Contents

コラム

防衛白書トップ > コラム > <解説>中国による南沙諸島の地形開発とその安全保障上の影響

<解説>中国による南沙諸島の地形開発とその安全保障上の影響

南シナ海の中心から南に広がる南沙諸島では、様々な国が地形開発を行っています。中でも、中国は、14(平成26)年以降、南沙諸島にあるミスチーフ礁やクアテロン礁などの7つの地形において、大規模かつ急速な埋立活動を強行し、砲台といった軍事施設のほか、滑走路や格納庫、港湾、レーダー施設など、軍事目的に利用しうる各種インフラ整備を推進しています。その安全保障上の影響としては以下の2点が考えられます。

1点目は、中国が南沙諸島に港湾を建設し、軍艦艇や公船などの展開・補給・整備能力を確保した場合、中国は南シナ海全域に軍艦艇や公船を継続的に配備・展開することが可能になります。その結果、中国の南シナ海における警戒監視・作戦遂行能力は大幅に向上する可能性があります。

2点目は、ファイアリークロス礁・スビ礁・ミスチーフ礁での滑走路建設や格納庫と考えられる施設の建設により、中国は様々な航空戦力の前方展開、補給、整備などが可能になります。また、南沙諸島へのレーダー施設の配備は、中国による南シナ海における警戒監視能力を著しく向上させることになります。こうした状況は、中国によって、南シナ海全域での戦力投射能力の向上や航空優勢獲得の容易化、ひいては「A2/AD」能力の向上に繋がる可能性があります。この結果、中国の航空プレゼンスが一層増大し、将来的には「南シナ海防空識別区」設定の可能性もあります。

わが国にとって、南シナ海における「公海自由の原則」及びシーレーンの安全確保は重要な関心事項です。中国による地形開発とその軍事利用が進む場合、周辺国などとの緊張が一層高まると同時に、シーレーンの安定的利用に対するリスク増大など、安全保障上の影響が否定できないと考えられます。

ミスチーフ礁の説明図

クアテロン礁の説明図