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<解説>過去最多となる中国機への緊急発進とそれに対応する空自

空自は、1958(昭和33)年以来、領空を侵犯するおそれのある航空機に対し、戦闘機を緊急発進させるなどして、領空侵犯を生じさせないよう万全を期してきました。平成28(2016)年度は、戦闘機による緊急発進の回数が、今までの最多であった昭和59(1984)年度の944回を超えて、約60年間で最多の1168回となりました。昭和59年度では、北部航空方面隊の緊急発進回数が最も多く439回でしたが、平成28年度では、南西航空混成団の緊急発進回数が803回で最も多くなり、これは南西方面の安全保障環境が厳しさを増していることの表れです。

この要因は中国軍用機の活動の拡大・活発化にあり、わが国周辺空域においては、中国軍用機の活動機数が増加するとともに、近年は、中国軍用機は東シナ海においてその活動範囲を徐々に東及び南方向に拡大する傾向にあります。このような漸進(ぜんしん)的拡大の結果、沖縄本島をはじめとするわが国南西諸島により近接した空域において中国軍用機の活動がますます増加しており、これが緊急発進回数の増加につながっています。

こうした中国軍用機の活動の拡大・活発化に伴い、平成28年度における南西航空混成団による緊急発進回数は全国の6割以上に達しました。南西地域の防空体制を一層強化するため、17(平成29)年7月1日をもって南西航空混成団は南西航空方面隊に改編され、引き続き、南西航空方面隊が南西地域の防空の要として、昼夜を問わず、厳正な対領空侵犯措置の任務にあたっています。

<VOICE>

第9航空団飛行群第304飛行隊(沖縄県那覇市)
飛行班員 1等空尉 瀬長 仁志(せなが ひとし)

那覇基地に所在する第9航空団は、南西方面唯一の戦闘機(F-15)部隊であり、平成28年度の緊急発進回数は800回を超え、毎日のように緊急発進を行っています。また、第9航空団は、中国機に対する緊急発進の大部分を担っており、私達戦闘機パイロットは、24時間365日途切れることなく警戒待機に就いております。緊急発進により急行し中国機への対応を行う際に私が常に心掛けているのは、領空保全の意思を示す毅然とした態度、法規類に則った慎重かつ厳正な行動、そしてどんな状況にも緊張感を持ちつつ適切に対応する冷静さを維持することです。厳しさを増す南西地域の安全保障環境にあって、任務における私達の行動一つ一つが、国家間の重大な事態に結びつく可能性があるということを常に肝に銘じつつ任務にあたっています。任務を終え、無事着陸したとしても達成感を味わうのも束の間、次の緊急発進に備えた準備を速やかに行う必要があります。私が生まれ育った美ら海(ちゅらうみ)の空におけるこのような現状に、胸が熱くなり強い使命感が湧いてきます。今後さらに厳しさを増す可能性のあるこの南西地域において、ますます厳正かつ毅然とした態度を持って任務に邁進し、我が国の平和と安全に貢献していく所存です。

F-15に搭乗し、飛行前点検を行う瀬長1尉

F-15に搭乗し、飛行前点検を行う瀬長1尉