第3章 わが国の防衛のための自衛隊の運用と災害派遣や国民保護 

2 法制・運用面の整備


(1)弾道ミサイル対処に関する法的措置
 わが国に弾道ミサイル等5が飛来する場合の対処において、それが武力攻撃としての弾道ミサイル攻撃に対する迎撃である場合は、武力攻撃事態における防衛出動により対処することとなる。
 他方、わが国に弾道ミサイル等が飛来する場合に、武力攻撃事態が認定されておらず、防衛出動が下令されていない場合については、これまで自衛隊の行動の法的根拠がなかったことから、昨年の通常国会において、1)迅速かつ適切な対処を行うこと、2)シビリアンコントロールを確保することを十分考慮し、以下の措置をとることができるよう法改正が行われた。
参照> 資料74

ア 防衛庁長官は、事前の兆候などに基づき、弾道ミサイル等がわが国に飛来するおそれがあると判断する場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、弾道ミサイル等がわが国に向けて現に飛来したときには同ミサイルを破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。この場合の自衛隊の具体的な動きの一例としては、弾道ミサイル等の飛来に備え、防衛庁長官の当該命令を受けて、弾道ミサイル等対処のための空自のペトリオット・システムや海自のイージス艦を展開し、実際に弾道ミサイル等が飛来してきた場合に、先に下された長官の命令に基づきこれを破壊するといった流れが考えられる。
イ また、上記の場合のほか、発射に関する情報がほとんど得られなかった場合や、事故や誤射による場合などのように、事態が急変し、長官が内閣総理大臣の承認を得るいとまがないことも考えられる。このため長官は、そのような場合に備えて、平素から、緊急対処要領を作成して、内閣総理大臣の承認を受けておくとともに、わが国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、この緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、一定の期間を定めて、実際に弾道ミサイル等が飛来したときにイージス艦などにより当該弾道ミサイルの破壊措置をとるべき旨を命令しておくことができる。
(図表3-2-5参照)
 
図表3-2-5 弾道ミサイル等への対処の流れ

(2)シビリアン・コントロールの確保の考え方
 弾道ミサイル等への対応については、自衛隊の対応だけではなく、国民への警報や避難といった国民の保護のための措置、外交面での活動、関係部局の情報収集や緊急時に備えた態勢強化など、政府全体として対応することが必要である。また、わが国に弾道ミサイル等が現に飛来する場合には、必ず迎撃ミサイルという武器を用いて破壊することが必要となる。さらに、飛来のおそれの有無についても具体的な状況や国際情勢などを総合的に分析・評価し、政府として判断する必要がある。
 このような事柄の重要性および政府全体としての対応の必要性にかんがみ、内閣総理大臣の承認(閣議決定)と防衛庁長官の個別の命令を要件とし、内閣および防衛庁長官がその責任を十分果たし得るようにしている。さらに、事後の国会報告についても法律に明記し、国会の関与についても明確にしている。また事態が急変し内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく、わが国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における自衛隊の部隊が行う対処のあり方などを明示した緊急対処要領の作成についても、今後導入されるウェポンシステムを踏まえ、検討しているところである。

(3)運用面の取組
ア 統合運用による弾道ミサイル攻撃対処
 飛来する弾道ミサイルの破壊は、海自のイージス艦、空自のレーダー、ペトリオット・システムおよび、指揮・通信システムが一体となって行われるべきものである。BMDシステムの運用については、例えば、空自航空総隊司令官を弾道ミサイル対処のための部隊の指揮官とすることを含め、効果的な対処のあり方について検討を行うとともに、各種態勢を整えているところである。また、着弾した弾道ミサイルによる被害については、陸自が中心となって対処する。

イ 弾道ミサイル攻撃対処のための日米の協力
 BMDシステムの効率的・効果的な運用のためには、在日米軍をはじめとする米国とのさらなる協力が必要であり、日米安全保障協力の方向を示した昨年10月および本年5月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)においても、このための関連措置が合意された。
参照> 4章2節45



 
5)弾道ミサイルその他の落下により、人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって、航空機以外のものをいう。(自衛隊法第82条の2)


 

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