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資料11 「国家安全保障戦略」、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」の決定について(防衛大臣談話)

平成25年12月17日

1 本日、国家安全保障会議及び閣議において、我が国として初の「国家安全保障戦略」が策定され、これを踏まえ、新たな「防衛大綱」及び「中期防衛力整備計画」が決定されました。

2 「戦略」は、我が国の国益を長期的視点から見定めた上で、外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障に関する基本方針を定めたものです。これは、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していくことを基本理念として明らかにしています。

「戦略」は、我が国の防衛力について国家安全保障の最終的な担保であるとの位置づけを明らかにしつつ、我が国を守り抜く総合的な防衛体制を構築することしています。防衛省としては、「戦略」に基づき、実効性の高い統合的な防衛力を整備し、統合運用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努めるとともに、政府機関・地方公共団体・民間部門との連携を強化してまいります。

3 本「戦略」を踏まえた今後の我が国の防衛の在り方については、新「防衛大綱」において具体的に示されています。ここに示された我が国の防衛力の在り方の背景として、前「防衛大綱」が3年前に策定された時の安全保障環境と比較すると、現在の我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。特に、我が国周辺を含むアジア太平洋地域においては、領土や主権、海洋における経済権益等をめぐる、純然たる平時でも有事でもない、いわばグレーゾーンの事態が増加する傾向にあります。

特に、この一年間の情勢を見ても、北朝鮮は、弾道ミサイルの発射や核実験を強行し、また我が国の具体的地名を挙げ、ミサイルの射撃圏内にあるとするといった挑発的言動を行うなど、その核・ミサイル開発は、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっています。

また、中国も、力を背景とした現状変更を試みるなど、高圧的とも言える対応を示しています。例えば、中国政府機関の公船による断続的な我が国領海への侵入や中国機による我が国領空の侵犯が生起しています。これに加え、中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦に対する火器管制レーダーの照射や、独自の主張に基づく「東シナ海防空識別区」の一方的な設定など、不測の事態を招きかねない危険な行為を引き起こしています。こうした中国の軍事動向等に対し、我が国は強く懸念しています。

4 このように厳しさを増す安全保障環境において、我が国自身の主権・独立を維持し、領域を保全し、我が国国民の生命・身体・財産の安全を確保して、我が国の平和を維持し、その存立を全うするための柱となるのは、①我が国自身の努力、②日米同盟の強化、③安全保障協力の積極的な推進の3点です。

5 第1に、我が国の平和と安全を守る根幹は、我が国が自ら行う努力にほかなりません。我が国を取り巻く安全保障環境は先に述べたとおり、一層厳しさを増しており、自衛隊の対応が求められる事態は急速に増加し、かつ長期化する傾向にあります。事態の深刻化を防止するとともに、万が一状況がエスカレートし、事態が発生した場合には、実効的に対処し、被害を最小化することが極めて重要です。このため、平素から、常時継続的な警戒監視等を実施し、各種兆候を早期に察知するとともに、状況の推移に応じて、訓練や演習を戦略的に実施します。また、部隊を機動的に展開するなど、状況に迅速かつ的確に対応できる態勢を構築します。

このような観点から、装備の運用水準を高め、その活動量を増加させ、統合運用による適切な活動を迅速かつ持続的に実施していくことに加え、各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力及び対処力を高めていきます。

6 その具体的方策として、新「防衛大綱」では、島嶼部に対する攻撃への対応や弾道ミサイル攻撃への対応など、想定される各種事態に対してより実効的に対応できるよう、自衛隊全体の機能・能力に着目し、統合運用を踏まえた能力評価を実施し、総合的な観点から特に重視すべき機能・能力を導き出しました。

その上で、各自衛隊の体制整備に当たっての重視事項を明示し、限られた資源を重点的かつ柔軟に配分していくこととしています。これにより、防衛力整備の優先順位を明確化し、「質」と「量」を重視しつつ、これまで以上にメリハリのきいた防衛力の構築を目指します。

7 以上を踏まえ、今後の防衛力については、安全保障環境の変化を踏まえ、特に重視すべき機能・能力についての全体最適を図るとともに、多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に即応して機動的に行い得る実効的なものとしていくことが必要です。このため、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性、持続性、強靱性及び連接性も重視した「統合機動防衛力」を構築します。

8 第2に日米同盟を強化します。日米同盟は、我が国自身の努力とあいまって、我が国の安全保障の基軸であり、我が国の平和と安全の確保のみならず、地域及び国際社会の平和と安定及び繁栄に極めて重要な役割を担っています。

このため、「日米防衛協力のための指針」の見直しや、自衛隊と米軍との連携を強化するための取組を幅広く推進し、日米同盟の抑止力及び対処力を強化してまいります。また、在日米軍の円滑かつ効果的な駐留を支える施策を行うとともに、在日米軍再編を着実に進め、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図ってまいります。

9 第3に、関係各国との安全保障協力を積極的に推進します。今日の国際社会においては、国際テロの拡大、海洋・宇宙空間・サイバー空間を巡る問題など、一国のみで対処することが極めて困難な安全保障上の課題が増加しています。このため、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、二国間・多国間の安全保障協力を強化するとともに、国際平和協力活動等に積極的に取り組み、アジア太平洋地域の平和と安定を追求しつつ、世界の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与してまいります。

10 新「防衛大綱」はおおむね10年程度の期間を念頭に防衛力整備の目標水準を示しておりますが、新「中期防」は、その下で、最初の5年間の主要事業と経費を一体的に示したものです。これにより、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備してまいります。その際、特に南西地域の防衛態勢の強化をはじめ、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するための前提となる海上優勢及び航空優勢を確実に維持するとともに、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、部隊を迅速に機動展開させて対処する能力も重視します。

新「中期防」に定める計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、平成25年度価格でおおむね24兆6,700億円程度を目途としており、前中期防の所要経費から約1兆2,800億円の増となっています。なお、新「中期防」の下での防衛力整備に当たっては、調達改革等を通じ、一層の効率化・合理化に努め、本計画期間中、おおむね7,000億円程度の実質的な財源の確保を図ります。防衛省としては引き続き全体最適に基づく効率的な資源配分に配意しつつ、「統合機動防衛力」の構築に向け、着実な防衛力の整備に努めて参ります。

11 国の防衛は、国民一人ひとりの支援がなくては成り立ちません。国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜き、国民の期待と信頼に応えられるよう、防衛省・自衛隊は今後とも全力を尽くしてまいる所存です。国民の皆様におかれましても、御理解と御協力を切に希望する次第であります。