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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 防衛技術戦略など

防衛省では、わが国の技術的優越を確保し、先進的な装備品の創製を効果的・効率的に行い、防衛技術や民生技術に関する各種の政策課題に対応するため、戦略的に取り組むべき各種施策の具体的な方向性を示した「防衛技術戦略」1を16(平成28)年8月に策定した。これは、国家安全保障戦略及び防衛大綱などを踏まえつつ、戦略的に取り組むべき施策の具体的な方向性を示したものであり、この戦略に基づき、防衛省は各種施策を推進している。

1 防衛技術戦略の概要
(1)防衛省の技術政策の目標

わが国の防衛力の基盤である技術力を強化し、さらに強固な防衛力の基盤とするべく、次の2つを防衛省の技術政策の目標に定めた。

  1. ① 技術的優越の確保
  2. ② 優れた防衛装備品の効果的・効率的な創製
(2)推進すべき具体的施策

前項で示した目標を達成するため、次の3つの施策を推進する。

① 技術情報の把握

防衛技術を支えている様々な科学技術について、官民におけるデュアル・ユース技術や最先端科学技術を含む国内外の現状と動向を把握する。また、ゲーム・チェンジャー2となり得る先進的な技術分野を明らかにする「中長期技術見積り」(第2項参照)を策定し、公開する。

KeyWordデュアル・ユース技術とは

民生用にも防衛用にもどちらにも使うことができる技術

② 技術の育成

中長期的な研究開発を推進する「研究開発ビジョン」(第3項参照)を策定するとともに、防衛力構築の基盤を担う研究開発、国内外の関係機関などとの技術交流及び防衛用途として期待される先進的な技術の発掘と育成を視野に入れた「安全保障技術研究推進制度」などを推進する。

③ 技術の保護

わが国の技術が意図せず他国に流出し、国際社会の平和及び安全の維持や、わが国の技術的優越の確保の妨げにならないよう、技術移転を適切に行うための技術管理を実施するとともに、防衛装備移転を考慮した知的財産管理を確立し、知的財産の活用を推進する。

2 中長期技術見積り

「中長期技術見積り」3とは、今後おおむね20年の間に確立されることが期待される、装備品に適用が可能な技術の見通しと、わが国の技術的優越を確保するために確立しなければならない技術分野、特に重点的に獲得を目指すべきゲーム・チェンジャーとなり得る先進的な技術分野を提示するものである。また、本見積りを公表することで、優れた民生先進技術の取り込みや、防衛装備品への適用を目指した技術の省外での育成を促進させることを期待している。

この見積りでは、57件の「将来装備技術」4及び21件の「将来の可能性を秘めた技術」5を抽出し、それらを総合した結果、今後の研究開発において次の4つの技術分野を重視することとしている。

  1. ① 無人化への取組
  2. ② スマート化、ネットワーク化への取組
  3. ③ 高出力エネルギー技術への取組
  4. ④ 現有装備の機能・性能向上への取組
3 研究開発ビジョン

「研究開発ビジョン」とは、将来的に主要になると考えられる装備品について、取り組むべき技術的課題を明らかにし、将来を見据えた装備品のコンセプトとそれに向けた研究開発のロードマップを提示し、中長期的な研究開発の方向性を定めるものである。

防衛省は、策定した研究開発ビジョンを公表し、防衛産業などと共有することにより、企業などの予見可能性を向上させ、より効果的・効率的な研究開発を実現することを目指している。これまで、10(同22)年8月に「将来戦闘機ビジョン」を、16(同28)年8月に「将来無人装備に係る研究開発ビジョン~航空無人機を中心に~」を策定し、公表している。

今後も防衛技術の動向を見据えつつ、技術基盤の育成・向上が必要なものについての研究開発ビジョンの策定・公表を進めていく。

1 正式名称:防衛技術戦略~技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して~

2 将来の軍事バランスを一変する可能性を秘めているもの

3 正式名称:平成28年度 中長期技術見積り

4 将来重要となる技術分野及び要素技術のこと

5 現時点では基礎研究の段階にあるが、将来的に装備品などに適用されることにより、現有装備品などの性能を飛躍的に向上させるもの及び新たな装備品などを創製し得る技術のこと