Contents

コラム

防衛白書トップ > コラム > <解説>宇宙空間をめぐる安全保障の動向

<解説>宇宙空間をめぐる安全保障の動向

宇宙空間には国境の概念がなく、人工衛星を活用すれば地球上のあらゆる場所で情報収集や通信、測位などが可能となるため、各国は人工衛星を活用した宇宙システムを軍事作戦の基盤として利用しています。具体的には、米国をはじめとする主要国の軍は、画像・電波情報を収集する偵察衛星、正確な場所の把握やミサイルなどの誘導に利用する測位衛星、弾道ミサイルの発射を探知する早期警戒衛星、遠距離に所在する部隊間などの通信を可能にする通信衛星などを運用しています。

軍の宇宙システムへの依存が増していることから、一部の国は軍事作戦において、相手の人工衛星の機能を喪失させることにより相手の戦力発揮を妨げることを企図して、対衛星兵器(ASAT)の開発・能力向上に努めています。例えば、中国及びロシアは、地上や航空機などから人工衛星に向けてミサイルを発射し人工衛星を物理的に破壊する「対衛星攻撃ミサイル」、人工衛星への直接衝突やロボットアームによる捕獲により人工衛星の機能を喪失させる「キラー衛星」、高出力レーザーなどを人工衛星に集中照射し人工衛星の各種機能を喪失又は人工衛星を直接破壊する「指向性エネルギー兵器」、電波妨害(ジャミング)により人工衛星と地上局などとの間の電波通信を妨害する「電波妨害装置(ジャマ─)」などの開発・実験を継続していると指摘されています。

こうした状況の下、米国防省は、中国及びロシアが対宇宙能力を米国及び同盟国の軍事的実効性を弱める手段として考慮していると認識し、新たな軍種としての宇宙軍の創設にかかる法案を議会に提出するなど、宇宙における相対的優位を維持するための取組を進めています。

レーザー技術実験機(A-60)

レーザー技術実験機(A-60)

【Jane's by IHS Markit】

〈概説〉

ロシアの高出力レーザー兵器を搭載した航空機。09(平成21)年、衛星に向けてレーザーを照射する実験を行ったとされている。