ASEAN各国は、地域の多国間安全保障の枠組みとしてASEANの活用を図っており、安全保障問題に関する対話の場であるASEAN地域フォーラム(ARF)やASEAN国防相会議(ADMM)などを開催しているほか、軍事人道支援・災害救助机上演習(AHR:ASEAN Militaries' Humanitarian Assistance and Disaster Relief Table-Top Exercise)を行うなど、地域の安全保障環境の向上や信頼醸成に努めてきた。一方、ASEANは域外国との関係も重視し、ADMMにわが国を含む域外8か国を加えた拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)を開催するとともに、ADMMプラスの枠組みで人道支援・災害救援演習などを実施している。また、中国との間では、18(平成30)年8月に海事机上演習、同年10月に海上演習をそれぞれ初めて実施した。これに関連して、中国は、「南シナ海に関する行動規範(COC:Code of the Conduct of Parties in the South China Sea)」の策定協議で、中国とASEANの合同演習を定期的に行うことや、関係国間の事前合意がない限り、関係国は域外国と合同演習を行わないことをCOCに盛り込むよう提案したと報じられた。一方、ASEANは、同年10月のADMMにおいて、19(平成31)年に米国との間で合同海洋訓練を実施する予定であることを発表するなど、域外国との関係構築においてバランスを図る動きが見られている。今後は、ASEAN政治・安全保障共同体の理念及び構想25に基づき、域外国との信頼醸成に向けた取組を一層発展させていくものとみられる。
2018年10月27日、ASEAN・中国海上演習の閉幕式に出席した各国海軍代表【シンガポール国防省提供】