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<解説>北朝鮮の弾道ミサイル開発の経緯

北朝鮮は1970年代から弾道ミサイルの開発に着手したとみられ、現在、数種類の弾道ミサイルを保有・開発中ですが、開発の系譜としては、旧ソ連製のスカッドBを基にしたもの(スカッド系)と、同じく旧ソ連製の潜水艦発射弾道ミサイルSS-N-6を基にしたもの(ムスダン系)の2つに分かれると考えられます。

北朝鮮は、射程約300kmで液体燃料推進方式の短距離弾道ミサイルである旧ソ連製スカッドBを1981年にエジプトから輸入したとされており、これを基に開発したと考えられるのが、スカッドC・ER、ノドン、テポドン1、テポドン2及びその派生型です。北朝鮮は、1980年代半ばまでに、スカッドBのコピー品を製造できるようになったと考えられ、1980年代半ば以降、スカッドBの推進剤タンクを大型化し射程を約500kmまで延長したスカッドCを、スカッドBと合わせて配備したものとみられます。また、スカッドCの胴体部分の延長や弾頭重量の軽量化などにより、射程を約1,000kmまでに延長したスカッドERについても配備済みとみられます。ノドンは、スカッドのエアフレーム及びエンジンを大型化した、射程約1,300キロに達するとみられる準中距離弾道ミサイル(MRBM)であり、既に配備済みであるとみられます。固定式発射台から発射する長射程の弾道ミサイルであるテポドン1、テポドン2及びその派生型は、スカッド及びノドンの技術を基に開発されたとみられ、テポドン2については、1段目にノドンの技術を利用したエンジン4基を、2段目に同様のエンジン1基をそれぞれ使用していると推定されます。(テポドン2派生型は3段式で、3段目にもエンジンを搭載しています。)

北朝鮮の弾道ミサイル開発の基となった、もう一つの弾道ミサイルは、1990年代初期に北朝鮮がソ連から入手した、射程約2,500~3000kmで液体燃料推進方式の旧ソ連製潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)SS-N-6で、中距離弾道ミサイル(IRBM)ムスダン及びSLBM開発の基になったと考えられます。

現在の開発状況の詳細は不明ですが、北朝鮮は、ムスダンの技術を基に大陸間弾道ミサイル(ICBM)KN-08/14を開発中と指摘されています。また、テポドン2の開発を通じて得られた、長射程化のための弾道ミサイルの多段化やエンジンのクラスター化の技術を、KN-08/14の開発に利用している可能性があります。さらに、SLBMや17(平成29)年2月12日及び5月21日に発射したSLBMを地上発射型に改良したとみられる新型弾道ミサイルについては、固体燃料推進方式の短距離弾道ミサイル(SRBM)であるトクサの開発を通じて得られた、固体燃料技術を利用している可能性があります。

弾道ミサイルの図