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<解説>反撃能力

Q反撃能力とは何ですか?なぜ必要なのですか?

反撃能力とは、わが国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイルなどによる攻撃が行われた場合、「武力の行使」の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、わが国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力などを活用した自衛隊の能力のことを言います。

近年、わが国周辺では、極超音速兵器などのミサイル関連技術と飽和攻撃など実戦的なミサイル運用能力が飛躍的に向上し、質・量ともにミサイル戦力が著しく増強されるなか、ミサイルの発射も繰り返されるなど、わが国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっており、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。そのため、ミサイル防衛網により飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からのさらなる武力攻撃を防ぐために、反撃能力を保有する必要があります。

反撃能力の保有により、武力攻撃そのものを抑止し、万一、相手からミサイルが発射される際にも、反撃能力により相手からのさらなる武力攻撃を防ぎ、国民の命や平和な暮らしを守っていきます。

Q反撃能力は専守防衛に違反しないですか?

専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢を言うものであり、わが国の防衛の基本的な方針です。

そして、わが国が保有する反撃能力は、弾道ミサイルなどによるわが国に対する武力攻撃が発生した場合、「武力の行使」の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として行使されるものです。

どちらも、「相手から武力攻撃を受けた場合の必要最小限度の自衛の措置」という観点で整合しており、政府としては、わが国の防衛の基本的な方針として、専守防衛を堅持していく考えです。

Q反撃能力の行使は「先制攻撃」にならないですか?

反撃能力は、憲法、国際法、国内法の範囲内で、「武力の行使」の三要件を満たして初めて行使されるものです。武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されず、それを行うことはないことはいうまでもありません。

Q反撃能力は存立危機事態において行使しうるのですか?

存立危機事態は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」したからといって、無条件で認定されるものではなく、「これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」がある場合に認定され、これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、必要最小限度の実力行使にとどまる場合において、自衛の措置として武力を行使することが許容されます。

その上で、事態認定後の反撃能力の運用については、実際に発生した状況に即して、「武力の行使」の三要件に基づき、弾道ミサイルなどによる攻撃を防ぐために、他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、いかなる措置をとるかという観点から、個別具体的に判断することとなります。

(参考)政府の統一見解(鳩山内閣総理大臣答弁船田防衛庁長官代読(1956年2月29日))

わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。

反撃能力(イメージ図)