海洋の航行にはどのような国際的なルールがあるのですか?
まず、国連海洋法条約は、公海をすべての国に開放するとしています。これを「公海の自由」の原則といいます。この原則には「航行の自由」と「上空飛行の自由」が含まれており、すべての国の船舶や航空機は公海上を基本的には、自由に航行、飛行することができます。これらは国際法により認められている権利であり、この権利を侵害することは許されません。
また、排他的経済水域(EEZ)においても「航行の自由」や「上空飛行の自由」が認められています。
次に領海内の航行に関してですが、すべての国の船舶は、沿岸国の平和や秩序、安全を害しない限り、原則として他国の領海を継続的かつ迅速に通航することができます。こうした権利を船舶の「無害通航権」といいます。沿岸国は外国船舶によるこの「無害通航」を原則として妨害してはならないとされています。一方で、領空については、他国の航空機には無害通航権のような権利は認められておらず、領空の飛行には領域国の同意が必要とされています。
外国の船舶が「無害通航」ではない航行を行った場合は、どうするのですか?
国連海洋法条約は、沿岸国に対する武力の行使はもちろん、たとえば、軍事情報の収集や軍事訓練、さらには漁獲活動や測量活動もこの「無害通航」とは認めていません。沿岸国はこうした無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができます。
その際、他国の船舶が日本の法令に違反していれば、停船や立入検査などの措置をとります。たとえば、他国の船舶が日本の領海内で意図的に徘徊(はいかい)を続けるような場合には、「領海等における外国船舶の航行に関する法律」の規定に違反するとして、その船舶を領海から強制的に退去させることができます。
ただし、相手の船舶が外国の軍艦や非商業的目的の政府船舶である場合には、国際法上、一般に、外国の管轄権からの免除を有しており、沿岸国は立入検査や拿捕(だほ)のような措置をとることはできないとされています。