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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

2 法整備の経緯・意義

前述の閣議決定後、内閣官房国家安全保障局のもとに法案作成チームが立ち上げられ、また、防衛省・自衛隊においても、防衛大臣を委員長とする「安全保障法制整備検討委員会」が設置された。政府はこれらの検討体制のもと、計25回の与党における協議を踏まえて検討を行い、15(平成27)年5月14日、平和安全法制整備法案2及び国際平和支援法案3の2法案を閣議決定し、翌15日に第189回国会(常会)へ提出した。

これらの2法案は、例えば、平素における米軍等の部隊の武器等の防護、重要影響事態及び国際平和共同対処事態における他国軍隊等への支援活動、さらには、「新三要件」4を満たす場合における、わが国を防衛するための必要最小限度の自衛の措置としての限定的な集団的自衛権の行使に至るまで、あらゆる事態への切れ目のない対応を可能とするものであり、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要不可欠なものである。

2法案は、戦後最長となる国会会期の延長がなされたうえで、衆議院において約116時間、参議院において約100時間の計約216時間という戦後の安保関係の法案審議において最長となる審議がなされた。その結果、自民党及び公明党のみならず、日本を元気にする会(当時)、次世代の党(当時)及び新党改革(当時)の野党3党の計5党の賛成(10党のうち5党)も得て、幅広い合意を形成したうえで、15(平成27)年9月19日に参議院本会議において可決・成立した。

その際、この5党により、存立危機事態の認定にかかる新三要件の該当性の判断に当たり留意すべき事項や、平和安全法制に基づく自衛隊の活動に対する常時監視及び事後検証のための国会の組織のあり方、国会関与の強化について、各党間で検討を行い、結論を得ることなどを盛り込んだ「平和安全法制についての合意書」(「5党合意」)が合意されるとともに、当該合意の趣旨を尊重し、適切に対処する旨の閣議決定が行われ、平和安全法制は、16(平成28)年3月29日に施行された。

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、本法制の施行は、弾道ミサイル防衛に当たる米艦艇の防護や後方支援が可能になるなど、日米同盟全体の抑止力や対処力を一層強化し、地域及び国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献することを通じて、わが国の平和と安全を一層確かなものにしていくものであり、歴史的な重要性を持つものである。また、本法制が世界から高く評価5されていることは、地域及び国際社会の平和と安定に資するものであることの証である。

参照図表II-5-1-1(平和安全法制の構成)

図表II-5-1-1 平和安全法制の構成

2 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案

3 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案

4 1章2節参照

5 同盟国である米国はもとより、オーストラリア、アジア太平洋、欧州、中東、アフリカ、中南米の国々に加え、ASEAN、EU、国際連合などからも理解と支持が表明されている。