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第IV部 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

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第1章 自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議

一層厳しさを増す安全保障環境の中、わが国の平和と独立を守るため、身をもって責務の完遂に務めている自衛官の処遇改善、勤務環境の改善、そして新たな生涯設計の確立が喫緊の課題となっている。このため、2024年10月、石破内閣総理大臣を議長とし、林官房長官、中谷防衛大臣をはじめ、幅広い関係閣僚を構成員とする「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」が設置された。同月、第一回会議を開催し、その場で、議長より関係省庁が連携して取り組むべき方策の方向性と、2025年度予算に計上すべき項目を年内に取りまとめるよう指示がなされた。これを受け、4回の会議を経て、同年12月、「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」(以下、「基本方針」という。)が取りまとめられた。今後もこの基本方針に基づき、自衛官が、安んじて国防という国家にとって極めて枢要な任務に専念できるよう、関係閣僚が一致して万全の体制を構築していくこととされている。

内閣府の実施する自衛隊・防衛問題に関する世論調査によれば、国民の9割は、自衛隊に好意的な印象を持っている。これは自衛隊創設以降70年の間、災害派遣など、様々な任務に真摯にあたってきた自衛官の地道な努力の賜物と言えるであろう。しかし、自衛隊に対する好意的な印象にもかかわらず、自衛官の募集は困難な状況にある。2023年度は約2万人募集し、約1万人が採用され、2024年度は約1.5万人募集し、約1万人が採用された。自衛官の定員割れが続き、充足率1は約90%となっている。戦後最も厳しい安全保障環境に対応した防衛力の抜本的強化のためには、その担い手である自衛官の確保が至上命題であり、このまま抜本的な策を講じなければ、さらに状況は悪化するばかりである。

国の防衛という厳しい任務を担うがゆえに、平素から、自衛官は厳しい環境に耐え続けることが当たり前であるという組織文化では、人材確保はおぼつかない。個々人のやりがいと働きやすさを大切にし、働きがいを向上させる組織にしていく必要がある。防衛省・自衛隊は、強い危機感をもって取り組んでいく必要がある。

自衛官は、身をもってわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務の特殊性から、様々な負担や制約から逃れることはできない。そのため、自衛官は、その特殊性に見合った処遇が与えられる必要があり、特別職の国家公務員として、一般職の国家公務員とは異なる人事管理制度や給与制度を設けてきたところである。引き続きこうした特殊性が適切に評価され、自衛官という職業を選択したことについて、誇りと名誉を感じることができる処遇を確立していくことが重要である。さらに、多くの自衛官が56歳で退職する中、再就職や再々就職・収入に不安を感じさせないようにすることが自衛官の確保にとっても重要な課題である。自衛官としての知識・技能・経験を活かした再就職先の拡充や、安んじて生活できる収入の確保などを通じ、自衛官の将来不安の払しょくに取り組む必要がある。

本基本方針においては、こうした問題意識のもと、自衛官の処遇・勤務環境の改善や新たな生涯設計について、次のとおり具体的な方策を進めていくことが決定された。

参照資料63 自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針

動画アイコンQRコード資料:自衛官の処遇改善に向けた取組(関係閣僚会議)
URL:https://www.mod.go.jp/j/profile/treatment/index.html

第1節 自衛官の処遇改善

防衛力の抜本的強化を真に実現するためには、優れた自衛官を安定的に確保し続ける必要がある。このためには、これからの防衛力の担い手となる世代が、安心して厳しい任務に従事でき、自衛官という職業を選択したことに誇りと名誉を得ることができるような、令和の時代にふさわしい処遇を確立する必要がある。この状況を踏まえ、過去に例のない30を超える手当などの新設・金額の引上げを含めた、任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与面の処遇改善、士をはじめとした幅広い層の人材確保のための処遇改善、予備自衛官等の処遇改善、功績に相応しい叙勲などの在り方の検討といった施策を講ずることとしている。

1 自衛官の定員に対してどの程度の人員(現員)を充足するかを示す割合