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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

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第3章 防衛力を支える人的基盤と女性隊員の活躍など

第1節 防衛力を支える人的基盤

防衛省・自衛隊が、その防衛力を最大限に機能させるためには、それを下支えする人的基盤をより充実・強化させることが極めて重要である。

1 募集・採用

1 募集

防衛省・自衛隊が各種任務を適切に遂行するためには、質の高い人材を確保することが必要不可欠である。防衛省・自衛隊に対する国民の期待が高まる一方で、社会の少子化・高学歴化の進展のほか、近年の好調な景気・雇用状況などにより、自衛官の募集環境は、厳しい状況にある。このような状況において、防衛省・自衛隊においては、募集対象者などに対して、自衛隊の任務や役割、職務の内容、勤務条件を丁寧に説明し、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を募る必要がある。

参照図表III-3-1-1(募集対象人口の推移)

図表III-3-1-1 募集対象人口の推移

このため、防衛省・自衛隊では、学校説明会などに加え、全国50か所に自衛隊地方協力本部を置き、学校関係者の理解と募集相談員などの協力を得ながら、志願者個々のニーズに対応できるようにしている。また、地方公共団体は、募集期間などの告示や広報宣伝など、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行っており、防衛省はその経費を地方公共団体に配分している。

2 採用
(1)自衛官

自衛官は、個人の自由意志に基づく志願制度のもと、様々な区分に応じて採用される。

参照図表III-3-1-2(自衛官の任用制度の概要)

図表III-3-1-2 自衛官の任用制度の概要

自衛官は、その職務の特殊性から、自衛隊の精強性を保つため、「若年定年制」や「任期制」など、一般の公務員とは異なる人事管理1を行っている。

採用後は、各自衛隊の教育部隊や学校で基本的な教育訓練を受けた後、希望や適性などに応じて職種が決定され、全国の部隊などで勤務する。

参照資料68(自衛官の定員及び現員)
資料69(自衛官などの応募及び採用状況(平成28年度))
図表III-3-1-3(自衛官の階級と定年年齢)

図表III-3-1-3 自衛官の階級と定年年齢

自衛官への任官に向け防衛大学校を卒業する学生

自衛官への任官に向け防衛大学校を卒業する学生

(2)予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補

有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を早急に満たさなければならない。この所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官補の3つの制度2を設けている。

参照図表III-3-1-4(予備自衛官などの制度の概要)

図表III-3-1-4 予備自衛官などの制度の概要

予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として任務につく。即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、第一線部隊の一員として、現職自衛官とともに任務につく。また、予備自衛官補は、自衛官未経験者などから採用され、教育訓練を修了した後、予備自衛官として任用される。

災害招集命令など3を受けた予備自衛官及び即応予備自衛官が自衛官として勤務するのは、招集命令書の交付から5日後(予備自衛官の防衛招集は10日後)以降とされていたが、16(平成28)年4月に発生した熊本地震における即応予備自衛官の招集実績4を踏まえ、自衛隊の任務遂行の円滑化を図るため、予備自衛官などに異議がないときは、その日数を短縮することができるよう、同年8月に自衛隊法施行令の一部を改正した。

給水支援活動を実施する即応予備自衛官

給水支援活動を実施する即応予備自衛官

予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などについているため、定期的な訓練などには仕事のスケジュールを調整するなどして参加する必要がある。したがって、これらの制度を円滑に運用するためには、予備自衛官などを雇用する企業の理解と協力が不可欠である。

このため防衛省は、年間30日の訓練が求められる即応予備自衛官が、安心して訓練などに参加できるよう必要な措置を行っている雇用企業などに対し、その負担を考慮し、「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。また、雇用する予備自衛官などが訓練などに参加しやすい環境作りに努めている事業所に表示証を交付している5。さらに、予備自衛官などの雇用主から、訓練招集の予定期間や実運用のために予備自衛官などが招集され自衛官となる予定期間などの情報を求められた場合に、防衛省・自衛隊から当該情報を提供する枠組みを整備6するなど、予備自衛官などを雇用する企業の理解と協力を得るための施策を実施している。

また、割愛7により民間部門に再就職する航空機操縦士を予備自衛官として任用するなど、幅広い分野で予備自衛官の活用を進めている。

(3)事務官、技官、教官など

防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、約2万1,000人の事務官、技官、教官などが隊員8として勤務している。防衛省では、主に、人事院が行う国家公務員採用総合職試験及び国家公務員採用一般職試験、防衛省が行う防衛省専門職員採用試験の合格者から採用を行っている。採用後は、共通の研修を受けたうえで、様々な分野で業務を行っている。

事務官は、本省及び防衛装備庁の内部部局などでの防衛全般に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・研究、全国各地の部隊や地方防衛局などでの行政事務に従事している。

技官は、本省内部部局、防衛装備庁、全国各地の部隊や地方防衛局などで、各種の防衛施設(司令部庁舎、滑走路、弾薬庫など)の建設工事、様々な装備品の研究開発・効率的な調達・維持・整備、隊員のメンタルヘルスケアなどに従事している。

教官は、防衛研究所や防衛大学校、防衛医科大学校などで、防衛に関する高度な研究や隊員に対する質の高い教育を行っている。

参照資料70(防衛省職員の内訳)

1 国家公務員法第2条に定められた特別職の国家公務員として位置づけ

2 諸外国においても、予備役制度を設けている。

3 予備自衛官に対する防衛招集命令、国民保護等招集命令及び災害招集命令並びに即応予備自衛官に対する防衛招集命令、国民保護等招集命令、治安招集命令及び災害等招集命令をいい、予備自衛官及び即応予備自衛官に対する訓練招集命令を含まない。

4 16(平成28)年4月に発生した熊本地震に際しては、史上2度目となる即応予備自衛官の招集を行い、162名の即応予備自衛官が生活支援活動等に従事した。その際、招集命令書を交付された即応予備自衛官のうち、出頭すべき日より前に部隊に到着した者が相当数に上った。

5 予備自衛官等協力事業所表示制度は平成27(2015)年度に導入し、同年度は地方協力本部長による認定を実施し、表示証を交付した。平成28(2016)年度は、防衛大臣による認定を実施した。認定された事業所は、防衛省及び地方協力本部のホームページでも紹介している。

6 情報を提供するための枠組みの整備を盛り込んだ防衛省設置法等の一部を改正する法律案が第193回通常国会において成立し(平成29年法律第42号)、現在、省令などを整備中(17(平成29)年9月1日施行予定)

7 自衛隊操縦士の割愛は、最前線で活躍する若手の操縦士が民間航空会社などへ無秩序に流出することを防止するとともに、一定年齢以上の操縦士を民間航空会社などで活用する制度であり、わが国の航空業界などの発展という観点からも意義がある。

8 防衛省の職員のうち、特別職の国家公務員を「自衛隊員」といい、自衛隊員には、自衛官のほか、事務官、技官、教官などが含まれる。