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資料7 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案要綱

第一 目的

この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの(以下「国際平和共同対処事態」という。)に際し、当該活動を行う諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とすること。

(第一条関係)

第二 基本原則

一 政府は、国際平和共同対処事態に際し、この法律に基づく協力支援活動若しくは捜索救助活動又は重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律第二条に規定する船舶検査活動(国際平和共同対処事態に際して実施するものに限る。第四の二の5において単に「船舶検査活動」という。)(以下「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、国際社会の平和及び安全の確保に資するものとすること。

(第二条第一項関係)

二 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならないものとすること。(第二条第二項関係)

三 協力支援活動及び捜索救助活動は、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われている現場では実施しないものとすること。ただし、第八の六の規定により行われる捜索救助活動については、この限りでないものとすること。

(第二条第三項関係)

四 外国の領域における対応措置については、当該対応措置が行われることについて当該外国(国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従って当該外国において施政を行う機関がある場合にあっては、当該機関)の同意がある場合に限り実施するものとすること。(第二条第四項関係)

五 内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第四の一に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督するものとすること。(第二条第五項関係)

六 関係行政機関の長は、第一の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、防衛大臣に協力するものとすること。

(第二条第六項関係)

第三 定義等

一 この法律において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによるものとすること。(第三条第一項関係)

1 諸外国の軍隊等 国際社会の平和及び安全を脅かす事態に関し、次のいずれかの国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在する場合において、当該事態に対処するための活動を行う外国の軍隊その他これに類する組織(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律第三条第一号に規定する国際連合平和維持活動、同条第二号に規定する国際連携平和安全活動又は同条第三号に規定する人道的な国際救援活動を行うもの及び重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律第三条第一項第一号に規定する合衆国軍隊等を除く。)をいう。

(一)当該外国が当該活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、又は認める決議

(二)(一)に掲げるもののほか、当該事態が平和に対する脅威又は平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国際連合加盟国の取組を求める決議

2 協力支援活動 諸外国の軍隊等に対する物品及び役務の提供であって、我が国が実施するものをいう。

3 捜索救助活動 諸外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う活動(救助した者の輸送を含む。)であって、我が国が実施するものをいう。

二 協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(三に規定するものを除く。)は、補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務並びに建設とすること。なお、物品の提供には、武器の提供を含まないものとすること。(第三条第二項関係)

三 捜索救助活動は、自衛隊の部隊等(自衛隊法第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)が実施するものとすること。この場合において、捜索救助活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、当該活動に相当する活動を行う諸外国の軍隊等の部隊に対して協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供は、補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、宿泊並びに消毒とすること。なお、物品の提供には、武器の提供を含まないものとすること。

(第三条第三項関係)

第四 基本計画

一 内閣総理大臣は、国際平和共同対処事態に際し、対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該対応措置を実施すること及び当該対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならないものとすること。(第四条第一項関係)

二 基本計画に定める事項は、次のとおりとするものとすること。(第四条第二項関係)

1 国際平和共同対処事態に関する次に掲げる事項

(一)事態の経緯並びに国際社会の平和及び安全に与える影響

(二)国際社会の取組の状況

(三)我が国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由

2 1に掲げるもののほか、対応措置の実施に関する基本的な方針

3 第三の二の協力支援活動を実施する場合における次に掲げる事項

(一)当該協力支援活動に係る基本的事項

(二)当該協力支援活動の種類及び内容

(三)当該協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

(四)当該協力支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該協力支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

(五)自衛隊がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達して諸外国の軍隊等に無償又は時価よりも低い対価で譲渡する場合には、その実施に係る重要事項

(六)その他当該協力支援活動の実施に関する重要事項

4 捜索救助活動を実施する場合における次に掲げる事項

(一)当該捜索救助活動に係る基本的事項

(二)当該捜索救助活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

(三)当該捜索救助活動の実施に伴う第三の三の協力支援活動の実施に関する重要事項(当該協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項を含む。)

(四)当該捜索救助活動又はその実施に伴う第三の三の協力支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、これらの活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

(五)その他当該捜索救助活動の実施に関する重要事項

5 船舶検査活動を実施する場合における重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律第四条第二項に規定する事項

6 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項

三 協力支援活動又は捜索救助活動を外国の領域で実施する場合には、当該外国(第二の四に規定する機関がある場合にあっては、当該機関)と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとすること。(第四条第三項関係)

四 基本計画の変更については、一及び三と同様とすること。
(第四条第四項関係)

第五 国会への報告

内閣総理大臣は、基本計画の決定又は変更があったときはその内容を、基本計画に定める対応措置が終了したときはその結果を、遅滞なく、国会に報告しなければならないものとすること。
(第五条関係)

第六 国会の承認

一 内閣総理大臣は、対応措置の実施前に、当該対応措置を実施することにつき、基本計画を添えて国会の承認を得なければならないものとすること。(第六条第一項関係)

二 一の規定により内閣総理大臣から国会の承認を求められた場合には、先議の議院にあっては内閣総理大臣が国会の承認を求めた後国会の休会中の期間を除いて七日以内に、後議の議院にあっては先議の議院から議案の送付があった後国会の休会中の期間を除いて七日以内に、それぞれ議決するよう努めなければならないものとすること。(第六条第二項関係)

三 内閣総理大臣は、対応措置について、一の規定による国会の承認を得た日から二年を経過する日を超えて引き続き当該対応措置を行おうとするときは、当該日の三十日前の日から当該日までの間に、当該対応措置を引き続き行うことにつき、基本計画及びその時までに行った対応措置の内容を記載した報告書を添えて国会に付議して、その承認を求めなければならないものとすること。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてその承認を求めなければならないものとすること。

(第六条第三項関係)

四 政府は、三の場合において不承認の議決があったときは、遅滞なく、当該対応措置を終了させなければならないものとすること。(第六条第四項関係)

五 国会の承認を得て対応措置を継続した後、更に二年を超えて当該対応措置を引き続き行おうとする場合については、三及び四と同様とすること。(第六条第五項関係)

第七 協力支援活動の実施

一 防衛大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、第三の二の協力支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとすること。(第七条第一項関係)

二 防衛大臣は、基本計画に従い、第三の二の協力支援活動としての自衛隊による役務の提供について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとすること。(第七条第二項関係)

三 防衛大臣は、二の実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該協力支援活動を実施する区域(以下第七において「実施区域」という。)を指定するものとすること。(第七条第三項関係)

四 防衛大臣は、実施区域の全部又は一部において、自衛隊の部隊等が第三の二の協力支援活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合又は外国の領域で実施する当該協力支援活動についての第二の四の同意が存在しなくなったと認める場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならないものとすること。
(第七条第四項関係)

五 第三の二の協力支援活動のうち我が国の領域外におけるものの実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該協力支援活動を実施している場所若しくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合若しくは付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合又は当該部隊等の安全を確保するため必要と認める場合には、当該協力支援活動の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避しつつ、四の規定による措置を待つものとすること。

(第七条第五項関係)

六 二の実施要項の変更(四の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)については、二と同様とすること。

(第七条第六項関係)

第八 捜索救助活動の実施等

一 防衛大臣は、基本計画に従い、捜索救助活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとすること。

(第八条第一項関係)

二 防衛大臣は、一の実施要項において、実施される必要のある捜索救助活動の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該捜索救助活動を実施する区域(以下第八において「実施区域」という。)を指定するものとすること。(第八条第二項関係)

三 捜索救助活動を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これを救助するものとすること。

(第八条第三項関係)

四 実施区域の指定の変更及び活動の中断については、第七の四と同様とすること。(第八条第四項関係)

五 捜索救助活動のうち我が国の領域外におけるものの実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該捜索救助活動を実施している場所若しくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合若しくは付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合又は当該部隊等の安全を確保するため必要と認める場合には、当該捜索救助活動の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避しつつ、四の規定による措置を待つものとすること。(第八条第五項関係)

六 五の規定にかかわらず、既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときは、当該部隊等の安全が確保される限り、当該遭難者に係る捜索救助活動を継続することができるものとすること。(第八条第六項関係)

七 一の実施要項の変更(四の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)については、一と同様とすること。

(第八条第七項関係)

八 捜索救助活動の実施に伴う第三の三の協力支援活動については、第七と同様とすること。(第八条第八項関係)

第九 自衛隊の部隊等の安全の確保等

防衛大臣は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならないものとすること。(第九条関係)

第十 関係行政機関の協力

一 防衛大臣は、対応措置を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えその他の協力を要請することができるものとすること。
(第十条第一項関係)

二 関係行政機関の長は、一の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、一の協力を行うものとすること。(第十条第二項関係)

第十一 武器の使用

一 第七の二又は第八の八の規定により協力支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられ、又は第八の一の規定により捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。六において同じ。)若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器(自衛隊が外国の領域で当該協力支援活動又は当該捜索救助活動を実施している場合については、第四の二の3の(四)又は4の(四)の規定により基本計画に定める装備に該当するものに限る。以下第十一において同じ。)を使用することができるものとすること。(第十一条第一項関係)

二 一の規定による武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならないものとすること。ただし、生命又は身体に対する侵害又は危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでないものとすること。
(第十一条第二項関係)

三 一の場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が一及び四の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとすること。(第十一条第三項関係)

四 一の規定による武器の使用に際しては、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならないものとすること。(第十一条第四項関係)

五 第七の二又は第八の八の規定により協力支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられ、又は第八の一の規定により捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、外国の領域に設けられた当該部隊等の宿営する宿営地(宿営のために使用する区域であって、囲障が設置されることにより他と区別されるものをいう。以下五において同じ。)であって諸外国の軍隊等の要員が共に宿営するものに対する攻撃があった場合において、当該宿営地以外にその近傍に自衛隊の部隊等の安全を確保することができる場所がないときは、当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して、一の規定による武器の使用をすることができるものとすること。この場合において、一から三まで及び六の規定の適用については、当該要員による措置の状況をも踏まえること。(第十一条第五項関係)

六 自衛隊法第九十六条第三項の規定は、第七の二又は第八の八の規定により協力支援活動としての自衛隊の役務の提供(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられ、又は第八の一の規定により捜索救助活動(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官については、自衛隊員以外の者の犯した犯罪に関しては適用しないものとすること。(第十一条第六項関係)

第十二 物品の譲渡及び無償貸付け

防衛大臣又はその委任を受けた者は、協力支援活動の実施に当たって、自衛隊に属する物品(武器を除く。)につき、協力支援活動の対象となる諸外国の軍隊等から第三の一の1に規定する活動(以下「事態対処活動」という。)の用に供するため当該物品の譲渡又は無償貸付けを求める旨の申出があった場合において、当該事態対処活動の円滑な実施に必要であると認めるときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、当該申出に係る物品を当該諸外国の軍隊等に対し無償若しくは時価よりも低い対価で譲渡し、又は無償で貸し付けることができるものとすること。(第十二条関係)

第十三 国以外の者による協力等

一 防衛大臣は、第四から第十一までの規定による措置のみによっては対応措置を十分に実施することができないと認めるときは、関係行政機関の長の協力を得て、物品の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供について国以外の者に協力を依頼することができるものとすること。(第十三条第一項関係)

二 政府は、一の規定により協力を依頼された国以外の者に対し適正な対価を支払うとともに、その者が当該協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとすること。(第十三条第二項関係)

第十四 請求権の放棄

政府は、自衛隊が協力支援活動又は捜索救助活動(以下第十四において「協力支援活動等」という。)を実施するに際して、諸外国の軍隊等の属する外国から、当該諸外国の軍隊等の行う事態対処活動又は協力支援活動等に起因する損害についての請求権を相互に放棄することを約することを求められた場合において、これに応じることが相互の連携を確保しながらそれぞれの活動を円滑に実施する上で必要と認めるときは、事態対処活動に起因する損害についての当該外国及びその要員に対する我が国の請求権を放棄することを約することができるものとすること。

(第十四条関係)

第十五 政令への委任

この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。(第十五条関係)

第十六 附則

この法律は、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律の施行の日から施行するものとすること。(附則関係)