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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

5 地域内の協力

15(平成27)年12月31日に成立したASEAN共同体は、政治・安全保障共同体、経済共同体及び社会・文化共同体の3つの共同体による協力を柱に構成されている。このうち、政治・安全保障共同体(APSC:ASEAN Political-Security Community)は、これまでのASEANによる取組で積み上げられてきた政治・安全保障分野の協力を土台とし、民主的かつ調和的な環境下での平和的な生存確保を目標とするとの理念が掲げられている。また、「APSCブループリント2025」では、①ルールに基づく人間志向・人間中心の共同体、②平和、安全かつ安定した地域、③ダイナミックで外交的な地域におけるASEAN中心性、④ASEANの組織的な能力及びプレゼンスの強化、との4点の特徴が挙げられている。

ASEAN各国は、これまでの地域の多国間安全保障の枠組みとしてもASEANの活用を図っており、安全保障問題に関する対話の場であるASEAN地域フォーラム(ARF)やASEAN国防相会議(ADMM)などを開催しているほか、軍事人道支援・災害救助机上演習(AHR:ASEAN Militaries’ Humanitarian Assistance and Disaster Relief Table-Top Exercise)を行うなど、地域の安全保障環境の向上や信頼醸成に努めてきた。また、ASEANは域外国との関係拡大も重視し、ADMMにわが国を含む域外8か国を加えた拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)47が開催されるとともに、人道支援・災害救援演習などが実施されている48今後は、ASEAN政治・安全保障共同体の理念及び構想に基づき、対話や人道支援・災害救助演習、域外国との関係拡大などの取組を一層発展させていくものと見られる。

47 ADMMプラスの枠組みのほか、米国・ASEAN、中国・ASEAN、ロシア・ASEAN及び日本・ASEAN間で、国防相会談が行われており、14(平成26)年4月には、米ASEAN国防相会談が初めて米国において開催された。

48 15(平成27)年5月には、4回目となるARF災害救援実動演習がマレーシアにおいて実施された。同演習には、共催国のマレーシア及び中国のほか、わが国や米国、豪州及びASEAN諸国を含むARFメンバー国から計約2,000人以上が参加した。