第III部 わが国の防衛のための諸施策 

3 米国のミサイル防衛と日米BMD技術協力


(1)米国のミサイル防衛
 米国は、弾道ミサイルの飛翔経路である1)ブースト段階、2)ミッドコース段階、3)ターミナル段階のそれぞれの段階に適した迎撃システムを組み合わせ、相互に補って対応する多層防衛システムの構築を目指しており、可能なものから早期に配備することとしている8
(図表III-1-2-6参照)
 
図表III-1-2-6 米国の弾道ミサイルに対する多層防衛の例

 日米両国は、弾道ミサイル防衛に関して緊密な連携を図ってきており、米国保有のミサイル防衛能力が、わが国に段階的に配備されている。
 まず、在日米軍は、06(平成18)年6月、空自車力分屯基地(青森県)に、BMD用移動式レーダーを配備した9。また、同年10月、沖縄県の嘉手納飛行場などにペトリオットPAC-3を配備した。さらに、06(同18)年8月以降、BMD能力搭載イージス艦が、わが国およびその周辺に前方展開している。
 このように、米軍のミサイル防衛能力がわが国に配備されることは、わが国国民の安全の確保にもつながるものである。

(2)能力向上型ミサイルに関する日米共同開発
 98(同10)年、政府は、安全保障会議の了承を経て、99(同11)年度から海上配備型上層システム(現在の海上配備型ミッドコース防衛システム)の日米共同技術研究に着手することを決定した。
 この共同技術研究は、わが国が現在整備を進めている海上配備型ミッドコース防衛システムとは異なり、より高い能力を目指した迎撃ミサイルを、日米が共同して設計、試作および必要な試験を行うものである。これまでミサイルの主要な4つの構成品10に関する設計、試作および必要な試験を行った。
 日米共同技術研究において、要素技術の確認が終了し、技術的な課題解明の見通しを得たことから、05(同17)年12月の安全保障会議および閣議において、日米共同技術研究の成果を、能力向上型迎撃ミサイル開発の技術的基盤として活用し、共同開発へ移行することを決定し、06(同18)年6月、日米両政府間で正式に合意した。本年度予算においては、将来のBMDシステムに関する共同開発などのための経費として、約202億円を計上している。
(図表III-1-2-7参照)
 
図表III-1-2-7 能力向上型迎撃ミサイル日米共同開発の概要

参照> 資料26

(3)武器輸出三原則等との関係
 わが国のBMDシステムは、現在わが国が保有しているイージス艦とペトリオット・システムの能力向上などにより構成するものであり、武器輸出三原則等との関係で問題が生じるものではない。
 一方、より将来的な能力向上を目指したBMDに関する日米共同技術開発に関しては、開発の一環として、わが国より米国に対して、BMDにかかわる武器を輸出する必要性が生じる。これについて、04(同16)年12月の官房長官談話において、武器輸出三原則等によらないとされたことを受け、05(同17)年12月の共同開発への移行決定にあたって、米国への供与が必要となる武器については、武器の供与の枠組みを今後米国と調整し、厳格な管理を行う前提で、武器輸出三原則等によらないとされた。
 06(同18)年6月には、米国に対する武器および武器技術の供与に関する書簡の交換が行われ、わが国の事前同意のない目的外利用や第三国移転を禁止するなどの厳格な管理の下に武器および武器技術を提供する枠組みが合意された。

参照> II部2章2節

(4)日米BMD協力の強化
 わが国はBMDシステム導入決定後、日米BMD協力の強化のための取り組みを、継続的に実施してきている。
 中期防では、日米安全保障体制の強化のための施策として、「弾道ミサイル防衛能力の向上に向けた日米共同の取り組みを強化するとともに、政策面、運用面、装備・技術面における協力を一層推進する。」こととした。さらに、閣議決定を経て、BMD協力に関する書簡を外務大臣と駐日米国大使との間で交換するとともに、防衛庁(当時)と米国防省との間でBMD協力に関する了解覚書(MOU:Memorandum of Understanding)が、04(同16)年に締結された。
 また、06(同18)年6月には、日米共同開発を協力の対象に含めた、BMD協力に関する書簡の交換が、外務大臣と駐日米国大使との間で行われた。


 
8)米国は、ミサイル防衛システムの研究開発や配備については、その時々に技術的に可能なシステムを配備しつつ、漸次能力向上を図っていくこととしており、これを進化的開発手法と称している。

 
9)レーダーは、その後、隣接する米軍車力通信所に移設された。

 
10)ノーズコーン、第2段ロケットモーター、キネティック弾頭、赤外線シーカーをいう。


 

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