第4章 日米安全保障体制の強化 

5 日米の安全保障・防衛協力の態勢を強化するための不可欠な措置


 新たな安全保障環境において多様な課題に対処するためには、日米間の安全保障・防衛協力の態勢を強化することが重要であり、このために平時から所要の措置を講じていく必要がある。また、上記にあげられた分野における協力にあたっては、自衛隊と米軍のみならず、日米両国の政府全体として包括的・総合的に取り組む必要がある。「共同文書」において、不可欠な措置の例としてあげている項目は以下のとおりであり、ここでは、それぞれについて説明する。
(図表4-2-6参照)
 
図表4-2-6 二国間の安全保障及び防衛態勢を強化するための不可欠な措置

(1)政府全体として取り組むべき措置
ア 緊密かつ継続的な政策および運用面の調整
 現在、日米間では、政策面では、閣僚レベルの日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)、日米防衛首脳会談、防衛協力小委員会など、さまざまなレベルの関係者間で緊密な調整を行っており、運用面においても、「指針」に基づく包括的メカニズムと調整メカニズムといった枠組みがある。
 部隊戦術レベルから戦略的な協議まで、政府のあらゆるレベルで緊密かつ継続的な政策および運用面の調整を行うことは、多様な安全保障上の課題に対応する上で不可欠である。
 また、自衛隊と米軍の運用面での調整にあたっては、双方の指揮官が常に情勢認識を共有することが有意義である。そのために日米共通の作戦状況表示を有することは、そのような共通の情勢認識の確立に資すると考えられ、可能な場合に追求する。
 また、防衛当局とほかの関係当局との間のより緊密な協力もますます必要となっている。このため、「指針」の下での包括的メカニズムと調整メカニズムについても、両者の機能を整理することを通じて、これらメカニズムの実効性を向上させる。

イ 計画検討作業の進展
 「指針」の下、わが国に対する武力攻撃事態における共同作戦計画および周辺事態における相互協力計画についての検討が行われている。この検討は、安全保障環境の変化を十分に踏まえた上で継続する必要がある。
 その際、わが国の有事法制により、空港、港湾などの公共施設の利用などについての枠組みが新たに整備されたことを踏まえる。また、検討作業を拡大してより具体性を持たせ、関連政府機関や地方当局との緊密な調整、日米間の枠組みや計画手法の向上などを行う。

ウ 情報共有および情報協力の向上
 日米協力における連携向上のためには共通の情勢認識が重要であり、国家戦略レベルから部隊戦術レベルに至るまで情報共有および情報協力をあらゆる範囲で向上させる。そのため、関連当局の間でより幅広い情報共有が促進されるよう、共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる。

(2)自衛隊と米軍との間で取り組むべき措置
ア 相互運用性1の向上
 多様な事態における円滑な協力のため、自衛隊の新たな統合運用体制への移行も踏まえ、特に自衛隊と米軍の司令部間の連接性を向上させる。

イ 日本および米国における訓練機会の拡大
 相互運用性、能力、即応性の向上や訓練の地元に対する影響の分散などのため、共同訓練および演習の機会を拡大する。そのため、日本の自衛隊、米軍それぞれの訓練施設・区域の相互使用や自衛隊のグアム、アラスカ、ハワイおよび米本土における訓練を増大する。さらに、多国間の訓練および演習への自衛隊や米軍の参加は、国際的な安全保障環境の改善に資するものと考えられる。

ウ 自衛隊および米軍による施設の共同使用
 自衛隊と米軍による施設の共同使用は、より緊密な連携や相互運用性の向上に資するものと考えられ、兵力態勢の再編において、具体的な考え方が示されている。

エ 弾道ミサイル防衛(BMD)
 弾道ミサイル攻撃の対処、抑止や弾道ミサイルの開発・拡散を断念させるにあたって、BMDは極めて重要な役割を果たす。そのため、日米間でそれぞれのBMD能力の向上を緊密に連携させることは有意義である。BMDにおいては、対処可能時間が極めて短いことから、不断の情報収集・共有、高い即応性・相互運用性の維持が極めて重要である。
 米国は、適切な場合に、日本およびその周辺に補完的な能力を追加的に展開し、日本のミサイル防衛を支援するためにその運用につき調整する。



 
1)英語でいうインターオペラビリティとも呼ばれる。戦術、装備、後方支援、各種作業の実施要領などに関し、共通性、両用性を持つこと。コラム参照


 

前の項目に戻る     次の項目に進む