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ダイジェスト 第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

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わが国自身の防衛体制

防衛力の非代替性

防衛力は、わが国の安全保障を確保するための最終的な担保であり、わが国に脅威が及ぶことを抑止するとともに、脅威が及ぶ場合にはこれを排除し、独立国家として国民の生命・身体・財産とわが国の領土・領海・領空を主体的・自主的な努力により守り抜くという、わが国の意思と能力を表すものである。この意味で、防衛力は他のいかなる手段によっても代替できるものではない。

わが国を取り巻く安全保障環境が格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増している中で、宇宙・サイバー・電磁波を含むすべての領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により全体としての能力を増幅させる領域横断(クロス・ドメイン)作戦により、わが国の防衛を全うするとともに、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする、真に実効的な防衛力として多次元統合防衛力を構築する。

また、自衛隊が有機的に連携し、迅速かつ効果的に任務を遂行するため、統合運用が極めて重要となる。

防衛体制(3つの柱)

防衛体制(3つの柱)

平時からグレーゾーンの事態への対応

わが国の平和と独立を守るべく、自衛隊は平素からわが国の主権を侵害する行為に毅然として対応している。その一環として、わが国周辺において広域にわたり常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動を行うとともに、柔軟に選択される抑止措置などにより事態の発生・深刻化を未然に防止するよう努めている。平時においては、領海、領空とその周辺海空域において情報収集及び警戒監視を行っているとともに、戦闘機などによる緊急発進(スクランブル)を実施している。

警戒監視にあたる海自哨戒機

島嶼部を含むわが国に対する攻撃への対応

多くの島嶼を有するわが国は、国民の生命、身体、財産、領土・領海・領空及び各種資源を防衛するため、安全保障環境に即した部隊配置、状況に応じた機動・展開を行う必要がある。脅威に関する兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、部隊を機動・展開し、侵攻部隊の接近・上陸を阻止する。

万が一、占拠された場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど、あらゆる措置を講じて奪回する。

島嶼防衛に関する訓練の様子

宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応

宇宙・サイバー・電磁波領域における自衛隊の活動に対する妨害を防止するとともに、事案発生時には、速やかに被害の局限を行う。わが国への攻撃に際しては、宇宙・サイバー・電磁波の領域を活用して攻撃を阻止・排除する。

宇宙領域に関して、宇宙空間の安定的利用を確保するための宇宙状況監視体制の構築や宇宙領域を活用した情報収集能力の向上を図っている。サイバー領域では、情報システムの安全性確保や専門部隊によるサイバー攻撃対処などを実施している。電磁波領域においても、電磁波に関する管理・調整や情報収集機能の強化などを推進している。

宇宙に関連する訓練に従事する隊員

宇宙に関連する訓練に従事する隊員

大規模災害などへの対応

自衛隊は、自然災害をはじめとする災害の発生時には、地方公共団体などと連携・協力し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、医療などの様々な活動を行っている。また、自衛隊は在外邦人等を保護するための任務も遂行している。

人命救助にあたる隊員

人命救助にあたる隊員

平和安全法制施行後の自衛隊の活動状況など

2016年の平和安全法制施行後、この法制にかかる各種準備・訓練を実施してきた。これに関する実任務の実績として、自衛隊法第95条の2に基づく米軍等の部隊の武器等の警護があり、2021年には、豪軍に対する警護をはじめて実施した。

日米同盟

わが国の安全保障の基軸としての日米安保体制

日米安保条約に基づく日米安保体制は、わが国自身の防衛体制とあいまってわが国の安全保障の基軸である。また、日米安保体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしている。

わが国は、民主主義、人権の尊重、法の支配、資本主義経済といった基本的な価値観や世界の平和と安全の維持に関する利益を共有し、経済面においても関係が深く、かつ、強大な軍事力を有する米国との安全保障体制を基軸として、わが国の平和、安全及び独立を確保してきた。

防衛大綱では、日米同盟の抑止力及び対処力の強化のため、平時から有事までのあらゆる段階や災害などの発生時において、わが国の平和と安全を確保するためのあらゆる措置を講ずることとしている。このため、各種の運用協力及び政策調整を一層深化させることとしている。

日米防衛相会談(2022年5月)

日米防衛相会談(2022年5月)

特に、宇宙領域やサイバー領域などにおける協力、総合ミサイル防空、共同訓練・演習、共同のISR活動及び日米共同による柔軟に選択される抑止措置の拡大・深化、共同計画の策定・更新の推進、拡大抑止協議の深化などを図ることとしている。

さらに、日米両国は自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することを含め、望ましい安全保障環境を創出するため、インド太平洋地域におけるプレゼンスを高めることも勘案しつつ、防衛装備・技術協力、施設・区域の共同使用の拡大、今年度は海自護衛艦「いずも」へのF-35B発着艦検証など、日米共同の活動を実施している。

日米共同統合演習

日米共同統合演習

海自護衛艦「いずも」へのF-35B発着艦検証

また、在日米軍のプレゼンスは抑止力として機能している一方で、在日米軍の駐留に伴う地域住民の生活環境への影響を踏まえ、各地域の実情に合った負担軽減の努力が必要である。特に、在日米軍の再編は、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の負担を軽減するための極めて重要な取組であることから、防衛省としては在日米軍施設・区域を抱える地元の理解と協力を得る努力を続けつつ、米軍再編事業を進めている。

安全保障協力

多角的・多層的な安全保障協力の戦略的な推進に向けて

防衛省・自衛隊は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)というビジョンのもと、二国間・多国間での防衛協力・交流を推進している。また、各国と東シナ海・南シナ海情勢への深刻な懸念を共有したうえで、力を背景とした一方的な現状変更及びその既成事実化の試みに強く反対するメッセージを明確に発出している。

ハイレベル交流(日英防衛相会談)

ハイレベル交流(日英防衛相会談)

東南アジア・南アジア・太平洋島嶼国及び中東・アフリカ・中南米地域の諸国に対しては、防衛協力・交流のツールである、人による協力・交流、部隊による協力・交流、能力構築支援、防衛装備・技術協力といった幅広い手段を活用しながら、FOIPの維持・強化に向けて協力を強化することとしている。

能力構築支援(パプアニューギニア)

能力構築支援(パプアニューギニア)

同盟国である米国をはじめ、オーストラリア、インド、また、英国、フランス、ドイツなどの欧州諸国、カナダ及びニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有するのみならず、インド太平洋地域に地理的・歴史的なつながりを有する国々である。これらの国々に対しては、インド太平洋地域へのさらなる関与を行うよう働きかけるとともに、同地域においてパートナーとして協働することで、わが国単独の取組よりも効果的な協力を実施できるように防衛協力・交流を進めている。

宇宙及びサイバー領域においても、関係国と情報共有、協議、演習、能力構築支援などを通じ、連携・協力を強化し、優位性の早期獲得や国際的な規範の形成に取り組んでいる。

海洋安全保障の確保

わが国にとって海上交通の安全確保は平和と繁栄の基礎であり、自衛隊は、2009年以降、水上部隊及び航空部隊などを派遣し、ソマリア沖・アデン湾において船舶を海賊行為から防護する活動を継続している。

軍備管理・軍縮及び不拡散への取組

大量破壊兵器やその運搬手段となりうるミサイル、武器及び軍事転用可能な貨物・機微技術に関する軍備管理・軍縮・不拡散のための国際的な取組に、わが国も積極的に参画している。

国際平和協力活動への取組

防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動などに積極的に取り組んでいる。2022年は、国際平和協力法制定・施行から30年となる。

国際平和協力業務として、多国籍部隊・監視団(MFO、エジプト・シナイ半島)及び国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に司令部要員を派遣している。そのほか、国連事務局にも継続的に自衛官及び事務官を派遣している。

UNMISSにおける業務の様子

UNMISSにおける業務の様子

また、人道的貢献及びグローバルな安全保障環境の改善の観点から、国際緊急援助活動を実施しており、2022年1月には、大規模な火山噴火が発生し、被害を受けたトンガに対し、緊急援助物資の輸送を実施した。

トンガへの国際緊急援助

トンガへの国際緊急援助