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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

3 策定の趣旨

わが国の防衛は、防衛省・自衛隊だけで行えるものではなく、国民一人ひとりの防衛政策に関する理解と協力が不可欠である。こうした観点から、新防衛大綱では、「策定の趣旨」において、新防衛大綱が目指すものや問題意識について、国民に分かりやすく端的に示している。

具体的には、まず、国際社会におけるパワーバランスの変化の加速化・複雑化及び既存の秩序をめぐる不確実性の増大、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の利用の急速な拡大による安全保障のあり方の根本的な変化など、安全保障環境が厳しさと不確実性を増す中にあっても、わが国は、平和国家としてより力強く歩んでいくとした上で、わが国自身が、国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空、そして、主権・独立は主体的・自主的な努力によって守る体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図っていく必要があるとした。あわせて、今やどの国も一国では自国の安全を守ることはできない中、わが国の安全保障にとって不可欠な日米同盟や各国との安全保障協力の強化は、わが国自身の努力なくしてこれを達成することはできないとして、わが国の主体性・自主性を明確に表した。この点については、これまでの防衛計画の大綱も安全保障政策において根幹となるのは自らが行う努力であるとの認識に基づいて策定されてきたが、新防衛大綱においては、これをしっかりと明文化する趣旨で記述したところである。

そのうえで、今後の防衛力の強化に当たっては、安全保障の現実に正面から向き合い、従来の延長線上ではない真に実効的な防衛力を構築するため、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保していく必要があるとした。特に、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域については、わが国としての優位性を獲得することが死活的に重要となっており、陸・海・空という従来の区分に依拠した発想から完全に脱却し、全ての領域を横断的に連携させた新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を図っていく必要があるとした。一方、急速な少子高齢化や厳しい財政状況を踏まえれば、過去にとらわれない徹底した合理化なくして、かかる防衛力の強化を実現することはできないとした。このように、新防衛大綱では、従来とは根本的に異なる速度での防衛力の構築と、従来の発想に固執することのない資源配分の必要性を強調している。

さらに、日米同盟については、わが国自身の防衛体制とあいまって、引き続きわが国の安全保障の基軸であり続けるとし、わが国が独立国家としての第一義的な責任をしっかりと果たしていくことこそが、日米同盟の下でのわが国の役割を十全に果たし、その抑止力と対処力を一層強化していく道であり、また、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、安全保障協力を戦略的に進めていくための基盤であるとした。