第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

対人地雷問題へのわが国の対応

 現在も全世界には多数の対人地雷が埋設1されていると言われており、紛争終了後も放置された対人地雷が、一般市民を含む多数の人々に無差別的な被害をもたらし、ひいては、紛争後の国家の復興と発展を妨げている。このような対人地雷による人道的問題を解決するため、97(平成9)年、対人地雷禁止条約が成立し、我が国に対しては99(同11)年に発効した。こうした一連の活動において、防衛庁は、条約交渉に職員を派遣するなどの協力を行った。
 この条約は、本年5月現在、134か国が締結しているが、アジア太平洋地域などでは41か国のうち17か国しか締結しておらず、対人地雷2の廃絶を実現するためには、この条約の締約国を増やすことが重要な課題となっている。このため、防衛庁は、外務省と調整し、わが国として、この条約を締結していないアジア太平洋諸国などに対し、条約の締結を働きかけている。最近では、本年1月のアジア・太平洋地域防衛当局者フォーラム(東京ディフェンス・フォーラム)第2回分科会3と本年4月の第10回ARF・SOM(高級事務レベル会合)において、対人地雷禁止条約を締結していない国に対し防衛庁から本条約の締結を呼びかけた。
 また、防衛庁は、条約に規定された貯蔵対人地雷の廃棄を完了するため、安全性などを考慮した上で、自衛隊が貯蔵していた対人地雷の廃棄を国内事業者に委託し、00(同12)年1月から処分を開始し、本年2月、条約で認められた地雷の探知、除去などの技術開発及び訓練のための必要最小限の例外的な保有分を除き、すべての対人地雷を廃棄した。また、この最終廃棄にあたり、わが国が対人地雷禁止条約を遵守し条約で定められた廃棄期限までに対人地雷の廃棄が完了したことを広く国内外に知らせるため、小泉首相出席の下、航空自衛隊饗庭野(あいばの)分屯基地(滋賀県新旭町)で対人地雷廃棄完了式典を行った。
 条約の発効に伴い、人道的配慮を行いつつ、わが国の安全保障を確保するため、防衛庁は、条約上の対人地雷に該当せず、一般市民に危害を与えるおそれのない代替手段として、昨年度から対人障害システムの整備を開始したが、当面の間は、指向性散弾(しこうせいさんだん)4などと併せて対応することとしている。
 さらに、防衛庁は、国際条約に規定された例外保有などについての年次報告を国連に対して行うとともに、関連国際会議などに適宜職員を派遣するなど、国際社会の対人地雷への取組に積極的に協力している5 6
 このほか、地雷探知・除去に関する技術開発を支援するため、現在、産官学間で各種の検討が行われており、防衛庁も、これらの取組に積極的に協力している。具体的には、企業や大学では地雷探知・除去機材などの実証試験の場が限られている現状を踏まえ、防衛庁が管理する試験場などへの受入れなどを行っている。




 
1)1997年(平成9)年国連資料によると約1億1,000個とされている一方で、2001(同13)年米国務省レポートによると約5,000万個とされており、確定されていない。

 
2)1章2節3参照。

 
3)本節参照。

 
4)敵歩兵の接近を妨害するために使用する対歩兵戦闘用爆薬。隊員が目標を視認して作動させるものであり、人の存在、接近又は接触により爆発するように設計されたものではなく、対人地雷禁止条約で禁止されているような民間人も無差別に被害を受けるようなものではない。

 
5)1章2節3参照。

 
6)防衛庁は、カンボジアにおける対人地雷除去活動への支援のため、1999(同11)年から退職自衛官を国際協力事業団(JICA)に推薦しており、この退職自衛官はJICAの長期派遣専門家の枠組で、カンボジアで地雷除去活動を行っているカンボジア地雷対策センター(CMAC)の整備・輸送アドバイザーとして派遣されている。2000(同12)年5月に一人目の退職自衛官(元3等陸佐)が派遣され、2002(同14)年5月に任期を終了したことを受け、同年12月から後任の退職自衛官(元2等陸佐)が派遣されている。


 

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