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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

2 防衛関係費の内訳

防衛関係費は、隊員の給与や食事のための「人件・糧食費」と、装備品の修理・整備、油の購入、隊員の教育訓練、装備品の調達などのための「物件費」とに大別される。さらに、物件費は、過去の年度の契約に基づき支払われる「歳出化経費」1と、その年度の契約に基づき支払われる「一般物件費」とに分けられる。物件費は「事業費」とも呼ばれ、一般物件費は装備品の修理費、隊員の教育訓練費、油の購入費などが含まれることから「活動経費」とも呼ばれる。防衛省では、このような分類の仕方を経費別分類と呼んでいる。

歳出予算で見た防衛関係費は、人件・糧食費と歳出化経費という義務的性質を有する経費が全体の8割を占めており、残りの2割についても、装備品の修理費や基地対策経費などの維持管理的な性格の経費の割合が高い。このため、歳出予算で見た場合、単年度でその内訳を大きく変更することは難しい側面がある。

参照図表II-4-3-3(歳出額と新規後年度負担の関係)

図表II-4-3-3 歳出額と新規後年度負担の関係

人件・糧食費は前年度から19億円の減額、歳出化経費は前年度から841億円の増額、一般物件費は前年度から141億円の減額となっている2

参照図表II-4-3-4(防衛関係費(当初予算)の内訳(令和元年度))
資料12(防衛関係費(当初予算)の使途別構成の推移)

図表II-4-3-4 防衛関係費(当初予算)の内訳(令和元年度)

また、歳出予算とは別に、翌年度以降の支払を示すものとして新規後年度負担額(当該年度に、新たに負担することとなった後年度負担額)がある。防衛力整備においては、艦船・航空機などの主要な装備品の調達や格納庫・隊舎などの建設のように、契約から納入、完成までに複数年度を要するものが多い。これらについては、当該年度に複数年度に及ぶ契約を行い、契約時にあらかじめ次年度以降(原則5年以内)の支払いを約束するという手法をとっている。このような複数年度に及ぶ契約に基づき、契約の翌年度以降に支払う金額を後年度負担額といい、令和元(2019)年度の新規後年度負担額は、前年度から4,074億円(20.4%)の増額となっている。

さらに、事業規模を示す契約ベース3で見た場合、前年度から3,934億円(13.2%)の増額となっている。

参照IV部2章3節1項(ライフサイクルを通じたプロジェクト管理)

1 防衛力整備には複数年度にわたるものがある。その場合、契約する年度と代価を支払う年度が異なるため、まず将来における債務負担の上限額を、国庫債務負担行為(債務を負う権限のみが与えられる予算形式であり、契約締結はできるが、支払はできない。)として予算に計上する。それを根拠として契約し、原則として完成・納入が行われる年度に、支払に必要な経費を歳出予算(債務を負う権限と支出権限が与えられる予算形式であり、契約締結および支払ができる。)として計上する。このように、過去の契約に基づく支払のため計上される歳出予算を歳出化経費といい、次年度以降に支払う予定の部分を後年度負担という。
なお、数年にわたる継続的な事業を施行する必要がある場合に、その経費の総額及び年割額についてあらかじめ一括して国会の議決を経て、数年度にわたって債務負担権限と併せて支出権限を付与する制度として、継続費がある。

2 対前年度比較はSACO関係経費、米軍再編経費のうち地元負担軽減分、新たな政府専用機導入に伴う経費及び防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策にかかる経費を含まないものによる。以下この項において同じ。

3 一般物件費と新規後年度負担の合計額。当該年度に契約し、当該年度以降支払われることになる物件費(事業費)の規模を示す。令和元年度は3兆3,821億円。