第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

軍縮関連条約への協力

(1)化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention)
 化学兵器禁止条約1は、化学兵器の開発、生産、取得、貯蔵、保有、移譲、使用を禁止し、その廃棄を義務付けることで化学兵器の廃絶を目指すものである。また、その実効性を確保するために、広範かつ厳密な検証制度を定めている。
 防衛庁は、80(同55)年以降、この条約の交渉の場に、陸自から化学防護の専門家を随時派遣し、日本代表団の一員として条約案の作成に寄与してきた。また、条約の発効に伴って、条約の定める検証措置などを行うため、オランダのハーグに設立された化学兵器禁止機関(OPCW:Organization for the Prohibition of Chemical Weapons)に、97(平成9)年以降、化学防護の専門家である陸上自衛官2を派遣している3
 なお、陸自化学学校(埼玉県さいたま市)では、条約の規制対象である化学物質を少量合成していることから、条約の規定に基づき、97(同9)年以降4回の査察を受け入れており、最近では、本年3月に査察が行われた。

 
OPCW査察局運用計画部長として米国の安全保障関係者に応対中の浦野1等陸佐(昨年11月 OPCW本部)

(2)中国遺棄化学兵器廃棄処理事業への協力
 中国遺棄化学兵器廃棄処理事業については、日中共同声明、日中平和友好条約の精神を踏まえ、化学兵器禁止条約に基づいて、政府全体として取り組んでおり、防衛庁は、遺棄化学兵器処理を担当する内閣府に陸上自衛官を含む職員3名を出向させるなどの協力を行っている。
 これまでの調査の結果、中国に遺棄されている旧日本軍の化学兵器は約70万発にのぼると推定される。
 昨年の本格的な処理事業としては、中国黒龍江(こくりゅうこう)省孫呉(そんご)県で、遺棄化学兵器の発掘・回収作業が行われた。同県における作業では、砲弾の鑑定、応急安全化処置などのため、防衛庁・自衛隊から、陸上自衛官8名が現地に派遣され、日本側要員の中核としてこれに従事した。

(3)生物兵器禁止条約(BWC:Biological Weapons Convention)
 防衛庁・自衛隊は、生物兵器禁止条約4の強化のための交渉の場に、薬学・医学の専門家である陸上自衛官を必要に応じ派遣している。

(4)包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)
 わが国は、包括的核実験禁止条約5の早期発効に向けて努力を続けているが、批准(ひじゅん)が発効要件となっている特定諸国のうち13か国が批准していない6ことから、条約発効の見通しは立っていない。この条約について、防衛庁は、外務省などに所要の情報を提供するなど、できる限りの協力を行っている。

(5)特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW:Convention on Conventional Weapons)
 わが国は、特定通常兵器使用禁止・制限条約7を、82(昭和57)年に締結し、条約はその翌年に発効した。
 現在、紛争終了後の爆発性戦争残存物(ERW:Explosive Remnants of War)や一部の対車両地雷(MOTAPM:Mines Other Than Anti-Personnel Mines)がもたらし得る人道上の危険性を減少させるための交渉などが行われている。
 わが国は、米国、デンマークなどと共同で、対車両地雷の規制に関する新たな議定書作成の提案を行っており、防衛庁は、当初の条約の作成と議定書の追加・改正の交渉の場、締約国会議、政府専門家会合などに、適宜、職員を派遣している。



 
1)1章2節3参照。

 
2)OPCWへの派遣実績
・1997(同9)年6月〜02(同14)年6月:陸将補1名(査察局長)
・1997(同9)年6月〜00(同12)年1月:1等陸尉1名(査察官)
・2002(同14)年10月〜05(同17)年9月:1等陸佐1名(運用計画部長)

 
3)資料41参照。

 
4)1章2節3参照。

 
5)1章2節3参照。

 
6)米国、アルジェリア、イスラエル、イラン、インド、インドネシア、エジプト、コロンビア、コンゴ民主共和国、中国、北朝鮮、パキスタン、ベトナムの13か国が未批准(本年6月現在)。

 
7)1章2節3参照。


 

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