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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

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第4章 防衛装備・技術に関する諸施策

装備品が高性能化・複雑化する一方、わが国の厳しい財政事情に伴う調達数量の減少や、外国製装備品の輸入増加などにより、わが国の防衛産業は厳しい状況に晒(さら)されている。また、各国は最新技術を用いた先進的な軍事力の獲得を目指しており、技術革新の急速な進展がグローバルな安全保障環境に大きな影響を与える中、防衛力の「質」を十分に確保し、抑止力及び対処力を高めていくためには、わが国が諸外国に対する技術的優越を確保することが重要であり、その点も踏まえた防衛装備・技術政策を進めていかなければならない。

このような中、部隊の運用ニーズに合致した装備品を将来にわたって取得できる環境を維持するには、①わが国の技術的優越の確保に向けた戦略的な研究開発、②防衛生産・技術基盤の維持・強化、③プロジェクト管理の強化、④防衛装備・技術協力の推進に取組むことが不可欠である。

第1節 技術的優越の確保のための研究開発の推進

1 技術的優越の確保の必要性

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、いかなる事態においても国民の生命と財産を守り抜くためには、わが国が有する高い技術力を有効に活用し、技術的優越を確保する必要がある。特に近年、技術革新の急速な進展に伴い、将来の戦闘様相を一変させる、いわゆるゲーム・チェンジャーとなり得る技術の実用化が予測されており、米国をはじめ各国が研究開発を急いでいる。

参照I部3章6節(軍事科学技術と防衛生産・技術基盤をめぐる動き)

このため、国家として技術的優越の確保に戦略的に取り組むことは、わが国の安全保障を確保する観点において喫緊の課題となっている。各国の最先端の軍事技術は、容易に他国には共有されない機微な技術であり、わが国として戦略的に国内に技術基盤を維持すべき分野については、国内における研究開発を推進する必要がある。また、装備品の取得にあたり国際共同開発などを行う場合には、重要な最先端技術(キーテクノロジー)をわが国が保有することが重要である。このためには、防衛省における研究開発のみならず、官民が一体となって研究開発を推進する必要があり、またそうしたキーテクノロジーを保有しなければ、装備品調達の際の価格交渉や防衛装備・技術協力を行うにあたって主導的な立場を確保するバーゲニング・パワーを保持することもできない。