（1）弾道ミサイル対処に関する法的措置
　わが国に弾道ミサイルなど⁵が飛来する場合の対処において、それが武力攻撃としての弾道ミサイル攻撃に対する迎撃である場合は、武力攻撃事態における防衛出動により対処することとなる。
　一方、わが国に弾道ミサイルなどが飛来する場合に、武力攻撃事態が認定されておらず、防衛出動が下令されていない場合については、1)迅速かつ適切な対処を行うこと、2)文民統制を確保することを十分考慮し、以下の措置をとることができることとなっている。

ア　防衛大臣は、事前の兆候などに基づき、弾道ミサイルなどがわが国に飛来するおそれがあると判断する場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、弾道ミサイルなどがわが国に向けて現に飛来したときには同ミサイルを破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる⁶。

イ　また、上記の場合のほか、発射に関する情報がほとんど得られなかった場合や、事故や誤射による場合などのように、事態が急変し、大臣が内閣総理大臣の承認を得るいとまがないことが考えられる。大臣は、このような場合に備えて、平素から、緊急対処要領を作成して、内閣総理大臣の承認を受け、わが国領域における人命または財産に対する被害を防止するため、この緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、一定の期間を定めて、実際に弾道ミサイルなどが飛来したときにイージス艦などにより当該弾道ミサイルの破壊措置をとるべき旨を命令しておくことができる。
（図表III-1-2-5参照）

（2）文民統制の確保の考え方
　弾道ミサイルなどへの対応については、自衛隊の対応だけではなく、国民への警報や避難といった国民の保護のための措置、外交面での活動、関係部局の情報収集や緊急時に備えた態勢強化など、政府全体として対応することが必要である。また、わが国に弾道ミサイルなどが現に飛来する場合には、迎撃ミサイルを用いて破壊することが必要となる。さらに、飛来のおそれの有無についても具体的な状況や国際情勢などを総合的に分析・評価し、政府として判断する必要がある。
　このような事柄の重要性および政府全体としての対応の必要性にかんがみ、内閣総理大臣の承認（閣議決定）と防衛大臣の個別の命令を要件とし、内閣および防衛大臣がその責任を十分果たし得るようにしている。さらに、じ後の国会報告についても法律に明記し、国会の関与についても明確にしている。
　また、防衛大臣は、昨年3月わが国初のペトリオットPAC-3の配備に伴い、前述の緊急対処要領を作成し、同年12月にはイージス艦への弾道ミサイル対処能力付与に伴う改正⁷を行い、いずれも内閣総理大臣の承認を受けたところである。これにより、緊急の場合を含め、わが国自身による迅速かつ適切な対処に必要な制度が整えられた。

参照＞　資料27

（3）運用面の取組
ア　統合運用による弾道ミサイルなどへの対処
　飛来する弾道ミサイルなどの破壊は、海自のイージス艦、空自のレーダー、ペトリオット・システムおよび、JADGEをはじめとする各種指揮統制・戦闘管理・通信を実施するシステムが一体となって行われる。BMDシステムの運用については、たとえば、空自航空総隊司令官を指揮官とした一元的な運用のあり方を含め、効果的な対処について検討を行うとともに、各種態勢を整えているところである。また、着弾した弾道ミサイルによる被害については、陸自が中心となって対処する。

イ　弾道ミサイル攻撃対処のための日米の協力
　BMDシステムの効率的・効果的な運用のためには、在日米軍をはじめとする米国とのさらなる協力が必要であり、日米安全保障協力の方向を示した05（平成17）年10月、06（同18）年5月および昨年5月の日米安全保障協議委員会（「2＋2」）においても、このための関連措置が合意された。
　また、昨年11月の日米防衛相会談においても、日米両国のBMDシステムの整備が進む中、今後、運用面に焦点をあてて協力を進めていくことで一致した。

参照＞　2章2節、2章3節