北極圏の大部分を占める北極海には、ロシア、米国、カナダ、デンマークおよびノルウェーが面している8。
近年、海氷の減少にともない、北極海航路の利活用や資源開発の可能性が高まっていることから、北極海沿岸諸国は、資源開発や航路利用などの権益確保に向けた動きを活発化させている。一方、海洋法に基づく海洋境界の画定や大陸棚の延長をめぐり沿岸諸国間で未解決の問題があり、ロシアをはじめとした北極圏国の一部は、自国の権益確保や領域の防衛を目的に、軍事力の新たな配置などを進める動きも示している。また、北極圏は、従来から、戦略核戦力の展開および通過ルートであることに加えて、海氷の減少により、海上艦艇の航行が可能な期間および海域が拡大しており、将来的には、海上戦力の展開や、軍の海上輸送力などを用いた軍事力の機動展開に使用されることが考えられ、その戦略的重要性が高まっている。