元の道路交通状況が改善されている。さらに、キャンプ瑞慶覧(ずけらん)のロウワー・プラザ住宅地区(沖縄市、北中城村(きたなかぐすくそん))について、2022年、返還に先立って、緑地公園として一般利用することを日米間で合意する旨を、現地を訪問した岸田内閣総理大臣(当時)より公表し、2024年、「ロウワー・プラザ緑地ひろば」として、一般利用が開始された。
政府としては、引き続き、沖縄統合計画における嘉手納飛行場以南の土地の返還を着実に実施し、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するため、全力で取り組んでいくこととしている。
参照図表III-2-5-8(嘉手納飛行場以南の土地の返還実績)、図表III-2-5-9(嘉手納飛行場以南の土地の返還(イメージ))、資料33(嘉手納飛行場以南 施設・区域の返還時期(見込み))
2024年12月、在沖米海兵隊の日本国外への移転の第一段階として、約100名の先遣隊による沖縄からグアムへの移転開始を発表した。これまでの間、グアム移転に必要な取組を着実に進め、移転開始の発表に至ったことには、沖縄の基地負担を軽減する観点からも大きな意義がある。
2006年に発表されたロードマップでは、沖縄に所在するIIIMEF要員約8,000人とその家族約9,000人が2014年までに沖縄からグアムに移転することとされたが、2012年の日米「2+2」において、グアムに移転する部隊構成や人数についての見直しがなされた。これにより、MAGTFは日本、グアム、ハワイに置くこととされ、約9,000人が日本国外に移転することになった。一方で、沖縄における海兵隊の最終的なプレゼンスは、ロードマップの水準(約1万人)に従ったものにすることとされた。
また、2024年12月、防衛省と米海兵隊は、IIIMEFの後方支援要員約100名による先遣隊が沖縄からグアムへの移転を開始したことを発表した。今後、移転は段階的に行われ、4,000名以上の海兵隊の要員が沖縄からグアムに移転することを日米間で確認している。グアム移転が着実に実施されるよう、引き続き、米側と協力していく。
ロードマップでは、施設やインフラの整備費算定額102.7億ドル(2008米会計年度価格)のうち、わが国が28億ドルの直接的な財政支援を含め60.9億ドルを提供し、米国が残りの41.8億ドルを負担することで合意に至った。わが国が負担する費用のうち、直接的な財政支援として措置する事業について、日米双方の行動をより確実なものとし、これを法的に確保するため、2009年2月、日米両政府はグアム協定11に署名した。
本協定に基づく措置として、2009年度から、わが国が財政支援する事業にかかる米国政府への資金提供を行っている12。
その後、2012年4月の日米「2+2」では、グアムに移転する部隊構成や人数が見直され、米国政府による暫定的な移転費用の見積りは86億ドル(2012米会計年度価格)とされた。わが国の財政的コミットメントは、グアム協定第1条に規定された28億ドル(2008米会計年度価格)を限度とする直接的な資金提供となることが再確認されたほか、わが国による家族住宅事業やインフラ事業のための出融資などは利用しないことが確認された13。
また、グアム協定のもとですでに米国政府に提供された資金は、わが国による資金提供の一部となることとされ、グアムと北マリアナ諸島連邦の日米両国が共同使用する訓練場の整備についても、前述の28億ドルの直接的な資金提供の一部を活用して実施することとされた。このほか、残りの費用や追加的な費用は米国が負担することや、両政府が二国間で費用内訳を完成させることについても合意された。
2013年10月の日米「2+2」では、グアムと北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備と自衛隊による訓練場の使用に関する規定の追加などが盛り込まれたグアム協定を改正する議定書の署名も行われた。しかし、わが国政府からの資金提供については、引き続き28億ドル(2008米会計年度価格)が上限となることに変更はない。
グアムにおける環境影響評価については、再編計画の調整によって変更した事業内容を反映し、所要の手続が進められ、2015年8月に終了した。
北マリアナ諸島連邦における訓練場整備に関する環境影響評価は、現在実施中である。
現在、米国政府により、グアム各地区において施設などの整備が行われている。これまで、日本側が資金を提供している事業のうち、基地管理庁舎、診療所などが完了した。
参照図表III-2-5-10(グアム移転事業の進捗状況(イメージ))
当分の間、嘉手納、三沢(青森県)、岩国の3つの在日米軍施設・区域の航空機が、自衛隊施設における共同訓練に参加することとされたことに基づき、2007年以降、航空機訓練移転14(ATR)を行っており、防衛省は、必要に応じ訓練移転のためのインフラの改善を行っている。
ATRは、日米間の相互運用性の向上に資するとともに、これまで嘉手納飛行場を利用して実施されていた空対地射爆撃訓練の一部を移転するものであり、嘉手納飛行場周辺の騒音軽減につながることから、沖縄の負担軽減にも資するものである。
防衛省・自衛隊は、米軍の支援に加え、周辺住民の安心、安全を図るため、現地連絡本部の設置、関係行政機関との連絡や周辺住民への対応など、訓練移転の円滑な実施に努めている。
参照図表III-2-5-11(航空機訓練移転に関する主な経緯)
日米両政府は、2013年の「2+2」共同発表において、同盟の抑止力を維持しつつ、わが国本土を含め沖縄県外における訓練を増加させるため、MV-22の沖縄における駐留や訓練の時間を削減し、わが国本土や地域における様々な運用への参加の機会を活用すると決定した。これを踏まえ、普天間飛行場のMV-22の沖縄県外での訓練などが進められてきた。
2016年、日米合同委員会において、沖縄県外での訓練の一層の推進を図り、訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため、現在普天間飛行場に所在するAH-1やCH-53といった回転翼機やMV-22などの訓練活動を日本側の経費負担により沖縄県外に移転することについて合意した。
合意から2025年3月までに、国外ではグアム、国内では北海道、青森県、岩手県、宮城県、群馬県、神奈川県、新潟県、静岡県、滋賀県、香川県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の演習場などにおいて、計23回実施してきた。
政府としては、引き続き、MV-22の参加を伴う訓練を、沖縄からわが国本土やグアムなどに移転することにより、MV-22の沖縄における駐留や訓練の時間を削減し、沖縄の一層の負担軽減に寄与する取組を推進することとしている。
なお、MV-22の安全性については、2012年、普天間飛行場への配備に先立ち、政府内外の専門家、航空機パイロットなどからなる分析評価チームを設置するなどして、政府として独自に安全性を確認している。加えて、2014年、わが国自身がオスプレイ導入を決定するにあたり、その検討過程のみならず、導入決定後においても、各種技術情報を収集・分析し、安全な機体であることを改めて確認している。
さらに、2016年から米海兵隊の教育課程に陸自のオスプレイ要員を派遣し、実際の機体を用いて操縦・整備を行い、オスプレイが安定した操縦・整備が可能であり、信頼できる機体であることを改めて確認している。
なお、米空軍CV-22(オスプレイ)については、MV-22と同じ推進システムを有し、基本的な構造も共通していることから、機体の安全性はMV-22と同等である。
また、2023年11月の米空軍CV-22墜落事故について、2024年8月に公表された事故調査報告書によれば、原因は左側のプロップローター・ギアボックス(PRGB)の不具合と操縦士の意思決定であるとしている。事故原因に対応した各種安全対策を講じて、同様の事故の予防、対処が可能であるとの結論に至り、オスプレイの運用を行っている。2024年12月には、米側における最新の分析に基づき、安全性を更に向上させる観点から、新たな安全対策を実施することが公表された。これは、各種安全対策によって、2023年11月の米空軍CV-22墜落事故と同様の事故の予防・対処を継続することを前提とした上で、一定の飛行時間に満たないPRGBを対象として、安全性を更に向上させる観点から追加的な安全対策を実施するものであり、本取組により事故の予防・対処が一層強化されるものと考えている。
防衛省としては、オスプレイの安全性について、これまでも累次の機会に確認しており、問題はないと考えているが、日本国内におけるオスプレイの飛行運用にあたっては、飛行の安全確保が最優先であることを日米のあらゆるレベルで確認しており、引き続き、日米で協力し、安全確保に万全を期していく。
参照V部2章1節4項2(3)(米軍オスプレイの墜落事故)、資料34(米軍オスプレイのわが国への配備の経緯)
2013年にフィリピン中部で発生した台風被害に対する救援作戦「ダマヤン」を支援するため、沖縄に配備されているMV-22(14機)が人道支援・災害救援活動に投入された。MV-22は、アクセスの厳しい被災地などに迅速に展開し、1日で数百名の孤立被災民と約6トンの救援物資を輸送した。また、2014年に韓国の珍島(チンド)沖で発生した旅客船沈没事故に際しても、沖縄に配備されているMV-22が捜索活動に投入された。さらに、2015年のネパールにおける大地震に際し、沖縄に配備されているMV-22(4機)が派遣され、人員・物資輸送に従事した。
国内においても、平成28年熊本地震に際し、MV-22が派遣され、被災地域への生活物資の輸送に従事した。
このように、MV-22は、その高い性能と多機能性により、大規模災害が発生した場合にも迅速かつ広範囲にわたって人道支援・災害救援活動を行うことが可能であり、2014年から防災訓練でも活用されている。なお、CV-22についても、MV-22と同様、大規模災害が発生した場合には、捜索救難などの人道支援・災害救援活動を迅速かつ広範囲にわたって行うことが可能とされている。
今後も、米軍オスプレイは、このような様々な事態において、その優れた能力を発揮していくことが期待されている。
2006年5月のロードマップに基づく在日米軍の再編を促進するため、2007年8月に再編特措法15が施行され、これに基づき、再編交付金や公共事業に関する補助率の特例などの制度が設けられた。
加えて、再編の実施により施設・区域の返還や在沖米海兵隊のグアムへの移転などが行われ、在日米軍従業員の雇用にも影響を及ぼす可能性があることから、雇用の継続に資するよう技能教育訓練などの措置を講ずることとしている。
なお、再編特措法については、2017年3月31日、同法の有効期限を2027年3月31日まで10年間延長するなどの同法の一部を改正する法律が施行された。
参照資料35(駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法の概要)
8 サンドコンパクションパイル工法、サンドドレーン工法、ペーパードレーン工法であり、他事業の例として、羽田空港再拡張事業などがある。
9 具体的には、那覇空港第二滑走路の工事に伴い、小型サンゴ約3万7,000群体の移植が行われたが、仮に、代替施設建設事業と同じ基準を当てはめれば、移植対象の小型サンゴ類は約17万群体となる。
10 那覇港湾施設、牧港補給地区、普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江および陸軍貯油施設第1桑江タンク・ファーム
11 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定
12 わが国が財政支援する事業については、2025年1月時点において総額約3,730億円(提供した資金から生じた利子の使用を含む)が米側に資金提供された。
13 これを受け、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法に規定されていた株式会社国際協力銀行の業務の特例(出融資)については、2017年3月31日に施行された同法の一部を改正する法律により廃止された。
14 在日米軍航空機が自衛隊施設などにおいて共同訓練などを行うこと。
15 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法