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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

防衛白書トップ > 第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ > 第1章 わが国自身の防衛体制 > 第6節 継戦能力を確保するための持続性・強靱性強化の取組 > 1 弾薬の確保

第6節 継戦能力を確保するための持続性・強靱性強化の取組

将来にわたりわが国を守り抜く上で、弾薬、燃料、装備品の可動数といった現在の自衛隊の継戦能力は、必ずしも十分ではない。こうした現実を直視し、有事において自衛隊が粘り強く活動でき、また、実効的な抑止力となるよう、十分な継戦能力の確保・維持を図る必要がある。また、平素においては自衛隊員の安全を確保し、有事においても容易に作戦能力を喪失しないよう、主要司令部などの地下化や構造強化、施設の離隔距離確保のための再配置、集約化などを実施するとともに、隊舎・宿舎の着実な整備や老朽化対策を行う。さらに、装備品の隠ぺい及び欺まんなどを図り、抗たん性を向上させるほか、気候変動の問題は、将来のエネルギーシフトへの対応を含め、今後、防衛省・自衛隊の運用や各種計画、施設、防衛装備品、さらにわが国を取り巻く安全保障環境により一層の影響をもたらすことは必至であるため、これに伴う各種課題に対応していく必要がある。

このため、防衛戦略では、2027年度までに弾薬の生産能力の向上及び製造量に見合う火薬庫の確保を進め、必要十分な弾薬を早急に保有するとともに、必要十分な燃料所要量の確保や計画整備などを行っている装備品以外が全て可動する体制を早急に確立することとしている。また、主要な司令部の地下化、駐屯地・基地内の再配置・集約化を進めるほか、津波などの災害に対する施設及びインフラの強靱化を推進することとしている。

今後5年間の最優先課題の1つとして、可動率向上や弾薬・燃料確保、防衛施設の強靱化の加速を掲げており、この持続性・強靱性強化のための経費は、整備計画が示す今後5年間で必要な経費である約43.5兆円(契約額)の4割1を超えている。

1 弾薬の確保

1 弾薬確保の状況

自衛隊は、小銃や拳銃に使用する銃弾、戦車や火砲が発射する砲弾、戦闘機や艦艇が使用するミサイルのほか、爆弾、魚雷、地雷、機雷など多種多様な弾薬を保有している。

弾薬の予算額は、過去30年の間、おおむね横這いで推移しているが、技術の高度化に伴う価格上昇などもあり、弾薬の確保のために、必ずしも十分な予算が確保できていたとは言い難い。また、防衛省からの受注減などの影響で弾薬製造企業が撤退しており、撤退した企業の部品を代替企業が製造したが、当初、製造期間の長期化や製造コストの上昇が発生し、弾薬確保がさらに困難なものとなる事例も発生していた。

参照図表II-4-3-5(装備品の維持整備費及び弾薬の整備費の推移)

必要十分な火薬庫を設置できていないことに加え、ミサイルなどの大型化に伴い、また、配備している弾薬に十分な冗長性がない地区もあり、例えば、舞鶴地区の艦艇が任務にあたり搭載する弾薬を、佐世保地区から陸路で輸送して対応するケースもある。

2 弾薬確保のための取組

防衛戦略では、2027年度までに、弾薬について、必要数量が不足している状況を解消することとしており、優先度の高いスタンド・オフ・ミサイル(12式地対艦誘導弾能力向上型等)、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM-3ブロックIIA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)、長距離対空ミサイル(SM-6)、03式中距離地対艦誘導弾(改善型)能力向上型等の各種弾薬については、必要な数量を早期に整備する。具体的には、弾薬整備費について、前中期防期間中では約1兆円であったところ、整備計画期間中の今後5年間では、5倍の約5兆円に増加させる。

加えて、早期かつ安定的に弾薬を量産するために、防衛産業による国内製造態勢の拡充などを後押しするほか、弾薬の維持整備体制の強化を図る。また、弾薬の大型化や増加する弾薬の保管所要に対応するため、火薬庫の増設及び不用弾薬の廃棄を促進することとしている。

参照図表III-1-6-1(主要な弾薬及び火薬庫の例)

図表III-1-6-1 主要な弾薬及び火薬庫の例

1 持続性・強靱性強化のための経費は、スタンド・オフ防衛能力などの他の分野に計上されるものも含めた弾薬・誘導弾の経費として約5兆円(他の分野を含めない経費は約2兆円)、装備品などの維持整備費・可動確保の経費として約10兆円(他の分野を含めない経費は約9兆円)、施設の強靱化のための経費として約4兆円であり、計約19兆円である。