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ダイジェスト 第II部 わが国の安全保障・防衛政策

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わが国の安全保障と防衛の基本的考え方

国家の独立、平和と安全を守る防衛力

平和と安全は、国民が安心して生活し、国が繁栄を続けていくうえで不可欠のものであるが、願望するだけでは確保できない。

このため、わが国は自らの防衛力とともに、日米同盟関係を強化し、隙のない防衛態勢を構築することにより、わが国の平和と安全を確保している。また、わが国に対する脅威の発生を予防する観点から、インド太平洋地域における協力などの分野で防衛力が果たす役割の重要性は増している。

わが国は、このような防衛力の役割を認識したうえで、外交や経済など様々な分野における努力を尽くすことにより、わが国の平和と安全を確保している。

また、わが国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備している。

令和3年度自衛隊記念日観閲式において巡閲を行う岸田内閣総理大臣

令和3年度自衛隊記念日観閲式において巡閲を行う岸田内閣総理大臣

わが国の安全保障と防衛に関する政策

新たな国家安全保障戦略などの策定に向け、あらゆる選択肢を議論

わが国の国家安全保障にかかる主要な文書としては、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(防衛大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)がある。

岸田内閣総理大臣は、2022年1月、おおむね1年をかけて、これらの文書を新たに策定する旨発表しており、現在、関係閣僚間での議論が行われている。防衛省においては、防衛大臣を議長とする「防衛力強化加速会議」を立ち上げ、わが国の領土、領海、領空そして国民の生命と財産を守り抜くため、あらゆる選択肢について議論を行っている。

なお、現行の防衛大綱及び中期防は、2018年に策定されたものであり、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦や、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動を可能とする「多次元統合防衛力」を構築することとしている。

防衛力強化加速会議で議長を務める岸防衛大臣

防衛力強化加速会議で議長を務める岸防衛大臣

わが国の安全保障と防衛を担う組織

防衛省・自衛隊は、内閣に設置された国家安全保障会議で議論された基本的な方針のもとで、政策立案や任務の遂行を行っている。

また、防衛省・自衛隊は、陸・海・空自衛隊を一体的に運用する統合運用体制をとっており、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を含め、領域横断作戦を実施しうる体制の構築に取り組んでいる。

わが国の安全保障と防衛を担う組織 写真

防衛力整備など

防衛力強化を加速するために

わが国周辺の安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、必要な防衛力を大幅に強化するため、令和4(2022)年度当初予算は、「防衛力強化加速パッケージ」として、令和3(2021)年度補正予算と一体して編成した。また、技術的優越の確保のため、ゲーム・チェンジャーとなりうる最先端技術などへの投資を大幅に増やすこととし、研究開発費は過去最大となっている。なお、令和4(2022)年度当初予算は、前年度と比べて553億円(1.1%)増の5兆1,788億円、米軍再編などを含めると5兆4,005億円であり、10年連続の増加を維持しており、過去最大である。

国防費について国際的に統一された定義がないこと、公表国防費の内訳の詳細が必ずしも明らかでないこと、各国ごとに予算制度が異なっていることなどから、国防支出の多寡を正確に比較することは困難である。そのうえで、わが国の防衛関係費と各国が公表している国防費を比較すれば、わが国は、G7諸国、オーストラリア及び韓国と比較し、国防費の対GDP比は最も低い。また、1人当たりの国防費は、オーストラリア・韓国・英国・フランス・ドイツいずれも日本の約2から3倍となっている。

防衛力強化を加速するために 図

自衛隊の行動などに関する枠組み

2015年に成立した平和安全法制においては、いかなる事態においても切れ目のない対応を可能とすべく、「存立危機事態」や「重要影響事態」などの政府として対処すべき事態を新たに定義づけており、政府としては、引き続き、対応に万全を期していく。

また、2021年8月の在アフガニスタン邦人等輸送の経験などを踏まえ、2022年に自衛隊法改正を行い、輸送手段を原則として政府専用機としていた制限の廃止、安全にかかる要件の見直し、主たる輸送対象者の拡大を行った。