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<VOICE>フィリピン台風にともなう国際緊急援助活動に参加して

海自第4護衛隊群(広島県 呉市)
第4護衛隊群司令 海将補
佐藤 壽紀(さとう ひさのり)

98(平成10)年のホンジュラスにおける国際緊急援助活動以降、自衛隊はこれまで13回の国際緊急援助活動に従事してきましたが、フィリピンに派遣された国際緊急援助統合任務部隊は、過去最大規模であり、統合任務部隊指揮官のもとに、陸自が主体の医療・航空援助隊、海自が主体の海上派遣部隊、空自が主体の空輸隊が編成され、海外での任務を目的とした初めての統合任務部隊として被災地において救援活動を実施しました。

被災地においては、医療・航空援助隊の医療チームが各所を巡回して医療活動などを行い、空輸隊は、救援物資の輸送と一時避難する被災民の輸送を実施し、海上派遣部隊は、医療・航空援助隊の洋上の活動拠点として活動しました。指揮官として派遣される際には、東日本大震災でいち早く援助隊を派遣してくれたフィリピンに対して恩返しをしたいとの気持ちを込めて、被災地の状況と支援のニーズをきめ細やかに把握することを最優先し、効率的な支援活動ができるよう留意しました。

また、今回の活動では、被災国であるフィリピンだけでなく、国連や米国、英国、オーストラリアなどの部隊と協力する場面も多く、今回の活動がフィリピンの復旧だけでなく、わが国と各国との関係強化にも貢献するものであると肌で感じることができました。

意見交換を実施中の筆者の画像

日米指揮官意見交換を実施中の筆者(中央左)

第6後方支援連隊(山形県 東根市)
国際緊急援助隊医療隊 運用訓練幹部 2等陸尉
大城 道乃(おおしろ ゆきの)

私は、フィリピン国際緊急援助隊医療隊の衛生運用幹部として、現地医療機関などとの連絡調整業務を担当しました。情報が錯綜する現場では、正確な医療ニーズを把握するとともに、早い段階から多国間で調整することが重要であると実感しました。

また、現地においては日本の懇切丁寧な診療に対する住民からの信頼が厚く、日本ならではのきめ細やかな支援について高い評価を得たことは、医療隊の一員として参加した私にとって本当にうれしく、誇りに思いました。このように医療をはじめ、高い災害救援能力を有する自衛隊が国際緊急援助活動に参加し、多くの国の方々を支援することができるという意義はとても大きいと思います。

看護師達と筆者の画像

フィリピン保健省看護師達と筆者(右端)

空自小牧基地(愛知県 小牧市)
第1輸送航空隊 飛行群 第401飛行隊 1等空尉
望月 寛子(もちづき ひろこ)

第401飛行隊は、13(平成25)年11月15日から同年12月20日の間、フィリピンの台風にともなう国際緊急援助活動にC-130H輸送機を2機派遣しました。私は副操縦士として本活動に参加し、多国間調整所で日本に割り当てられた支援物資と被災民などをマニラと被災地の間で空輸する任務を行いました。航空機から見る被災地は台風によってなぎ倒された樹木や倒壊した家屋が広がり、連日の任務にもかかわらず空港では空輸便を待つ被災民の長蛇の列ができていました。また、貨物の搭載卸下(しゃか)に米・オーストラリア・フィリピン軍の支援を受けるなど各国と協力して行った本活動を通じ、大規模災害発生時の航空輸送の重要性とアジア太平洋地域における各国からの日本への期待を感じました。現地では、各国の女性軍人などとも活動をともにする機会があり、女性の国際貢献活動における役割とその活躍を実感しました。

支援員と筆者の画像

現地の支援員と筆者(中央)

英海軍連絡幹部 海軍少佐
ジョー・カーリン(Lieutenant Commander Joe Currin)

海自護衛艦「いせ」と英海軍空母「イラストリアス」は、13(平成25)年のフィリピンにおける災害救援活動に際して、連絡幹部の相互派遣を行いました。私は、英海軍の代表として「いせ」に乗艦し、自衛隊・統合任務部隊の方々と1週間をともに過ごしたことは名誉なことでした。私は「いせ」がフィリピン東部で数日間の輸送支援を終えた11月27日に乗艦しました。「イラストリアス」はフィリピン西部パナイ島沖に所在していましたが、両艦の活動にかかる目的や取組は共通しており、台風ハイヤンの被災民に支援を行うことが「イラストリアス」全乗員と自衛隊・統合任務部隊の最大の焦点でした。統合任務部隊の日々の会議では、自衛隊の組織やオペレーションの要領に関する多くの点が英国と類似していることを目の当たりにしたことで、伝統と儀礼を海自が重視しており、英海軍と非常に似ていることが明確にわかりました。「いせ」乗艦中は、救援活動を行う自衛隊員とともに楽しく充実した日々を過ごすことができました。島嶼国家として私たち英海軍および海自は多くの共通点を有しています。今般の連絡幹部交換を通じて、気質やドクトリン(教義)に関する我々の共通点をさらに深く共有することができました。

ブリーフィングの画像

ブリーフィングを行う筆者(中央)