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<解説>北朝鮮の非核化の現状と核・ミサイル能力

北朝鮮は、18(平成30)年6月の米朝首脳会談において、朝鮮半島の完全な非核化の意思を表明しています。また、核実験及びICBM級弾道ミサイルの発射実験の中止を表明し、豊渓里(プンゲリ)核実験場の爆破を公開したほか、東倉里(トンチャンリ)にあるミサイル発射台・エンジン試験場の廃棄といった追加措置をとることや、米国が制裁の一部を解除すれば寧辺(ヨンビョン)の核施設を廃棄する旨表明しています。

一方、19(平成31)年2月に行われた第2回の米朝首脳会談はいかなる合意にも達することなく終了しました。また、北朝鮮は全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での廃棄は行っていません。さらに、核実験及びICBM級弾道ミサイルの発射実験の中止や核実験場の爆破の公開は、北朝鮮がこれまでに累次の核実験及び弾道ミサイル発射を通じて獲得した核・ミサイル能力に変化を及ぼすものではありません。すなわち、北朝鮮が、

  • 核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っているとみられること、
  • 我が国全域を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有し、それらを実戦配備していること、
  • 発射台付き車両(TEL)や潜水艦を用いて、我が国を奇襲的に弾道ミサイル攻撃できる能力及び複数の弾道ミサイルを同時に発射する能力を引き続き保有していること

といった状況に変わりはないことから、北朝鮮の核・ミサイル能力に本質的な変化は生じていないと認識しています。

加えて、北朝鮮は、既に存在する核弾頭や核物質、生物・化学兵器及び大量破壊兵器の運搬手段となる弾道ミサイルの申告や廃棄について何ら言及していません。また、核関連施設についても、北朝鮮が公表している寧辺の施設のほかに、非公表のウラン濃縮施設が存在すると指摘されていますが、北朝鮮はこれらの存在及び廃棄を明言していません。

これらのことも踏まえ、防衛省・自衛隊としては、引き続き、北朝鮮が大量破壊兵器・ミサイルの廃棄に向けて具体的にどのような行動をとるのかをしっかり見極めていくとともに、北朝鮮の軍事動向について、米国などと緊密に連携しながら、必要な情報の収集・分析及び警戒監視に全力を挙げてまいります。