装備品の高性能化・複雑化により、装備品のライフサイクル全体(構想、研究開発、量産取得、維持整備など)のコストが増加傾向にあり、必要な数を適切な時期に取得するには、ライフサイクル全体を通じたプロセスの効率化が極めて重要となる。
このため、重要な装備品について、ライフサイクル全体を通じてコストやスケジュールを管理し、運用ニーズを踏まえた最適な取得を実現するため、防衛装備庁にプロジェクト管理部を設置している。
効果的かつ効率的な運用及び維持を可能とする最適な装備品の取得を実現するため、15(平成27)年11月には、プロジェクト管理重点対象装備品として12の装備品を選定し、そのプロジェクト管理を行う責任者としてプロジェクトマネージャー(PM:Project Manager)を指定するとともに、省内関連部署の職員で構成される統合プロジェクトチームを設置した。16(同28)年には、プロジェクト管理重点対象装備品について、取得プログラムの目的や取得の方針、ライフサイクルコストなど、今後計画的にプロジェクト管理を進めるために必要な基本的な事項を定めた「取得戦略計画」を策定しながら、本計画に基づきプロジェクト管理を実施し、戦略的に最適な装備品の取得の実現を図っている。
具体的には、各自衛隊などが作成する各取得業務の計画やその実施状況を踏まえ、防衛装備庁が総合的な観点から各取得プログラムの進捗状況や経費の発生状況などを確認している。また、取得戦略計画との比較及びこれらを踏まえた定量的かつ客観的な分析及び評価を行い、必要に応じて取得戦略計画を見直すことにしている。なお、ライフサイクルコストが大幅に超過することが見込まれる場合には、事業の抜本的な見直しや中止も含め、適切な対応策をとることにしている。
平成29(2017)年度においては、中SAM(改)について、開発段階から量産・配備段階に移行したことから、量産仕様に応じたライフサイクルコストの基準を更新するなど取得戦略計画の見直しを実施している。また、すでに選定したプロジェクト管理重点対象装備品以外の装備品についても、新たなプロジェクト管理重点対象装備品や準重点管理対象装備品1に選定することを検討している。
参照図表III-4-3-1(プロジェクト管理重点対象装備品)
プロジェクト管理を推進、強化するために以下の取組を行っている。
一部の装備品については、プロジェクト管理を行うにあたり、特に装備品取得のコスト・スケジュールについては、装備品の構成要素(WBS:Work Breakdown Structure2)ごとに進捗状況を可視化するためのコスト・スケジュール管理手法の導入を推進し、コスト上昇やスケジュール遅延の兆候を早期に察知し、迅速な対応が行えるように努めている。
ライフサイクルコストなどのコスト見積りは、これまでに開発あるいは導入した類似装備品の実績コストデータから推定しているが、見積り精度を向上するためには、より多くのコストデータに基づき推定する必要があることから、コストデータベースを構築し、コストデータの収集を推進している。なお、短期間で十分なコストデータを蓄積することは困難であることから、統計的手法を活用して見積り精度を向上する手法の検討をしている。
プロジェクトマネージャーなどのマネジメント能力の更なる向上やプロジェクト管理に携わる人材の育成のため、プロジェクトマネジメントに関する研究教育機関などとの連携強化の推進や、海外や民間におけるプロジェクト管理手法の研修などを定期的に実施している。
統合機動防衛力の構築のためには、統合的見地を踏まえた装備品の取得が必要となる。
これまでも、統合的見地を踏まえ、①装備品機能の統合化、②共用装備品の一括調達、一部構成品の共通化、装備品のファミリー化など3により、開発・取得・維持経費の低減を図ってきたところである。
KeyWord装備品のファミリー化とは
装備品について、基本的な構成部品を共通化させつつ、機能、性能等にバリエーションを持たせることで異なる運用要求に応えるようにすること。
今後は、装備品の構想段階からプロジェクト管理の視点を入れ、ネットワークのすう勢に配意するとともに、装備品のファミリー化を推し進めるための既存技術の他分野への応用事例などの調査を行うことで取得コストの低減について検討し、ライフサイクル全体を通じた効果的・効率的な取得を推進していく。