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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

3 「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の内容

97ガイドラインに代わるガイドラインは、日米両国の役割及び任務についての一般的な大枠及び政策的な方向性を更新するとともに、同盟を現代に適合したものとし、また、平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力及び対処力を強化することで、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想を明らかにするものである。

参照資料24(日米防衛協力のための指針(平成27年4月27日)(仮訳))
図表III-2-1-2(日米防衛協力のための指針の概要)

図表III-2-1-2 日米防衛協力のための指針の概要(1)

図表III-2-1-2 日米防衛協力のための指針の概要(2)

1 防衛協力とガイドラインの目的

ガイドラインは、安全保障及び防衛協力の強調事項を新たに明記した。また、ガイドラインの目的は、97ガイドラインの考え方を維持している。

  • 平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和及び安全を確保するとともに、アジア太平洋及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、日米両国間の安全保障及び防衛協力は、次の事項を強調する。
    • 切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応
    • 日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果
    • 政府一体となっての同盟としての取組
    • 地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力
    • 日米同盟のグローバルな性質
  • 日米両政府は、その国家安全保障政策に基づき、各自の防衛態勢を維持する。米国は、引き続き、核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供し、また、アジア太平洋地域に即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、戦力を迅速に増強する能力を維持する。
  • ガイドラインは、日米両国の役割及び任務並びに協力及び調整のあり方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示す。
  • ガイドラインは、日米同盟の重要性についての国内外の理解を促進する。
2 基本的な前提及び考え方

基本的な前提及び考え方については、次のとおりであり、97ガイドラインのものを維持している。

  • 日米安保条約及びその関連取極に基づく権利及び義務は変更されない。
  • ガイドラインのもとでの行動及び活動は国際法に合致するものである。
  • 日本及び米国により行われる全ての行動及び活動は、各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる。日本の行動及び活動は、専守防衛、非核三原則などの日本の基本的な方針に従って行われる。
  • ガイドラインは、いずれの政府にも立法上、予算上、行政上又はその他の措置をとることを義務付けるものではなく、また、ガイドラインは、いずれの政府にも法的権利又は義務を生じさせるものではない。しかしながら、二国間協力のための実効的な態勢の構築がガイドラインの目標であることから、日米両政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策及び措置に適切な形で反映することが期待される。
3 同盟内の調整の強化
(1)同盟調整メカニズムの設置

15(平成27)年11月、日米両政府は、ガイドラインに基づき、日本の平和と安全に影響を与える状況や、その他の同盟としての対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に、切れ目のない形で実効的に対処することを目的として、同盟調整メカニズム(ACM:Alliance Coordination Mechanism)を設置した。

同メカニズムでは、図表III-2-1-3に示す構成に基づき、平時から緊急事態までのあらゆる段階における、自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を行い、適時の情報共有や共通の情勢認識の構築・維持を行う。

その特徴は、①平時から利用可能であること、②日本国内における大規模災害やアジア太平洋地域及びグローバルな協力でも活用が可能であること、③日米の関係機関の関与を確保した政府全体にわたる調整が可能であることであり、これらにより、日米両政府は、調整の必要が生じた場合に適切に即応できるようになった。例えば、国内で大規模災害が発生した場合においても、自衛隊及び米軍の活動にかかる政策面・運用面の様々な調整が必要になるが、同メカニズムを活用することにより、様々なレベルでの日米の関係機関の関与を得た調整を緊密かつ適切に実施することが可能になった。

同メカニズムの設置以降、例えば、平成28年(2016年)熊本地震、北朝鮮の弾道ミサイル発射や尖閣諸島周辺海空域における中国の活動などについて、日米間では、同メカニズムも活用しながら、緊密に連携している。

参照図表III-2-1-3(同盟調整メカニズム(ACM)の構成)

図表III-2-1-3 同盟調整メカニズム(ACM)の構成

(2)運用面の調整の強化

日米両政府は、ガイドラインに基づき、運用面の調整機能の併置の重要性を認識し、自衛隊及び米軍は、緊密な情報共有、円滑な調整及び国際的な活動を支援するための要員の交換を実施することとしている。

(3)共同計画策定メカニズムの設置

15(平成27)年11月、日米両政府は、ガイドラインに基づき、わが国の平和及び安全に関連する緊急事態に際して効果的な日米共同対処を可能とするため、平時において共同計画の策定をガイドラインにしたがって実施することを目的とし、共同計画策定メカニズム(BPM:Bilateral Planning Mechanism)を設置した。

同メカニズムは、共同計画の策定に際し、閣僚レベルからの指示・監督及び関係省庁の関与を確保するとともに、共同計画の策定に資する日米間の各種協力についての調整を実施する役割を果たすものであり、両政府は、同メカニズムを通じ、共同計画を策定していくこととしている。

参照図表III-2-1-4(共同計画策定メカニズム(BPM)の構成)

図表III-2-1-4 共同計画策定メカニズム(BPM)の構成

4 日米防衛協力の強化

ガイドラインでは、日本の平和及び安全の切れ目のない確保のため、平時から、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動、防空及びミサイル防衛、海洋安全保障、訓練・演習、アセットの防護、後方支援などの措置をとることや、日本における大規模災害への対処などにおいて日米が協力することなどが明示されている。また、地域の及びグローバルな平和と安全のため、国際的な活動において日米が協力することや三か国及び多国間協力を推進・強化すること、宇宙及びサイバー空間に関して協力すること、日米協力の実効性をさらに向上させるための基盤として防衛装備・技術協力や情報協力・情報保全などの日米共同の取組を発展・強化することなどが明示されている。

その項目の多くは、新防衛大綱においても「日米同盟の抑止力及び対処力の強化」及び「幅広い分野における協力の強化・拡大」として盛り込まれている。

参照本章2節(日米同盟の抑止力及び対処力の強化)
本章3節(幅広い分野における協力の強化・拡大)