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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

4 日米間の政策協議

1 各種の政策協議

日米両国は、首脳・閣僚レベルをはじめ様々なレベルで緊密に連携し、二国間のみならず、アジア太平洋地域をはじめとする国際社会全体の平和と安定及び繁栄のために、多岐にわたる分野で協力関係を不断に強化・拡大させてきた。

日米間の安全保障に関する政策協議は、通常の外交ルートによるもののほか、日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)、日米安全保障高級事務レベル協議、防衛協力小委員会など、防衛・外務の関係者などにより、各種のレベルで緊密に行われている。中でも、防衛・外務の閣僚級協議の枠組みである日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)は、政策協議の代表的なものであり、安全保障分野における日米協力にかかわる問題を検討するための重要な協議機関として機能している。

また、防衛省としては、防衛大臣と米国防長官との間で日米防衛相会談を適宜行い、両国の防衛政策や防衛協力について協議している。また、防衛副大臣と米国防副長官との間や、事務次官、統幕長、防衛審議官、陸・海・空幕長をはじめとする実務レベルにおいても、米国防省などとの間で随時協議や必要な情報の交換などを行っている。

このように、あらゆる機会とレベルを通じ情報や認識を日米間で共有することは、日米間の連携をより強化・緊密化するものであり、日米安保体制の信頼性の向上に資するものである。このため、防衛省としても主体的・積極的に取り組んでいる。

参照資料26(日米協議(閣僚級)の実績(14(平成26)年以降))
図表II-4-2-7(日米安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な政策協議)

図表II-4-2-7 日米安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な政策協議

2 最近行われた主な政策協議など
(1)日米防衛相会談(16(平成28)年9月16日(米国防省)及び同年12月7日(防衛省))

稲田防衛大臣とカーター米国防長官(当時)は、日米防衛相会談を実施した。

ア 総論、地域情勢

両閣僚は、地域情勢への認識を共有し、尖閣諸島が日本の施政の下にある領域であり、日米安保条約第5条の適用範囲に含まれること及び同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な動きに反対することを改めて確認した。南シナ海における拠点構築やその軍事目的利用は、地域の緊張を高める一方的な行動として国際社会の懸念事項であるとの認識を共有した。16(同28)年9 月の会談においては、16(同28)年7月の比中仲裁判断8が最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものであること、国際法に則って海洋における活動を行うことの重要性を再確認した。また、両閣僚は、北朝鮮による核・ミサイル開発が日米両国に対する安全保障上の重大な脅威であるとの認識で一致した。

さらに、両閣僚は、日本に対する米国の拡大抑止の揺るぎないコミットメントを改めて確認したほか、日米韓を始めとする3か国間の防衛協力や、多国間の枠組みによる協力を強化していくことを確認した。

イ 日米同盟の抑止力・対処力の強化

両閣僚は、日米ACSAへの署名など新ガイドライン及び平和安全法制の下で進められている取組を歓迎するとともに、北朝鮮による一連の挑発行為への対応などで効果的に機能している同盟調整メカニズム(ACM)を一層活用していくことを確認した。

また、両閣僚は、日本の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上などの取組が、アジア太平洋地域における同盟の抑止力・対処力の一層の強化に資することを確認し、協力を加速化させることで一致した。

ウ 米軍再編など

両閣僚は、16(同28)年7月の軍属等の日米地位協定上の扱いの見直しに関する日米共同発表に基づき、引き続き事務レベルの協議を行っていくことを確認した。また、両閣僚は、普天間飛行場代替施設に関し、辺野古への移設が唯一の解決策であるとの立場を共有し、沖縄の負担軽減について引き続き協力していくことで一致した。

16(同28)年12月の会談においては、北部訓練場の過半について、同年12月22日の返還を実現するため、日米が協力することを確認した。

(2)日米首脳会談(16(平成28)年12月27日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、慰霊のために米国ハワイ州オアフ島にある真珠湾を訪問し、オバマ米大統領(当時)との間で最後の日米首脳会談を実施し、これまでの4年間の協力を振り返りながら、「希望の同盟」の価値及び意義は今後も変わらないことを確認するとともに、日米同盟を未来に向けて更に強化していくことが重要であるとの認識で一致した。

会談では北朝鮮や東アジア情勢などのアジア太平洋地域情勢について意見交換を行い、認識を共有した。また、沖縄に関して、両首脳は、沖縄の本土復帰後最大規模となる北部訓練場の過半返還が実現したこと、軍属に関する補足協定が実質合意に至ったことを歓迎するとともに、沖縄の負担軽減に協力していくことで一致した。

パールハーバーのアリゾナ記念館で献花を行う安倍内閣総理大臣とオバマ米大統領(当時)(16(平成28)年12月)【内閣広報室提供】

パールハーバーのアリゾナ記念館で献花を行う安倍内閣総理大臣と
オバマ米大統領(当時)(16(平成28)年12月)【内閣広報室提供】

(3)日米防衛相会談(17(平成29)年2月4日)

稲田防衛大臣とマティス米国防長官は、防衛省において日米防衛相会談を実施した9

ア 地域情勢

両閣僚は、東シナ海・南シナ海における中国の活動は、アジア太平洋地域における安全保障上の懸念であること、また、北朝鮮による核・ミサイル開発の発展は、日米両国と地域の安定に対する安全保障上の脅威であるとの認識を共有した。

マティス米国防長官から、尖閣諸島は日本の施政下にある領域であり、日米安全保障条約第5条の適用範囲であること、米国は尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する旨を表明した。稲田防衛大臣から、南シナ海における米軍による取組は、法に基づく海洋秩序の維持に資するものであり、支持する旨述べ、両閣僚は、能力構築支援などを通して、南シナ海への関与を強化していくことで一致した。また、日米韓を始めとする3か国間の防衛協力や、多国間の枠組みによる協力を強化していくことで一致した。

イ 日米同盟の抑止力・対処力の強化

稲田防衛大臣から、地域の平和と安定のため、わが国として積極的に役割を果たしていくこと、そのために防衛力を強化し、同盟におけるわが国の役割を拡大していく旨述べた。マティス米国防長官から、米国は日本の防衛に引き続きコミットしていること、アジア太平洋地域は米国の優先地域であり、同地域へのコミットメントを強化していく旨強調した。両閣僚は、米国の拡大抑止の揺るぎないコミットメントを含む日米同盟の重要性を確認し、ガイドラインを踏まえつつ日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する必要があるとの認識で一致した。

ウ 沖縄・米軍再編

両閣僚は、在日米軍再編の着実な進展に向け、日米で連携していくことで一致した。普天間飛行場の辺野古移設が唯一の解決策であるとの立場を共有し、引き続き緊密に協力することで一致した。また、稲田防衛大臣から、沖縄の負担軽減について協力を要請し、両閣僚は、在日米軍の安定的な駐留を確保するため、協力することで一致した。

日米防衛相共同記者会見を行うマティス米国防長官(写真左)と稲田防衛大臣(写真右)

日米防衛相共同記者会見を行うマティス米国防長官(写真左)と
稲田防衛大臣(写真右)

(4)日米首脳会談(17(平成29)年2月10日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、ワシントンDCにおいて、トランプ米大統領との間で日米首脳会談を実施した。

両首脳は、日米同盟の絆を一層強固にするとともに、アジア太平洋地域と世界の平和と繁栄のために、日米両国で主導的役割を果たしていくことを確認した。

両首脳は、北朝鮮の核・ミサイル開発や東シナ海・南シナ海における一方的な現状変更の試みを含め、一層厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境について議論し、懸念を共有するとともに、こうした状況において、在日米軍の存在が重要であり、日米同盟を不断に強化していく必要があること、さらに、日米同盟を基軸として、同盟国・有志国との間で重層的な協力関係を強化し、同盟ネットワークを構築していくことが重要であるとの認識を共有した。

同日に発出した共同声明では、両首脳は、アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増す中で、同地域における平和、繁栄及び自由の礎である日米同盟の取組を一層強化する強い決意を確認した。特に、①拡大抑止へのコミットメントへの具体的な言及や、②日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用、③普天間飛行場の辺野古移設が唯一の解決策であることを文書で確認した。

参照資料27(共同声明(仮訳)(平成29年2月10日))

また、両首脳は、17(同29)年2月11日、北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、フロリダ州パームビーチにおいて日米共同記者発表を行った。その際、安倍内閣総理大臣は、「トランプ大統領との首脳会談において、米国は常に100%日本とともにあるということを明言された。そして、その意思を示すために、今、私の隣に立っておられる。私とトランプ大統領は日米同盟を更に緊密化し、強化していくことで完全に一致をした」旨述べ、トランプ米大統領は、「米国は、偉大なる同盟国である日本を100%支えるということを皆さんに理解し、十分に知ってもらいたい」旨述べた。

(5)ペンス米副大統領の安倍内閣総理大臣表敬(17(平成29)年4月18日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、ペンス米副大統領による表敬を受けた。

安倍内閣総理大臣とペンス米副大統領は、挑発行動を続ける北朝鮮を中心とする地域の諸課題について意見交換を行い、地域の平和と安定に向けて、日米双方が安全保障及び経済について緊密に連携し、日米同盟を強化することが不可欠であるとの認識を共有した。

北朝鮮をめぐる問題について、両者は、北朝鮮が新たな段階の脅威となっているとの認識を共有し、北朝鮮問題への対処に当たっては日米の緊密な連携が重要であること、中国の役割が重要であり、更に大きな役割を果たすよう働きかける必要があることで一致した。さらに、安倍内閣総理大臣から拉致問題は安倍政権の最重要課題である旨述べ、両者は、早期解決に向けて日米で引き続き連携していくことで一致した。

また、日米安保関係について、両者は、日米「2+2」の早期開催で一致するとともに、沖縄の負担軽減に共に取り組んでいくことで一致した。

マイク・ペンス米副大統領(写真左)の表敬を受け、同氏と握手する安倍内閣総理大臣(写真右)(17(平成29)年4月)【内閣広報室提供】

マイク・ペンス米副大統領(写真左)の表敬を受け、同氏と握手する
安倍内閣総理大臣(写真右)(17(平成29)年4月)【内閣広報室提供】

(6) 日米首脳会談(17(平成29)年5月26日)(安全保障部分)

安倍内閣総理大臣は、イタリアのタオルミーナにおいて、トランプ米大統領との間で日米首脳会談を実施した。

両首脳は、北朝鮮問題に関して、今は対話ではなく圧力をかけていくことが必要であり、中国の役割が重要であること、韓国を始めとする関係諸国と連携しつつ、更なる制裁や国連安保理での緊密な連携を通じて北朝鮮に対する圧力を強化するために協力することが重要であることを確認した。さらに両首脳は、北朝鮮の脅威を抑止するため、日米は防衛態勢と能力の向上を図るべく具体的行動をとることで一致10した。また、安倍内閣総理大臣からは、地域の安全保障の観点からは、この地域における米軍の強力なプレゼンスが重要であり、米側の協力を期待している旨述べた。

北朝鮮以外の地域情勢については、安倍内閣総理大臣から、米国の抑止力が東南アジアを含む地域安定の鍵である旨述べ、南シナ海に関し、米海軍のプレゼンスの向上を評価し、「航行の自由」作戦を強く支持する旨述べた。また、両首脳は、東シナ海における日米間の緊密な連携を改めて確認した。

(7)日米防衛相会談(17(平成29)年6月3日)

稲田防衛大臣とマティス米国防長官は、シャングリラ会合の機会に日米防衛相会談を実施した。

ア 地域情勢

両閣僚は、北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射などは、日米両国と地域の平和と安定に対する明らかな挑発であり、断じて容認できないとの認識で一致した。稲田防衛大臣から、空母打撃群の派遣を含む米国による地域の平和及び安定への目に見えるコミットメントを高く評価するとともに、北朝鮮に対する圧力を強化していくことが重要である旨述べ、両閣僚は、日米に加え日米韓が緊密な連携を継続していくことが重要との認識で一致した。

両閣僚は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認し、東シナ海の平和と安定の確保や南シナ海への関与について、日米間の協力を深化させていくことを確認した。

イ 日米同盟の抑止力・対処力の強化

両閣僚は、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する必要があるとの認識で一致し、また、日本海で実施されている自衛隊と空母打撃群との共同訓練をこれに資するものとして歓迎した。両閣僚は、日米安全保障協議委員会(SCC)の早期開催に向け引き続き調整を進めることで一致した。

ウ 沖縄・米軍再編

両閣僚は、在日米軍再編計画を着実に進展させることで一致し、マティス米国防長官からは、引き続き、日米で緊密に協力していくことへのコミットメントが表明された。

普天間飛行場の一日も早い移設及び返還を実現するため、両閣僚は、辺野古への移設が唯一の解決策であるとの立場を共有し、引き続き緊密に協力することで一致した。また、稲田防衛大臣から、沖縄の負担軽減について協力を要請し、両閣僚は、在日米軍の安定的な駐留を確保するため協力することで一致した。

(8) 日米首脳電話会談(17(平成29年)1月28日、同年3月7日、同年4月6日、同年4月24日)

安倍内閣総理大臣とトランプ米大統領は、北朝鮮問題などの重要案件に関し、対面での会談に加え、累次の機会に電話会談を実施している。北朝鮮問題に関し、トランプ米大統領から、全ての選択肢がテーブルの上にあること、米国は同盟国である日本を100%支える旨が伝えられたほか、両首脳は中国の役割が重要であることや、日米韓で緊密に連携していくことで一致するなど、電話会談を通じ、緊密に連携し意思疎通を図っている。

8 I部2章6節4項脚注44参照

9 会談後の日米防衛相共同記者会見では、在日米軍駐留経費負担に関し、マティス米国防長官から、日本は、コストシェアリングについて、模範であり続けてきており、日米のコストシェアリングに関するアプローチは、他の国々がしたがうべき見本であると言える旨、発言があった。

10 「具体的行動」の一環となる取組としては、17(平成29)年6月に日本海などにおいて実施した海自・空自と米海軍との共同訓練(本章2節3項2(4)参照)及び同月より全国で実施している空自のPAC-3機動展開訓練(III部1章2節3項1(2)参照)がその一例として挙げられる。このうち、米海軍との共同訓練は、米軍からは、空母「カール・ヴィンソン」及び「ロナルド・レーガン」、F/A-18空母艦載機などが、自衛隊からは、海自護衛艦や空自F-15戦闘機などが参加した。この共同訓練を実施した結果として、日米の連携強化が図られ、その絆を示すことは、わが国の安全保障環境が厳しさを増している中で、日米同盟全体の抑止力・対処力を一層強化し、地域の安定化に向けたわが国の意思と高い能力を示す効果があり、「北朝鮮の脅威を抑止するため、日米は防衛態勢と能力の向上を図る」という趣旨に沿ったものである。