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<解説>次期戦闘機の第三国移転(国会審議での主要な論点)

Q なぜわが国にとって次期戦闘機の取得が必要なのでしょうか?

四面を海に囲まれた島国であるわが国に対する侵略は、必ず、空または海を経由して行われます。そのため、専守防衛を旨とするわが国が安全を確保するためには、航空機や巡航ミサイルによる空からの攻撃や、艦艇による海からの攻撃をできる限り洋上・遠方で阻止することが必要です。戦闘機は、これらの防御的任務を遂行するための中核的装備品として整備、運用されてきました。

周辺国が新世代機の開発や配備を進めているなかで、将来にわたってわが国の平和と安定を確保するために、わが国自身として、それらの戦闘機を超える最新鋭の次期戦闘機を開発することが不可欠です。

Q なぜ英国・イタリアとの国際共同開発を行う必要があるのですか?

装備品の高度化や高額化が進むなかで、優秀な装備品を取得するためには、パートナー国と協力して資金・技術を供与し合って共同で開発する方式が、国際的にとられています。こうしたなかで、次期戦闘機の開発を進めるにあたって、わが国の独自開発や米国との共同開発などの可能性を十分に検討しました。その結果、要求性能の実現可能性・スケジュール・コストなどの様々な観点から、英国およびイタリアとの国際共同開発が最適な選択肢であると判断し、3か国の技術を結集し、リスク・コストを分担しながら、優れた次期戦闘機を開発することとしました。

Q なぜ次期戦闘機の第三国への移転を可能としたのですか?

国際共同開発の協議は、各国の安全保障環境に応じて必要となる性能について、議論を重ねつつ共通の機体を作り上げていくプロセスであり、各国が同等の貢献を行うことを前提に、自国が優先する性能の搭載を主張し合うことになります。

英国およびイタリアが、完成品の第三国移転を推進することを貢献の重要な要素と考え、わが国にも同様の対応を求めているなかで、わが国から第三国への直接移転を行う仕組みが存在しなければ、英国およびイタリアが、価格低減などの努力を行わないわが国が求める性能を実現するために、自らが求める性能を断念することは想定されず、わが国が求める戦闘機の実現が困難となります。

このため、第三国への直接移転を行いうる仕組みを持ち、英国およびイタリアと同等に貢献しうる立場を確保することが、わが国の国益であると考えています。

Q 次期戦闘機の第三国への移転にあたっては、厳格な手続きが必要ではないですか?

次期戦闘機の第三国への移転にあたっては、今般の運用指針の見直しにかかる閣議決定に加え、将来実際に次期戦闘機をわが国から第三国へ移転する際にも個別の案件ごとに改めて閣議決定を行う、いわば「二重の閣議決定」という、より厳格なプロセスを経ることとしています。

そのうえで、運用指針の一部改正においては、①第三国直接移転を認めるのはGCAPで開発される完成品にかかる防衛装備に限定し、②移転先国は、国連憲章の目的と原則に適合する方法で使用することを義務付ける国際約束の締結国に限定し、③武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国には移転しない、との「3つの限定」を設けています。

このような、より厳格なプロセスと要件を設けることによって、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念をわが国が堅持することを、より明確な形で示すことができると考えています。

政府として、防衛装備の海外移転については、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念およびこれまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持するとの方針に変わりありません。

次期戦闘機の第三国移転について答弁する岸田内閣総理大臣(2024年3月)

次期戦闘機の第三国移転について答弁する
岸田内閣総理大臣(2024年3月)
【時事】