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<解説>ヴォストーク2018

ロシア軍は例年、年間訓練の山場となる戦略的な大規模演習の実施場所として、4つの軍管区を一年ごとに順次持ち回っており、東部軍管区、中央軍管区、南部軍管区及び西部軍管区を中心として行われるものを、それぞれ「ヴォストーク(東)」、「ツェントル(中央)」、「カフカス(コーカサス)」及び「ザーパド(西)」と呼んでいます。

これらの演習は、大統領から課せられた任務として参謀本部が①国防省のほか他省庁や民間企業を含むロシアの平時から戦時への移行を計画し、検証するとともに、②全国家的な対応が必要となる大規模・高烈度な戦争を想定した態勢を試すものとも言われています。

東部軍管区を中心として行われた「ヴォストーク2018」は、中央軍管区、北洋艦隊などの部隊も参加し、兵士約30万人、戦車など約3万6,000両、艦艇約80隻、航空機約1,000機が投入され、1981(昭和56)年以来最大規模のものであると発表されました。他方、30万人という規模については、発表された実動期間(9月11日~17日)だけではなく、7月からの準備期間中に行われた各種活動(部隊の長距離展開、後方支援・戦闘支援演習、戦闘即応態勢を試す抜き打ち演習など)に参加した全ての人数を含むものであり、実動期間中に参加した戦闘部隊の人数は10万人以下であったとの見方や、参加した兵士の数を誇張し、軍事的に強力な存在であることを誇示するものだったとの指摘もあります。

中蒙との国境付近のロシア軍演習場では、中国の兵士約3,200人、戦車など約900両、固定翼機・回転翼機約30機が露軍との合同演習に参加したほか、中露蒙による軍事パレードが行われ、プーチン大統領や中露両国防相が同演習場を視察しました。これまで中露は海軍共同演習などを実施していますが、ロシア単体又は同盟国(集団安全保障条約機構加盟国であるベラルーシやカザフスタン)とのみ実施してきたこのような大規模演習への中国軍の参加は初めてのことであり、中国が「中国軍の歴史上最大規模の兵士を海外に派遣して演習に参加」したと強調したことや対米牽制の観点から、中露の軍事的連携が一層進んでいる可能性が指摘されるなど注目を集めました。

また、4年前に行われた「ヴォストーク2014」も兵士約15万5,000人が参加したとされる大規模なものでしたが、ロシア国防相が視察したカムチャッカをはじめ、極東から北極に至る沿岸部・島しょ部を中心に各種演習が実施されたのに対し、「ヴォストーク2018」では、北洋艦隊部隊による北極の沿岸部・島しょ部やベーリング海での演習を除けば、沿岸部・島しょ部での演習は比較的低調であり、中露両国防相が訪れた演習場など、内陸部を中心に各種演習が行われました。