事態対処法は、武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念、基本的な方針(対処基本方針)として定めるべき事項、国・地方公共団体の責務などについて規定している。
参照図表II-3-2-4(武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処のための手続)
資料17(自衛隊の主な行動)
資料18(自衛官又は自衛隊の部隊に認められた武力行使及び武器使用に関する規定)
武力攻撃事態等又は存立危機事態に至ったときは、次の事項を定めた対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求める。また、対処基本方針が定められたときは、臨時に内閣に事態対策本部を設置して、対処措置の実施を推進する。
対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関は、武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処にあたり、法律の規定に基づき所要の措置を行う。
参照図表II-3-2-5(指定行政機関などが実施する措置)
事態対処法に定める国、地方公共団体などの責務は、参照のとおりである。
参照図表II-3-2-6(国、地方公共団体などの責務)
対処基本方針が定められたときは、内閣に、内閣総理大臣を事態対策本部長、国務大臣を事態対策副本部長又は事態対策本部員とする事態対策本部が設置される。
内閣総理大臣は、国民の生命、身体もしくは財産の保護、又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、総合調整に基づく所要の対処措置が行われないときは、関係する地方公共団体の長などに対し、その対処措置を行うべきことを指示することができる。
また、内閣総理大臣は、指示に基づく所要の対処措置が行われないときや、国民の生命、身体、財産の保護や武力攻撃の排除に支障があり、事態に照らし緊急を要する場合は、関係する地方公共団体の長などに通知したうえで、自ら又はその対処措置にかかわる事務を所掌する大臣を指揮し、その地方公共団体又は指定公共機関が行うべき対処措置を行い、又は行わせることができる。
政府は、国連憲章第51条などに従って、武力攻撃の排除にあたりわが国が講じた措置について、直ちに国連安保理に報告する。
事態対処法において、政府は、わが国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等及び存立危機事態以外の緊急事態14も、的確かつ迅速に対処する旨規定されている。
05(平成17)年3月、政府は、国民保護法15第32条に基づき、国民の保護に関する基本指針(「基本指針」)を策定した。この基本指針においては、武力攻撃事態の想定を、①着上陸侵攻、②ゲリラや特殊部隊による攻撃、③弾道ミサイル攻撃、④航空攻撃の4つの類型に整理し、その類型に応じた国民保護措置の実施にあたっての留意事項を定めている。
防衛省・自衛隊は、国民保護法及び基本指針に基づき、防衛省・防衛装備庁国民保護計画を策定している。この中で自衛隊は、武力攻撃事態においては、主たる任務である武力攻撃の排除を全力で実施するとともに、国民保護措置については、これに支障のない範囲で住民の避難・救難の支援や武力攻撃災害への対処を可能な限り実施するとしている。
武力攻撃事態等及び緊急対処事態において、自衛隊は、国民保護等派遣に基づく国民保護措置及び緊急対処保護措置として、住民の避難支援、避難住民などの救援、応急の復旧などを行うことができる。
この点、国民保護法は、わが国への直接攻撃や物理的な被害から、いかにして国民やその生活を守るかという視点に立って、そのために必要となる警報の発令、住民の避難や救援等の措置を定めるものである。存立危機事態であって警報の発令、住民の避難や救援が必要な状況とは、まさにわが国に対する武力攻撃が予測又は切迫している事態と評価される状況にほかならず、この場合は、併せて武力攻撃事態等と認定して、国民保護法に基づく措置を実施することとなる16。
参照図表II-3-2-7(国民保護等派遣のしくみ)
ア 国民保護訓練
武力攻撃事態等において国民保護措置を的確かつ迅速に実施するためには、国民保護措置の実施にかかわる連携要領について、平素から各省庁や地方公共団体などとの間で訓練を実施しておくことが重要である。
このため、防衛省・自衛隊は、関係省庁の協力のもと、地方公共団体などの参加を得て、国民保護訓練を主催しているほか、関係省庁や地方公共団体などが実施する国民保護訓練などにも積極的に参加・協力している。
参照資料19(国民保護にかかる国と地方公共団体との共同訓練参加状況(平成28年度))
石川県で実施された国民保護訓練において、
県職員と調整を行う陸自の隊員
イ 地方公共団体などとの平素からの連携
防衛省・自衛隊では、地方公共団体などと平素から緊密な連携を確保し、国民保護措置などを実効的なものとするため、陸自方面総監部及び自衛隊地方協力本部に連絡調整を担当する部署を配置している。
また、国民保護措置に関する施策を総合的に推進するため、都道府県や市町村に国民保護協議会が設置されており、自衛隊に所属する者や地方防衛局に所属する職員が委員に任命されている。
更に、地方公共団体は、退職自衛官を危機管理監などとして採用し、防衛省・自衛隊との連携や対処計画・訓練の企画・実施などに活用している。
14 緊急対処事態(武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態、又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態で、国家として緊急に対処することが必要なもの)を含む、武力攻撃事態等及び存立危機事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす事態
15 正式な法律の名称は、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」
16 存立危機事態であって、武力攻撃事態等には該当しない場合においては、国民保護法は適用されないが、生活関連物資の安定的な供給など、現行の様々な法令に基づき、国民生活の安定等のための措置を実施し、国民生活の保護に万全の対応をとることとなる。