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<解説>防空識別圏(ADIZ)について

防衛省では、わが国周辺を飛行する航空機をレーダーで識別し、対領空侵犯措置を有効に実施するために、わが国周辺を囲むような形で、防空識別圏(ADIZ(アディズ):Air Defense Identification Zone)という空域を設定している。一般に、ADIZは、各国が防空上の観点から国内措置として設定しているものであり、領空・領土の限界や範囲を定める性格のものではない。

わが国のADIZは、周辺を飛行している航空機が、どこの国籍なのか、領空侵犯のおそれがあるかといった識別などを行うための空域であり、緊急発進(スクランブル)を実施するかどうかを判断するためのものである。たとえば、国籍不明の戦闘機などがADIZを経て領空に向かってくるような場合には、「領空侵犯のおそれがある」として、空自の戦闘機が緊急発進することとなる。一方で、ADIZを単に通過するだけの航空機は、通常、緊急発進の対象にはならない。

したがって、わが国においては、 ADIZ内を飛行する航空機が全て緊急発進の対象になるわけではない。たとえば、民間航空機については、あらかじめ国際基準に基づき航空当局に飛行計画(フライト・プラン)が提出されているため、外国の航空機がADIZ内を飛行する場合においても、計画どおりの航路を管制されながら飛行する限り、緊急発進などの対応をとることはない。このように、わが国のADIZは国際法上認められた、公海上空における飛行の自由の原則を妨げるものではない。